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計測 2


 上着の襟を掻き合わせる。寒い。「けいそくします」

「しかし、あめのさま」

「隊長がまだです」

 わたしは可愛いレディーヌさまを見て、すぐに目を逸らす。俯く。

「あの……(たし)かに、寒いので。わたしも、はやくすませたいんです」

 エーミレさんが小さく舌を打った。低声で云う。「あめのさま、気になさらないでください。あのような……見物人は、これとは関わりないのですから。本来、立ち会うことはないのです」

「きにしているのじゃありません」

 わたしは嘘を吐く。もめごとはいやだ。嫌いだ。「そうじゃなくて、わたしが寒いんです」

 エーミレさんとツェレスタンさんを見ると、ふたりとも苦い表情だった。


 わたしはもう一度、計測します、と云った。渋々、という様子で、エーミレさんとツェレスタンさんが頷く。「計測したらすぐに戻りましょう。隊長へは、遣いを出して結果を知らせます」

「ありがとうございます」

 表示を見やすいようにだろう、官吏のうちふたりが片膝をつく。ヴァグエット先生と、兵達は、数歩さがる。兵達は侍女の発言に不機嫌そうだった。ヴァグエット先生は、忙しなくあっちこっちを見て、落ち着かない様子だ。

 わたしは息を整えて、下位コンバーターの投入口へ、右手をそっと挿しいれた。はやく終わらせて、レディーヌさまを屋内へ戻さないと、風邪をひいてしまうかもしれない。

 目盛りが消え、ヴァグエット先生達よりも時間がかかって、数字が出る。


 13231/13267


「い。……いちまんさんぜんにひゃくろくじゅうなな」

 官吏がささやく。わたしは黙っている。一万? なにかの間違い?

 エーミレさんとツェレスタンさんが、にっこりした。ほかの兵達もだ。「聖女さまは桁が違いますね。そうでしょう、ヴァグエット師?」

 何故だか脅しつけるような声で、エーミレさんはヴァグエット先生へ呼びかける。ヴァグエット先生は、びくついて、汗を拭き々々頷いた。こんなに寒いのに、汗を相当かいている。


「そ……そんなことありえないわ」

 侍女のひとりが喚く。わたしは吃驚して、そちらを見た。先程の侍女だ。淡い茶色のウェーブヘアを乱して頭を振る。

「なにかの間違いです。どうして、そんな訳が……官吏、計測しなおしなさい」

「ジェラルディーヌ嬢」アルバンさんが鋭く云う。「無礼だぞ。口を慎め」

 その一言で、ジェラルディーヌさんは逆にヒートアップした。

「アルバン卿、無礼なのはどちらですか? 公主さまを追い払って嘘の記録をつくろうとし、それが巧くいかねば斯様な不正、〈重たい炎(ラァ・スプロ)〉への無礼です、不遜です、冒瀆です!」

 不正、と断じられたのが何故か、解らない。が、公主さまの侍女達が頷いた。口々にやりなおしを要求している。公主護衛隊の兵は、困った様子で、それを鎮めようと説得している。「落ち着いて、お静かに……」

 わたしが手をひっこめると、表示が目盛りに戻った。

「ジェル」公主さまはあおざめている。「おやめ……」

「いいえ、いいえ、やめませんわ。なんてことでしょう、コンバーターに細工するなぞ、とんでもない不祥事です、今すぐ捕らえねば」

「誰が誰を捕らえると?」

「ですから偽の聖女……を……」

 喧噪がおさまった。

 皆、声のほうを見る。

 ランベールさんが居た。険しい表情で。


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