エーヴェのこと
それこそ、ずっと訊きたかったことだ。
ナタナエールさんとアムブロイスさんは目を交わし、微笑む。わたしは俯いて、ちらちらとそれを盗み見ていた。
「あめのさまはお優しいですね。……エーヴェは家族がありません。ささやかですが、すでに弔いは済ませました」
ぐっと胸が痛む。そうか……お葬式に出席したかった。……停められた気もするけれど、それでも、せめて教えてほしかった。
お墓参りならできるだろうか。わたしはマグをテーブルへ置く。お墓の場所はと訊く前に、ナタナエールさんが云う。
「炎はエーヴェを天へ送ってくれました。遺灰は明日になれば、分割川へ」
火葬にして、散骨してしまうのか。火の神さまを崇拝している国みたいだから、火葬にするのは当たり前かもしれない。
「あの。……わたし、立ち会っちゃだめですか?」
「申し訳ありませんが」
即座に云われた。わたしは、ゆっくり頷く。なににしても、許可が出ない時に追求はいけない。エドゥアルデさまの機嫌を損ねたら、阿竹くん達に跳ね返る。
ナタナエールさんはわたしの傍へ片膝をついて、低声で続けた。
「あめのさま、気分が塞いでおいでのようですね。……アムブロイス、慥か、五つ葉の城には、望楼があったな?」
アムブロイスさんが頷き、わたしへ云う。
「明日は、朝から宮廷魔導士の授業がありますが、昼頃休憩をとって、望楼から景色を眺めては? 〈灰の広場〉が見えますし、裏手の川もご覧になれます」
川……。
わたしは、はい、と云う。
軽く汗を落として、ベッドにはいった。ナタナエールさんが灯を幾つか消す。
まどろむような浅い睡眠があり、朝になって、わたしはベッドを出た。
浴室へ暫く閉じこもって、とりあえずの体裁を整える。寝室へ行くと、本来、侍女の仕事らしいが、侍従達が衣裳箱を幾つか持ってきていた。侍女がいればきがえを手伝うそうだが、男性ばかりなのでそうもいかない。一時的に、全員廊下へ出る。
手が掴んだものを着た。オレンジ色に緑の細いリボンがあちこちで結ばれたドレス、パステルグリーンのくつ、白い上着。
侍従達が衣裳箱を運び出し、居間でご飯を食べる。衣裳部屋は、倉庫みたいなことで、わたしが直に行く機会はないようだ。
ご飯は、宮廷の料理人がつくったそうで、量も品数も少なかった。さつまいもをふかしたものと、とうもろこしをふかしたもの、洗っただけのいちご、あとは、小さな塩つぼが、大きめのテーブルにちんまりとまとまっている。
適当に塩をつけて、お芋ととうもろこしを食べる。あんまり味はしない。ふかしかたがまずいのか、そもそもこちらの世界のお芋やとうもろこしがおいしくないのか、どちらだろう。
どちらにせよ、食べられるものを食べるしかない。
「自分も手伝おうとしたのですが」
今朝の護衛、エーミレさんが肩を落としている。「必要ないと。ですが、あめのさまの食べられないものばかり用意しまして」
「大丈夫ですよ」
ややこしいことになるのがいやでそう云った。いざとなれば、自分でまかなえばいい。こちらではアレルギーはめずらしいようだし。
いちごは酸っぱかった。わたしはベリー系のくだものが得意ではない。
わたしはしかめ面をしていたみたいで、ツェレスタンさんがどうかしたのですかと訊いてきた。いちごが苦手だというようなことをもごもごと伝える。厨房へ伝えてくれるそうだ。




