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ランベールへの処罰


 ランベールさんは更に深く頭を下げた。これは、あれだろうか。政治的ななにか。

 わたしはにこっとした。「では、今すぐかえのくつを持ってきてもらえますか? それでゆるします」

 実際、わたしのくつは片方、底がぬけてしまっている。飛び跳ねるのにたえられる強度のくつを従僕が持っているとも思えないから、かえをもらうのは控えていた。でも、宮廷魔導士のつくったくつならほしい。

 きっと宮廷魔導士達も侍従達も来ているだろう、と思って云ったが、あたったようだ。ランベールさんは顔を上げる。

「なんと寛大なお言葉。すぐに持って参りましょう。そして、我らは聖女護衛隊らしく、聖女さまとともに戦います」

「ええ、お願いします……」


 ランベールさんは立ち上がり、お辞儀して、踵を返す。コランタインさんとアムブロイスさんも立ち上がったが、さっとこちらへ近付いてきた。「あめのさま」

「心配いたしました」

 わたしは微笑んで頷くだけだ。あんまり謝るのも聖女らしくないようなので。

 従僕が云った。

「聖女さま、斧ができあがりましてございます」

「ありがとうございます」

 従僕は座りこんで頭を下げている。斧はできたものの、重すぎて持てないらしい。おそらく鋼製だ。

 わたしは斧を拾い上げる。柄は握りやすいように、細かいでこぼこがある。先端には槍の穂のようなものがついているが、かなり装飾的でおしゃれなものだった。実用性はあるのだろうか。綺麗で可愛いけれど。

 わたしは口のなかで魔法文字を唱える。折角魔力を消費して頑張ってくれた従僕には悪いが、つくりかえるのだ。

 柄はタングステン、刃はタングステンにイリジウムをコーティングした。マーダーウッドは重さで叩き割るのが楽だ。

 魔力をつかったが、物質を変化させるのはいちから生成するよりも消費は少ない。わたしは図々しく、従僕へ云う。「もう一杯〈雫〉を戴けますか」


 〈雫〉を飲み干す頃、ランベールさんが戻ってきた。手には、新品のパンプスがある。金色で、控えめに緑色の蝶々結びがくっついている。

 ランベールさんは、斧を持つわたしに一瞬顔をしかめたが、すぐに真顔になる。「聖女さま、こちらでおゆるし戴けますでしょうか」

「はい。ゆるします」

「ありがとうございます……」

 ランベールさんはお辞儀してから、わたしの足許へ片膝をつき、くつを置く。わたしはくつを脱いで、新しいくつにかえた。ぴったりだし、さっきのくつよりも底が厚い。それなのに、足に合わせてしっかり曲がる。もしかしたら、タリエル先生が今つくってくれたのかしら?


 ランベールさんは立ち上がって、マーダーウッドを見遣った。わたしもそうする。マーダーウッドは、一ヶ所にわだかまっている。

 と、思っていたのだが、後ろに長く、マーダーウッドの列が伸びていた。わたしに減らされた人員――――木員?――――を補充する為に、そこにとどまっているのだろう。数にものを云わせるのが戦術としてつかえると、知っているのだ。

 ランベールさんが低声(こごえ)で云う。「よくないですね」

「ええ。とりあえず、上から斧でまっぷたつにすれば、なんとかなりますよ」

「あやつらは根を狙うと弱ります」

 呆れ顔をされた。


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