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おやすみ


 サシャ卿はにっこりしていた。自分でカンテラを持っている。

「先程、云いそびれてしまったので、……ささやかなものですが、明日、お茶会を催します。ほかに用事がなければ、是非来て戴きたい。わなげやくじ引きをしますので、気が紛れるでしょう」

 わなげにくじ引き。なんだか、楽しそうだ。バザーみたい。

「わたしには聖女さまの護衛という職務がある」

 しかし、ランベールさんはつっけんどんに返す。「空白は乙女子にはおそろしく、心細いもの。聖女護衛隊の隊長として、お傍を離れる訳にいかない。職務放棄はできない」

 まったく理路整然と断られ、サシャ卿は寸の間黙る。ランベールさんが前を向く。


 ひっぱられて歩き出そうとしたわたしに、サシャ卿が云った。

「これは失礼しました、ランベール卿。聖女さまに直に、お越しくださいなどと云うのは気がひけましたので、ランベール卿に申したのです」

 ランベールさんがとまったので、わたしもとまる。

 ランベールさんはわたしを見ていた。わたしはそれを見詰め返し、ちょっと、考える。

 ここで断ったら、問題になるのじゃないだろうか。それがある。あとは、わなげ楽しそう、というのも、少しだけ。……ほんとに少しだけ。

 低声(こごえ)で云う。

「行ってもいいですか?」

「……あなたがそう望むのであれば。応じますか?」

 頷く。ランベールさんは溜め息を吐いて再び振り返り、お茶会の申し出をうけた。


 「部屋」へ辿りつくと、執政官の従僕は居なくなった。地下はばけものも居ないし、危険はないと思うのだが、王領警備部隊の兵がふたり、送っていった。

 邪魔っ気なアクセサリをとりさり、スゥーリーをとりだして窮屈なドレスを脱ぎ捨て、部屋着にかえた。用足しと、歯磨きをすませる。寝台に座って、髪を解き、櫛をいれた。

 まずまず……だったかな。もめごとはあったけれど、大きな騒ぎにはならなかったし、ランベールさんとサシャ卿の衝突も避けられた。まあ、ぴりぴりはしていたが。

 櫛を置いて、伸びをする。明日ははやくに起きて、兵達と鍛錬だ。乗馬はできないから、沢山打ち合いをすることになる。


 ベッド横の壁のくぼみに、スゥーリーのはいった檻が置いてある。

 小さめでまるっこいフォルムの、可愛らしいものだ。白く耀く金属でつくられていて、下のほうが網のようになり、玉貨で装飾されていた。側面には小さな桶が括り付けられ、おそらく水飲み場になっている。床には厚く、布がはってあり、ピンクッションのようなものが幾つか置いてあった。隅っこにある木箱に枯れ草が敷いてあるのは、トイレだろうか。

 飛びねずみは木の高いところで暮らすそうだし、もう少し大きめの檻でもいいと思うのだけれど、高位の人間が小動物を飼うとなったら、こういう装飾的な檻にならざるを得ないのかもしれない。スゥーリーの居心地が悪そうだったら、新しいものにしてもらえばいい。

 スゥーリーは、自分の倍くらいあるクッションの上で、すうすうと寝息をたてていた。よく眠る子だ。

 檻のすきまから指をいれて、スゥーリーをつついていたら、ひょいと思い付いた。斧を新調しよう。今みたいに、時間にも魔力にも余裕がある時につくっておいて、戦闘をする場所へ運べば、コストがかからない。その手をつかおう。


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