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帰宅


 帰り道は静かだった。わたしの……味方? とでも云えばいいのかな。ううん、サシャ卿とは別に、争っている訳ではないのだけれど。でも、気分としてはそんな感じだし。

 とにかく、聖女護衛隊や、侍従、宮廷魔導士、医者など、立場としては「聖女」に味方してくれるに違いないひと達だけで移動したのだ。もめごとだのなんだのは起こりようがないし、そもそも誰も無駄口を叩かない。

 会話はないから物理的に静かだ。お茶会は、アクシデントでなんだか不穏な幕切れだったけれど、ランベールさんが居ればなんとでもなる。寧ろ、わたしが居ないほうが、話は円滑に進むだろう。腹を割って話す、というやつ。わたしは、いろんな物事の邪魔になっているからな。

 ランベールさんに任せて、後顧の憂いはないので、精神的にも静かだった。ただ歩くだけだ。たまに身体強化はかけたけど、頭のなかは空っぽに近かった。おなかがすいたような気がする、と考えたくらい。


 途中、トイレ休憩をはさんで、「部屋」に到達した。窮屈なドレスから解放され、ゆったりした部屋着でベッドに腰掛ける。ぼんやりと歯を磨いた。

 お茶会についてきた侍従と兵が、ついてこなかったひと達になにがあったかを説明している。くじびきの結果とか、わなげの顛末とか、そういう話だけでいい。ほかに話すべきことなんてない。

 わたしは口をゆすいだり、顔を軽く洗ったり、髪を()いたりした。スゥーリーはまた寝ている。とびねずみって、こんなに寝ているものなのだろうか。

 もしかしてなにか、体の具合が悪いのではないか、食べもので中毒したのではないか、と心配になった。檻からとりだし、解毒や恢復(かいふく)をしてみたけれど、特に変化はない。相変わらず、でろんとのびて眠っている。やまねみたいに冬眠しているのかしら。

 冬眠? 季節がランダムに巡ってくる世界に、冬眠や冬ごもりなんてあるのだろうか。一年以上冬が続く場合もあるそうだから、無理なのでは? その場合、冬眠したり冬ごもりしたりする動物は、どうなるのだろう。もとの世界とは違う行動をとるのかな。

 ぼーっと考えていると、眠くなってきた。スゥーリーの眠気がうつったみたいだ。寝よう。


 スゥーリーを檻へ戻し、きちんと扉を閉めた。居なくなってほしくないのだ。執着している。

 自分へ、身体強化と恢復(かいふく)、解毒のみっつを、強めにかけた。それからベッドへ横たわる。夢は見ませんようにと思った。なんとなく。

 すぐに眠ったのだと思う。

 ふっと、すぐ近くに気配があるような気がして、目を開けた。くらい。けれど、口のなかでぶつぶつと魔法文字を唱え、身体強化をかけると、それなりに見える。

 衝立の傍にランベールさんが立っている。剣の柄に手を置いて、なにがあってもすぐに対応できるような姿勢だ。

 わたしは二・三度瞬く。気配は気の所為だ。ランベールさんがすぐそこで控えているのに、わたしに近寄れるひとは居まい。そんなひと居たら、剣聖になっているのじゃないかしら。

 お茶会だのなんだのがあって、その上ああいうアクシデントで色々と処理しないといけないこともあったろうに、ランベールさんはこうやって深夜までわたしの見張りをしている。


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