兄と妹 1
そしてわたしの番が来た。
わたしは下位コンバーターの脇に立つ。表示される数字を見やすいよう、みんなそうやっていた。
エドゥアルデさまが大きな声で云う。
「今、下位コンバーターに異常がないか調べた。官吏?」
「異常ありません」
「では、これより聖女さまに〈器〉を計測してもらう。計測結果に関して、誰も異議を唱えないよう。正常に動作していると官吏が認め、僕の〈器〉もはかったこの下位コンバーターを疑うのであれば、〈陽光の王国〉王家、また、〈重たい炎〉そのものへの不敬、侮辱、冒瀆であるとみなし、相応の処分を下す」エドゥアルデさまはにっこりした。「陛下が処断する前に、聖女に対する侮辱として、王室護衛隊が黙っていないかもしれぬ。剣が飛んできて突き刺さることも考えられるから、無礼な発言をした者からは即刻離れることをすすめる。ではどうぞ、聖女さま」
見物人達がどよめき、落ち着かない様子で目を交わすなかで、エドゥアルデさまは平然とわたしを促す。わたしは、こわいので、下位コンバーターの玉貨投入口へすぐに左手をつっこんだ。
上限値は13267。さっきとかわらない。ただし、突っ立っている間に恢復していた。13255まで。
官吏は吃驚した顔で、上限値を読み上げ、クリップボードのようなものへなにやら書きつける。立会人達がざわめく。
エドゥアルデさまが軽く手を叩いた。
「やあ、やはり聖女さまは別格だ。これは頼もしい。だろう? ランベール」
ランベールさんを見る。
渋い顔をしていた。なにか……気に触ったのだろうか。訊きたいけれど、言葉が出ない。
「聖女さまはお疲れでしょう。五つ葉の城へ戻って戴きます」
そう云って、わたしを促す。「あめのさま、行きましょう」
もう帰っていいのだろうか。ロッルさんのこととか、レディーヌさまのこととか、その侍女のことも、どうなるのだろう。
「ランベール、公主護衛隊のことはなんとかしてやる」
エドゥアルデさまが低声で云うと、ランベールさんはじろりとそれを睨む。王太子殿下はにまにましている。「お前のことだ。僕にあいつらを処断しろと云わないところを見るに、あの者らを心配しているだろう。妹の不始末は、当人になんとかさせる。少なくとも、半分くらいは」
「殿下」
「聖女さま!」
びくっとして、声のほうを向く。
レディーヌさまだった。今にも泣きそうな顔で、ドレスの裾を軽く持ち上げて走ってくる。侍女達が慌てた様子でそれを追う。
兵達が遮り、レディーヌさまは停まった。息を整えている。
「なんだい、レディーヌ」エドゥアルデさまが云う。「なにか不満でも?」
「違いますわ。わたくし、興味本位で聖女さまの〈器〉の計測を見たいなどと云って、申し訳ございません。侍女の言動も、まったく彼女の無知故で、悪気はないのです。〈陽光の王国〉を思ってのこと、どうぞ、堪忍してください……」
レディーヌさまは喘ぎ々々云って、こちらへ頭を下げる。わたしはどうしたらいいのか判断しかね、周囲のひとを見た。
ランベールさんが今まで見たことがないくらいに渋い顔をしている。兵達も仏頂面だが、ランベールさん程ではなかった。
「それはつまり、聖女さまに疑いをかけるのは当然だったと云いたいのかな、レディーヌ?」
エドゥアルデさまは笑い含みの声で云う。しかし、口がわずかに弧を描いているだけで、目は笑っていない。




