女の子らしい?
侍従達は、アルバンさんを残してどこかへ消えた。まだなにか、用意しないといけないものがあるらしい。侍従の仕事は大変だが、誇らしいものでもあるよう。てまどるかもしれませんが、迎えが来るまでにはきちんと準備を整えますので、と、ふたりは胸を張っていた。
食事会へついてくるのは、アルバンさんと、ツァルレスさんだそうだ。なんにも心配はありません、と、アルバンさんは安心させるみたいに云ってくれた。侍従や従僕というのは数を揃えればいいものではなくて、きちんとした仕事のできる者を、必要なだけ揃えていればいいのだそう。やはり、侍従の仕事に誇りを持っている。
宮廷魔導士達が戻り、「寝室」の一角に、洗面台を設けてくれた。といっても、丁度いい大きさと高さの台に、はぶらしとハーブを浸したお酒の壜、洗面器が置いてあるだけ。お酒はマウスウォッシュで、わたしが好むようにと、スペアミントの風味が強い。口をゆすいだ水は洗面器に出し、侍従が捨てに行ってくれる。単純なものだが、高さが本当に丁度いいので、使い心地は絶対に最高だ。
ヴァグエット先生も、問題が起こらないように、食事会に同行してくれる。問題というのは、食べものが足りないとか、食器が不足しているとか、そういうことだ。
それと、当然のように、ドゥピュイス先生も来てくれる。具合が悪くなる可能性もあるので、ありがたい。
エルノアクス侯爵やツェスブロン男爵との会食は、半分以上戦闘についての会話をしていたから、二度目からはそこまで緊張はしなかった。というか、緊張はしていても、気まずい時にはリザードマンやピルバグについて話を振ればいい、と思っていた、気がする。なにより、指揮官三人であれやこれやと作戦を練っていてくれたので、わたしは八割の時間置物になっていた。
しかし今回は、戦闘とは無縁のサシャ卿が居るのだ。そして、その奥さん、デライ夫人が居る。女性も一緒に食事をとるなんて、ロウセット邸以来ではないだろうか。やっぱり、遙か遠い昔のように感じる。
緊張する自信がある。その揚げ句に倒れでもしたらみっともないので、医者が居るのは助かる。
侍従ふたりが満足顔で戻ってきた時、わたしは宝石箱を開いて覗きこんでいた。アクセサリが沢山詰まっている箱だ。武器に変化させやすいようなものはないかと思ったが、大体が華奢な金属のわっかや鎖に、大振りの宝石がとりつけられている。メタル? とかパンク? みたいな、ごつい金属製のバングルとか、ないものだろうか。
「この耳飾りはいかがですか?」
アルバンさんは、わたしが装飾品に興味を持ったことが嬉しいらしく、しきりとすすめてくる。「あめのさまの肌の色が映えます」
「あめのさま、準備は滞りなく終わりました」
ツァルレスさんがにっこりして、宝石箱の中身をあらためはじめた。すぐさま、侍従三人で、あれがいいこれが似合うと、アクセサリを選びはじめる。このままだと、ピアスホールを片耳に十くらい開けないといけなくなるかもしれない。
わたしはベッドに腰掛けて、ぼーっとしていた。ポケットのなかの、スゥーリーの様子を見る。このドレスにも、さっき突貫でポケットをつくってもらった。スゥーリーはぐっすりだ。
「迎えが参りました!」




