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薪割り 1


 斧の重さと、魔法で増やした体重で叩き割っているといえ、樹脂と樹液がこびりついてくるとつらいものがある。というか、成木でもさっきより、出てくる量が多い気がする。栄養補給したからだろうか。迷惑な。

 暫くすると、斧の刃に樹脂と樹液がこびりついてどうしようもなくなったので、一旦聖女護衛隊の後ろに退避した。さっきは、刃がつかえなくなる前に、柄が折れたのだけれど?


 聖女護衛隊は、魔法も得手なひとが多いので、武器ではなく魔法で幼木を攻撃している。成木の枝の届く範囲に這入らないように、皆さんちょこまかとよく動いていた。幼木を切ろうとすると、傍に居る成木に邪魔されるのだ。

 邪魔と云ったって、可愛いものではない。野球のバットくらいある太さの枝で、思いきり弾き飛ばされるのだ。成木ばかり狙っているわたしは、攻撃を避けられた反撃で、二度しかくらっていないが、何度もやられたいものではない。確実に肋骨を数本折られるし、だから下手をすると心臓や肺を損傷しかねない。わたしも肋骨が肺に刺さった感じがしたが、恢復(かいふく)魔法でなんとかした。あの息苦しさは、やっぱり肺が傷付いていたと思う。

 わたしが斧の刃から厄介なもの――――ああもう、べったべた!――――をとりのぞこうとしているので、ナタナエールさんとシェリレさん、コランタインさんで囲むようにして、まもってくれる。とてもありがたい。

 三人は息ぴったりで、周囲の成木に枝で攻撃されそうになっても、ひとりかふたりが魔法で攻撃して追い払う。マーダーウッドは、自分の傍にあるものには執拗に攻撃するけれど、離れたところなら深追いしてこない。ちょっかいをかけて終わりである。縄張り意識が強いのかしら。幼木を必死にまもっているのは、親子だからなのかもしれないな。


 わたしは魔法で樹脂と樹液を分解し、三人に礼を云って、飛び跳ねた。斧も自分も重さを減らし、ついでに浮揚もかけてあるので、上空へ弾丸のように向かう。とりのぞく手間と、新しく斧をつくるのと、どちらが効率がいいだろうか。

 こういう時、補給部隊が居ないのが痛い。補給部隊は武器をすぐにつくってくれるし、そうでなくとも〈雫〉をたっぷりくれる。斧を新しくつくるのに必要なくらいの魔力なら、簡単に補える。もしくは補給部隊に、斧についた樹枝と樹液をとりのぞいてもらう、と云うのも、できるかもしれない。

 とりあえず次の方策は、また斧が役に立たなくなった時に考えよう。わたしはそう決めて、斧をふりかぶり、マーダーウッドを一本叩き割った。やっぱり、綺麗な斧のほうが、切れ味がいい。


 眼下では聖女護衛隊が魔法をつかっている。火で燃やそうとしているようだ。よく燃えそうな樹脂がたっぷりだし、マーダーウッドは熱の変化に弱いそうだから、丁度いいのだろう。

 ただ、火がついても、マーダーウッドはすばやく枝で叩いて消火している。器用で憎たらしい。もっとこう、勢いよく燃えてくれないものかしら。

 わたしも火の魔法をつかうという手はあるのだが、〈雫〉をすぐに供給できない情況だから、疲れたくない。魔力不足の眩暈や頭痛は、かなりつらいのだ。もし、〈雫〉があるのなら、幾らだって燃やしてやるのだが。


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