作戦会議
翌朝、トゥウェイネ邸(城?)を出て、またしてもひたすらに馬車移動だ。北へ向かっているらしかった。日の出の方角が東なのであれば。
たまに窓を開けて外を見る。雪は降っていなかった。が、かなり積もっているのが見てとれる。馬車の速度も、前日よりゆっくりだ。
わたしは訊かないし、ランベールさんもエドゥアルデさまも云わないけれど、阿竹くん達は無事なのだろう。約束を破られたらわたしも約束を破る。
みんな、一緒に居るのだろうか、寒くないといいけれど。
その日は、どこかの街の、首長のお邸に泊まった。
騎士爵を持っているひとだそうで、王太子殿下と顔見知り。好意的に言葉を交わしていた。戦場で知り合ったらしい。
当人も云っていたが、エドゥアルデさまは王太子でありながら、他国との戦いの先陣を切ることがとても多いのだそうだ。それに関して、エドゥアルデさまは奇異とは考えていないらしい。なんにせよ、僕が死んでも下が居ますから、と云って、まわりが笑うべきか否か迷うのを見て楽しそうだった。でも、冗談ではないと思う。だからわたしは頷いておいた。
次の日はやく、サラヴェル領へ這入った。サラヴェルは、王家の名字だ。詰まり、直轄地。
王都までは、それでもあと一日程度かかるらしいが、エドゥアルデさまはほっとした様子だった。
「我が家の領地は、道の整備が行き届いていましてね。馬も走りやすいと喜んでいるでしょう」
喜んでいるかはともかく、速度はあがった。
窓を開けると、綺麗な雪景色だ。顔を少し出して、後方を向くと、石の張ってある地面が見えた。自転車でも、きちんと舗装された道だと速度が出たし、馬車の車輪はスムーズにまわっているのだろう。馬も、こういう道のほうが歩きやすいのかしら。
その日、泊まったのは、王家の別邸、と云うかお城だった。
トゥウェイネ子爵のお城の倍くらい大きい。尖塔はみっつある。白っぽい外壁に、黒や茶色や黄土色の瓦で屋根がふかれていた。
馬車を降りたエドゥアルデさまは伸びをして、わたしの手をひいた。「食事をとって、休みましょう。もう少しで目的地です。まったく、国土がひろいのも困りものだな。移動に時間のかかることと云ったら……」
建物の内部は、掃除が行き届き、埃ひとつない。ろうそくではないなにか(おそらく、魔法)の火が点ったシャンデリアが華やかだ。贅沢なことに、五貨を連ねた装飾が施されていた。
壁には細かい模様のタペストリー。それに、甘い香りの花が、大きな花びんにいけてある。あたたかい空気と、おいしそうな食べものの匂いが、ふわっと漂ってきた。
食事をとる間、ランベールさんとエドゥアルデさまは、わたしの初陣について喋っていた。「このところジェルバイスの被害が大きい」
「オライヴェタイン領を横切らせると?」
給仕の使用人以外は、王太子殿下とわたし、そしてランベールさんしかその場には居ない。その所為か、ランベールさんは、エドゥアルデさまに対して平口だった。
「いいや。聖女さまには別の場所へ行ってもらって、そちらは適当な貴族に要請するさ。それこそオライヴェタインか、イングライスにでも。エナインとヤーフェルには荷が重い。前回の遠征で軍の半数を失ったばかりだしな……聖女さまには、貴族軍の士気を上げてもらう。国をまもる為に聖女さまがどこかで戦ってらっしゃるとなれば、兵の士気は上がるのが普通だろう?」
「それはそうだが……」
「エルノアクスとの領境辺りへ行ってもらう。リザードマンと、ピルバグが、幅をきかせているようなのでな」




