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計測 3


 ランベールさんは、王室護衛隊の数人をひきつれ、外套の裾を翻して、はやあしで歩いてくる。侍女達が一歩後退り、公主護衛隊が安堵の息をもらす。

 ランベールさんはレディーヌさまの前で左手を胸へあてたが、ごく短い時間だった。「ご機嫌よう、レロウクス・ジェルヴァイス公主殿下。今日、〈灰の広場〉をつかうのは、あめのさまの筈ですが?」

 侍女達は、ランベールさんの冷ややかな表情と声に、顔を伏せる。公主殿下は、寒さの所為か顔色が優れないが、軽く膝を折るお辞儀をした。

「お散歩に参ったら、たまたまいきあいましたの。無理を云って、見物を」

「……ロッル公主護衛隊隊長。何故停めなかった?」

「あ……あの」

 ランベールさんはロッルさんを睨み、ロッルさんはひくっと喉仏を上下させる。「ら、ラクールレル隊長。その……」

「このように寒いなかでは、体調を崩されるかもしれない。散歩ならばすぐに戻るよう進言すべきでは?」

「それは……」

「わたくしが無理を云ったのです」

「レロウクス・ジェルヴァイス公主殿下。失礼ながら、公主殿下でありながら、ご自分の行動に関して無責任ではありませんか」

 無礼な、と侍女達が云ったが、声に張りはない。ランベールさんはそれを睥睨する。「あなた達もだ。自分の発言が殿下に迷惑をかけるとは思わないのか。それとも、公主殿下があのような発言をするように命じたのですか?」

 レディーヌさまは硬直していたが、ジェラルディーヌさんが云った。

「違いますわ、わたくしたちの意思です。しかし、当然のことではありませんか、ラクールレル王室護衛隊隊長。あの者は下位コンバーターになにか細工をしたに違いないのです。それを記録させようとしているのです。それは王室への、そして〈重たい炎(ラァ・スプロ)〉への不敬、無礼、冒瀆です。なんという慮外者でしょうか!」

 ランベールさんが剣の柄へ手を遣った。


 ジェラルディーヌさんが後退る。

「な。なんですか」

「〈陽光の王国(スプロ・ルオ)〉憲章を知らぬとは云わせぬ。聖女さまへの無礼は厳に禁じられている。切って捨てることもできるのだぞ」

「な! あの者は聖女さまでは!」

「〈灰の広場〉故血で汚せぬ。マーリス、あの無礼者をつまみ出せ」

 マーリスさんがはいと威勢よく返事して、ジェラルディーヌさんへ近付く。レディーヌさまが叫んだ。「おやめ! ジェルに触れないで!」

「公主殿下、王室護衛隊隊長として、わたしは聖女さまへの侮辱を見逃せないのです。そして、御身もそうである筈です。国の為に身を削ってくれる聖女さまに対しての無礼は誰であってもしてはならぬでしょう。それがお気にいりの侍女であれば尚更、叱正するべきです」

「わ……わたくしは……でも……」

 レディーヌさまは今にも泣きそうだ。わたしは、なにか云おうと思うが、言葉が見付からない。そして、エーミレさんが、低声で云った。「あめのさまはなにも仰言らないでください」

 けれど……わたしのことでもめているみたいだが。


 ランベールさんの後ろに控えている、コランタインさんが云った。「隊長。なにやら、あめのさまが疑いをかけられている様子。もう一度計測すればよいのでは?」

「……それはいい」ランベールさんは感情のこもっていない声を出す。「お疑いのようなので、立会人を増やしましょう。丁度、姫や王子達が食事を終えた頃です。お前達、どなたでもいいので、おつれしろ。聖女さまが〈器〉を計測するので、記録をとる際に立ち会ってほしいと云えば、どなたも喜んでいらっしゃる」

 ランベールさんの目は冷たい。

「あめのさまがいやがるだろうと配慮したつもりだったが、初めからこうしておけばよかった。わたしはまったく、考えが足らない」


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