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五つ葉の城


 五つ葉の城は、予想よりも大きかった。

 露の塔くらいの、もしくはそれより小さいものを考えていたのだ。だって、聖女ひとりが暮らす為の建物らしいから。

 だが、実際のところ、月影で判別しづらいものの、少なくとも四階はあるくらいのサイズだった。ついでに幅もある。


 馬車から降りる。ナタナエールさんとアムブロイスさん、兵が数人、金のたすきを掛けた従僕が三人、それから宮廷魔導士がひとり、その前で待っていた。

 ドレスのスカート部分を軽く持ち上げ、そちらへ歩いて行く。兵達が会釈した。従僕と宮廷魔導士もお辞儀する。

 城のなかへ這入った。玄関広間にはやわらかい光量の灯が点っている。シャンデリアはないが、壁にとりつけられた燭台が多くあり、充分明るい。灰色っぽい石の壁には、湖、山、雪景色、の三枚のタペストリーがかかっていた。

 ナタナエールさんに手をひかれ、階段をのぼっていく。わたしの部屋は四階にあって、その階のほかの部屋は衣裳部屋と浴室だけだそうだ。ついでに、衣裳部屋は春用・夏用・秋用・冬用・装飾品に分かれていて、どの部屋もすでに中身が詰まっているとのこと。


 部屋はひろかった。がらす窓がある。大きな円卓には白いレースのクロスがかかっている。背凭れの豪華な椅子は二脚。本当に贅沢なことに、これは学習机らしい。宮廷魔導士に魔法について教えてもらう為のものだ。

 扉のついた本棚には、本と、しっかりした装丁のノート、インクつぼにペン。ぱっと見たところ、文字は読める。ほっとした。

 それから、這入って左の扉の向こうが、寝室だ。こちらも窓はあった。大きなベッドに、華奢なドレッサー。優美なデザインのランタンが置いてあった。

 衣裳箱もあって、中身は下着類と、寝間着だった。

 更にその奥は、浴室だ。ここには天窓があるだけで、外を見られるような大きな窓はついていない。床は白いタイル張りだった。各種せっけん、香油、タオルなどがたっぷり用意されている。


 居間へ戻る。ナタナエールさんが、お茶を淹れてくれた。わたしは椅子に座って、ありがたくそれを飲む。

 アムブロイスさんが手で示しながら云った。「あめのさまの侍従、アルバン、ブライセ、ツァルレスです」

 侍従だったのか。じゃあ、金のたすきは、侍従の印……なのかしら。

 三人は、アルバンさんが三十手前くらい、後のふたりが二十代半ばくらいに見えた。ブライセさんが背が高く、残りはそうでもない。ツァルレスさんは紅茶みたいな色の肌に茶髪で、ほかは青白い肌にくすんだ金髪だった。

 三人があらためて簡単に自己紹介し、アムブロイスさんが今度は宮廷魔導士を示す。

「ヴァグエット師です。あめのさま専属の宮廷魔導士で、明日から魔法について教えてくれるそうです」

 ヴァグエット先生、は、ぺこぺこする。四十代はじめくらいで、かなり短く切った黒髪がふわふわしている。宜しく願いしますと云うと、恐縮された。


 侍従は廊下で控え、宮廷魔導士は二階、兵の大半は一階の部屋へ行った。一階と二階には、兵、侍従、宮廷魔導士の――――そして配属されるとしたら侍女の――――部屋がある。

 ナタナエールさんがおかわりをくれた。今夜の見張り、もとい護衛は、ナタナエールさんとアムブロイスさんだ。「ありがとうございます。……ランベールさんは?」

「兵営です。今回の……あめのさまをここまでおつれしたことについて、詳細に記録を残さねばなりませんので」

 わたしは頷き、一回深呼吸する。

「エーヴェさんは、どうなったんですか」


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