表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

503/1167

勝敗について


 鍛錬は終了だ。これからおやつを食べる。

 勝敗に関しては、こちらの棄権で、だから負けだと提案した。が、ランベールさんは納得せず、頭を振った。

「聖女さまが攻撃を辞めてくださらなければ、わたし達は負けていました」

「そうですかね?」

 それは単純な疑問だったのだけれど、ランベールさんが仏頂面になってしまった。嫌味ととられたのかもしれない。

「わたしの魔力は、そろそろ底をつきそうだったのです。あの戦法では無用に魔力を消費してしまう。悪手でした」

「あれ、結構厄介でした」

 本音だったのでぽろりと出てしまった。わたしは微笑む。「もう暫く続けられたら、一撃をくらっていたかもしれません」

「お誉め戴きまして……しかし、結局のところ失敗しています。それに、あと何回も、あの攻撃はできなかったでしょう。第一に聖女さまは即座に対策をたてられた。やはり、〈器〉の大きさに顕著な差があると、勝負にすらならない。同程度の〈器〉の相手に対してとるべき戦術でした」

 最後は溜め息まじりだった。そこまで差があったのだろうか。わたしにはあまり、実感がない。

 ランベールさんが譲らず、ランベールさんの組の役付の兵達もそれを支持したので、わたしの組の勝ちで収まった。


 わたしの〈器〉の大きさは、鍛錬前からランベールさんは解っていた筈だ。それでも、実践形式の鍛錬にしたり、わたしと別の組を率いて効果のありそうな作戦を練ったり、大変な努力である。真似できない。

 昨日のことはまだ、くすぶっているけれど、だからといってランベールさんのすべてを否定するつもりはない。ランベールさんは、その地位に相応しい人間であるよう努力をしている。

 なにかへ挑みでもするように。


 新兵と従僕達が走りまわっている。兵達は、ここでおやつをとるのだ。テーブルが運ばれ、また()()()()している。兵達は水を出して顔を洗ったり、どこかへひきあげていったりする。すぐに戻ってくるから、手洗いか、服をきがえたらしい。

 それを横目に見て、わたしは「居間」へ向かう。ランベールさんと侍従、宮廷魔導士、医者がついてくる。わたしは髪を手櫛で簡単に払い、ついでに恢復(かいふく)魔法をかける。かける前から、指通りは悪くなかったが、もっと滑らかになった。どうせならストレートヘアになってくれればいいのだけれど、イメージの貧困なわたしのことだ。失敗の予感がして仕方ない。

「おやつには、何人か招きましょう」

「聖女さま」

 呆れたような声だ。わたしは隣の、ランベールさんを見詰める。彼はこれに弱い。案の定、渋々だが頷いた。

 衝立の奥へ行った。「きがえます」

 数人の足が停まる。ついてきたのは侍従と医者だ。わたしは「寝室」のまわりの、衝立の間を通る。それから、くるっと振り向いた。ランベールさんや聖女護衛隊の兵が、わたしをしっかり見ていた。消えるとでも思っているのだろうか?

「最前列で、持ち場を離れずに戦う姿勢を見せた盾兵達を、招きます。鎧が破損した者を優先し、成る丈別の小隊や中隊所属の兵を。それと、ジラードゥクス師団長も。テーブルはヴァグエット先生が用意してください。招くのは十人程度です。ランベールさんも同席を」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ