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食事会、着席


 すでに、席はほとんど埋まっている。軽いアルコールが供されていたようで、テーブルにはゴブレットが数脚置かれ、空気には甘ったるい香りがわだかまっていた。あまり好きな匂いではない。

 壁際――――正確には衝立際――――には、従僕が複数、私兵と王領警備部隊も複数、ぴしっと立って控えていた。女中が居ないのは、わたしに配慮してくれたのだろう。いや、王家への配慮か。

 着席していたひと達が、席を立って執政官を迎える。これは、こちらの世界でも礼儀にかなった行動なのだな。似ているところと似ていないところがあって、解らない。侍従達に、後で訊こう。

 そう考えていたって忘れてしまうのだけれど。


 執政官はさっと脇に避け、ランベールさんとわたしの姿が、食事会の参加者達にしっかり見えるようにした。

 ランベールさんは平然としている。わたしはばつが悪い顔をしないように努めた。サシャ卿が居たからだ。それも、あいている席の近くに。


 ランベールさんは昂然と顔を上向かせ、わたしをひっぱっていく。わたしはサシャ卿から目を逸らした。一瞬目を瞠り、その後訝しそうにし、険しい表情になったところまでは見ていたが、それからどうなるかがこわかったのだ。

 壁際で、サシャ卿の私兵も、大体似たような表情になっている。睨んでくるひとも居る。昼間はこんな豪華な格好ではなかったし、どういうことだろうと訝しんでいるのだ。いや、怪しんでいる、かしら。胡乱なものを見る目付きだった。

 ひと悶着あるかもしれない。これ以上のもめごとはごめんだし、誰も処刑したくはない。どうか、サシャ卿も、昼間わたしを見た、デライ夫人やサシャ卿の私兵達も、なにも云いませんよう。


 侍従が先まわりして、椅子をひいた。テーブルは円卓だ。ランベールさんが丁寧に、わたしに座るよう促し、座らせてくれる。そんなことありえないのに、後ろにひっくり返らないよう、せなかに手を添えてくれるのだ。

 いつものことだけれど、隣からサシャ卿の視線を感じるので、わたしの動きはぎこちなくなってしまう。危うくドレスの裾を踏んで、本当にひっくり返ってしまうところだった。

 ランベールさんはわたしを椅子に座らせ、自分も隣に座った。わたしはサシャ卿とランベールさんにはさまれている。ただ、ランベールさんとは肩が触れあう程だけれど、サシャ卿との間には席ひとつ分くらいある。その距離には、ちょっとだけほっとした。もっと離れていてもよかったのだけれど。

 昼間、ランベールさんとサシャ卿がなんだか険悪な雰囲気になったのもあるから、本当は席をもっと離してほしい。でも、位の順に座るのが当然みたいだから、もと・侍従長のサシャ卿がわたしの近くに座るのは仕方のないこと、である。


 執政官は、ランベールさんの隣に座った。その向こうには、ジラードゥクス師団長、更に向こうには兵が座っている。

 サシャ卿の隣には、夫人が居て、その向こうには、椅子ひとつ分あけて兵が居る。わたしに向かい合う辺りは兵達だけだ。皆、緊張した面持ちである。

 テーブルについた兵は、師団長を含めて六人。そのうち、師団長以外の三人に、見覚えがあった。ボースクエト大隊長、エルランジエル小隊長、それに盾兵だ。


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