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食事会、献立


 三人ともなにか、大きな活躍があったのだろう。まあたらしい外套で、しゃちほこばって座っている。

 エルランジエル小隊長と目があったので、軽く頷いた。あちらは驚いた様子で項垂れる。怯えたようなふうで、わたしはちょっと、ショックをうける。

 楽隊の奏でる音楽が、少しだけ大きくなった。もう、クライルくんの泣く声はしない。飴で機嫌がよくなってくれたのだろうか。ちゃんと歯磨きをするように、と、付け加えておくべきだったな。

 従僕と女中が、大きなお盆に食べものと、食器類をのせて運んできた。静かにそして無駄のない動きで、テーブルの上に並べていく。女中はテーブルのこちら側には決して近付かず、お盆がからになるといそぎあしで逃げていった。人員的な問題があるから、女中をひとりもつかわずに円滑に食事会を進めることはできない。従僕だけをつれてきた訳ではないのだろうから。


 テーブルはどんどん、埋まっていく。わたしの前には、さつまいもと干しぶどうを煮たものや、カットフルーツの盛り合わせ、黄金色で具のない炊き込みご飯、数種類の豆がはいったスープが置かれる。勿論、フォークや匙も。それから、丸みを帯びた優美な形状の、金属製の水差しがひとつ。中身は水だといい。

 ランベールさんの前には、パンが山盛りのかご、なにかのステーキ、ゆがいた野菜、パセリのスープ、それに焼いただけのようなケーキ、などが並べられた。水差しはみっつある。お酒、ソフトドリンク、水、かしら。


 従僕と女中がいれかわりたちかわり、食卓を整える横で、サシャ卿が云った。「レイナル執政官、これはどういうことだろうか」

「なんでしょうか、サシャ卿?」

「この食事会には、聖女さまもいらっしゃると聴いた。聖女さまがいらしてから、このように食卓を整えるのが、礼儀にかなっているのではないか。先程、聖女さまがお越しだと、聴こえたようだったが」

 サシャ卿の前には、中身の少ないパンかご、ゆがいた野菜と腸詰め、カラフルで具沢山のスープ、ボウルいっぱいのサラダ、ヨーグルトらしいもの、水差しみっつが配置されている。夫人もほとんど同じ献立だが、ゆがいた野菜は炒めた葉野菜に、腸詰めは半熟のゆでたまごふたつにかわっている。また、パンにも差異があった。サシャ卿は黒っぽいパンで、夫人はまっしろでふっかりしたパンだ。


 サシャ卿はこちらを見ない。わたしはサシャ卿の前だけでなく、テーブルの上の食糧を全部観察している。

 兵達はボウルいっぱいのサラダに、野菜が沢山はいったスープ、それにゆがいた野菜まで大盛りにしていた。戦いで疲れているのだ。ヴィタミンは幾らあっても問題ない。

 執政官は、甘いものがお好みのようで、パンとステーキは控えめに、サラダはなしで野菜のスープも控えめ、小さなくだもののタルトが沢山、だった。水差しはほかと違って、よっつ置いてある。お酒が数種類、だろうか。

 わたしは現実逃避しているらしい。サシャ卿に説明する気力がないし、なんと云ったらいいのかだって解る訳がなかった。もうもめごとは勘弁してもらいたい。疲れているし、はやくこの儀礼を終えて、ベッドへとびこんで眠りたいのだ。その前に、ランベールさんとこっそりお茶をできれば、最高かも。


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