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つかってはいけない魔法


 火の熱が高くなる、もできる。凄く小さな範囲に高熱の火を発生させたり。でも、そうなると、呪文自体が変化する。構文も、わたしは深く考えずにやっていたが、色々と制約があるみたい。

 基本的に、表1・表2・表3の魔法文字は、最低でもひとつずつつかう。つかわないといけない、という訳ではないが、そのほうが安定的に魔法を発動できる。ただし、順番は自由。

 わたしがやったように、むっつもななつも単語をつなげるのは、イメージが難しいのと魔力の消費が激しいので、推奨はされない。単純で失敗の少ない例文は沢山あって、兵や魔導士になるとそれを学ぶ。化けものと戦わない、〈器〉の小さな一般市民でも、勉強はする。日常生活や、作業に有用だからだ。それと、口にしてはいけない組み合わせを学ぶ為。

 兵達は、つかっても、魔法文字いつつくらいが限度らしい。そもそも、つかえる文字が限られているので、それ以上つなげると構文がおかしくなって魔法が発動しない場合がある。後は単に、魔力をつかいすぎて昏倒するかもしれないから。

 それから、ランベールさんが云っていた、口に出してはいけない組み合わせ。代表例だけ教えてもらった。

 「デュア・パーズ・カム」もしくは「デュア・パーズ・ナー」。どちらも意味は「時間よ動くな」、詰まり時間停止。

 これを云うと、次の瞬間云ったひとは倒れ、魔力の枯渇が原因で死んでしまう。おそらく、当人の魔力が尽きるまで時間が停まっていたのだろう、とのこと。

 これに関しては効果時間のイメージはまったく通用せず、今まで数多くの人間が成功させようとして死んできた。だから、王室護衛隊では使用を厳に禁じている。

 「デュア・パーズ・メット」時間よ進め、「デュア・パーズ・キアオ」時間よ戻れ、も厳禁。どちらも口にした当人が死ぬか、正気を失うか、助かっても精神にダメージをうけて二度と魔法をつかえないか、らしい。

 もうひとつは、場所(セイヴ)に関するもので、基本的にイメージも実現も不可能なような呪文にしてしまうと、魔法は発動せずに気絶する。魔力が〈器〉から大量に消失する所為らしい。場所(セイヴ)をつかわずに発動不可能な構文にすると、魔力も消費しないのだそう。場所(セイヴ)は特別なのだ。

 しかも、場所(セイヴ)のはいった呪文で失敗すると、〈器〉が壊れ、容量が少なくなることもある。

 聖女招聘には場所(セイヴ)のはいった呪文を唱えるが、聖女招聘を行うと、場所(セイヴ)や聖女招聘に用いた魔法文字をつかえなくなる。どころか、死ぬ場合もある。

 それを聴いて、こちらが気絶しそうだったが、わたし達を招聘した儀式で死んだひとは居ないらしい。儀式が行われたのは聖堂のなかで、ランベールさん達が踏み込んだ時、動かない人間は居なかった。

 招聘儀式の負担が大きくて死ぬ、といっても、不思議な死にかたをする訳ではない。倒れて、見てみたら死んでいる。だから、あの段階で動けていたと云うことは、死んではいない。

 何故だかとても安堵した。


 魔法の練習は、落ち着いた。簡単な反復が続くからだ。その間は、イメージが大切、と云う大義名分を振りかざし、ほかのことは考えないですむ。例えば、自分が聖女として扱われているのにはどうも納得がいかない、とか、王都について王太子殿下と話すことになったら緊張で吐きそう、とか、化けものが出たらこわいけど全部燃やし尽くそう、とか。

 船にのって、十四日目。霧の向こうに街らしきものが見えてきた。


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