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話し合い 2


 王太子殿下は、右手の親指と人差し指を立てた。「ひとつ目は、女と成る丈接触しないこと。これは、一応、何れ少しは緩和するつもりの条件だ。ふたつ目は、兵、使用人、専属の魔導士のほかとは、必要以上に親しくしないこと」

 ひととの接触をやけに制限するのだなと、わたしの頭はどこか冷えていて、そんなことを考える。だが、条件としては軽い。頷いた。王太子殿下は微笑む。

「理由を訊かないのですか?」

 わたしはただ相手を見詰めた。気になるが、訊いたところで答えてくれないのではと考えていた。

 エドゥアルデさまはマグをテーブルへ置く。

「知りたいようですから、説明しましょう。わたしには聖女さまの血が流れている」

 ついとランベールさんを示す。「王室護衛隊隊長どのにもだ。しかし、それぞれ、先祖にあたるかたは幾らかの差異がある。ランベールは〈雨降る王国(クイ・クロット)〉王家の血もひいているのでね」

 暫く誰も喋らない。

 王太子殿下は、用意されているデザートのかごから、デーツをつまみあげた。口に含んで嚙む。

「……もっと()()雰囲気のところで云いたいものだな。聖女さまというのは、獲得した国の王か、王太子か、少なくとも王子と添うものです。今のところ、可能性が一番高いのは僕でしょうか。あなたをさらってくるようランベールに命じ、成功させた。この四年で、臣下に劣らぬ武働きもしていますしね」

 添う……結婚する、ということ?

 ()()()()()()()()()


「さて、こういう場合、厄介なのは誰だろうか?」

 エドゥアルデさまは干しいちじくを口へ放りこんだ。

「見目のよい使用人、優しい魔導士、頼れる兵……どれも違う。そういう者達には、きちんと云い含めてありますから。彼らは立場を弁えている。使用人は聖女が快適に過ごせるよう心を砕き、魔導士は聖女の望むものをただ与え、兵は聖女を国の母やそれに準ずる者として扱いまもる。脅威となるのはね、()です。年齢や立場に関わらず」

 わたしは身動ぎせず聴いている。

 これは死刑の宣告に等しい。

「僕は、あれは優しさの発露ではないと思うのですよ。女というのは妬み深い。自分がかなわぬことを成し遂げようとする別の女を、親切ごかして邪魔する。本当は結婚したくなんてないだろうから、助けてあげる、なんて、ね」

 続いた言葉は衝撃だった。「それで、二十年くらい前の聖女は死んだと聴く。遠く、〈青の海〉、47の小国群の話故、未開人の野蛮さがあらわれただけだと云う者もありますが、愚かというものだ。聖女は、国の決めた相手、王子と添うのを拒んで逃走した。一緒に招聘された仲間は殺され、結局聖女も死んでしまった。自死を選んだと伝わっています。それもこれも、聖女の身のまわりのあれやこれやをこなしていた侍女達が、聖女と、聖女と心を交わした魔導士を、()()()()()()()ふたりを逃がしたからだ」

 王太子殿下はこちらへ向けて笑った。

「詳細な記録まで手にいれられたのはその件だけだが、聖女が逃げて脅威となり、殺された話は数知れない。大概、手引きをするのは女達だ。自分が決して王后になれぬひがみからだと僕は考えています」

 エドゥアルデさまはにっこりした。「ですから、これはある意味あなたの為でもある措置なのですよ。下らぬ嫉妬でひきずりおろされるのはいやでしょう。あなたには今、〈東大陸(デン)〉で二番目の大国、〈陽光の王国(スプロ・ルオ)〉の王后への道が拓けているのだから」


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