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街への襲撃 4


 聖女と認識されていなくても、こうやって言動には気を付けないと、後で問題にされるかもしれない。わたしが罰せられはしないだろうが、兵が叱責されたり、罰をうける可能性は充分ある。

 だから、マッレ中隊長にも頭を下げたりしなかったし、笑顔でお礼を云っておいた。もし後から、聖女さまにきちんと情報を与えなかった、と上役から云われても、大丈夫なようにだ。

 わたし自身が笑顔で納得し、お礼まで云っているのを、ほかの兵達もしっかり見ている。それがあれば、聖女のほうが途中で話を打ち切って居なくなった、ですむだろう。そうでなくとも、不充分な報告しかできなかったのは反省すべき、くらいの叱責ですむ。こちらに来てからもとの世界のひと月は経ったから、わたしもある程度学んでいる。


 防壁のぎりぎりまで歩いていった。右斜め前方には森がひろがり、身体強化でそれなりによくなった視力でも、化けものを視認できない。

 森を形成しているのは、幹の太さにそぐわないくらいにみっしりと葉が茂り、立派な木である。葉が瑞々しい。

 なんの木かは判断つかなかった。もとの世界では、あのような木は見たことがない。強いていうなら、木肌はもちのきに似ているかもしれないが、それだとどう考えても幹が太すぎる。幹は楠に似ているようにも見えるが、木肌が違う。葉の茂りかたは槙に近いようにも見えるし、けれど葉につやはなく、梅の葉に似て見えた。かといって、梅のようなかくかくした枝振りでもないらしいし、葉の色合いも違う。こちらの世界特有の木なのか、日本ではそんなに目にしないけれどもとの世界にもある木だろうか。


 葉のおかげでかなりくらい日陰になっているから、あの木の下に這入られたら絶対に見えない。やぐらに居る兵は、相当目がいいようだ。魔法で視力を強化するのが上手なのかもしれない。

 わたしは目に、特に重点的に身体強化をかけて、もう一度見ようとした。やはり、葉が不自然な程茂っているだけで、単なる森だ。そちらにあらわれただけで、まだ街へ向かってきてはいないのだろうか。それとも、森に隠れた?


 防壁の上に、兵達があがってきた。弓隊だ。すでに弓には弦が張られ、矢束を抱えた初年兵達が付き従っている。矢を補充するためにだろう。

 従僕達も、背嚢を背負い、腰に逆さにしたゴブレットをぶらさげて、数人やってくる。リザードマンとの戦いでは、侍従や従僕は、来るとしても内側の防壁にまでだった。でも、ここの防壁は二重になっていない。こちらへあがっても、軍律的に問題はないのだろう。

 更に、医者と付添人も、それぞれ荷物を持ってあらわれた。兵達へ簡単に挨拶し、さっとやぐらの下へ行く。防壁をのぼってくるような化けものの場合、やぐらが安全だ。防壁の端からかなり距離がある。それに、いざとなればやぐらにのぼれば、もっと安全だ。

 恢復(かいふく)魔法をつかえるひとは多くないし、それを失う可能性は減らしたい。かといって、前線の兵をすぐに治療してもらわないと、戦線の維持が難しい。折り合いがつくのがやぐらの下、ということだ。

 医者だけでなく、兵も足りていないらしい。早速、傭兵部隊がやってきた。

 

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