表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

244/1167

夜襲再び 2


「ただし光が苦手で、地上で活動するのはくらい場所か夜間のみ……と云われていますが、光で威嚇して追い払った成功例はありません」

 見遣る。みみずというか、ひるというか、ゆむしというか。

 くらいのではっきりした色は解らない。明るい色ではある、と思う。手足はなく、筒状の体だ。動きはこうがいびるみたいだった。ぺたぺたと這いずって、防壁へなにかを吐きかけている。

 ヴェルグネス小隊長が、悲痛げに云った。「あやつらは、突進してきて打撃攻撃を仕掛ける、人間を食べようとする、毒液を吐く、魔法をつかう、穴を掘って移動する、このいつつを主に行います。のたうちまわって地面を揺らし、落石を狙うこともありますが、今はあまり関わりのない話でしょう。魔法に関しては、体を強化し、場合によっては剣を弾く程硬くなります。目下、最大の問題は、毒液でしょう。あれはものを溶かすのです。特に、石や金属は、簡単に溶かされます。防壁が崩れるのが先か、あやつらが倒れるのが先か……」

 なんだ、その厄介な毒は。

「弓で攻撃しないのですか?」

「攻撃があたったらそこから毒液が噴き出し、その状態で突進されれば被害が尚更ひろがるからです。スニーキーワームを仕留めるには、正面に立ち、口のなかを狙って弓矢を射るのが確実で、このような配置の場合、煮立った油や湯をかけるのが最適です。体が縮んでまともに動けなくなるのです。そこを、我ら弓隊が射止めます」

 成程。

「よく解りました。ご教示ありがとうございます、ヴェルグネス小隊長」

「光栄です!」

 頷く。ヴェルグネス小隊長はもう一度お辞儀して、配下の兵へ指示する。

「スニーキーワームは狙うな。スニーキーワームから離れたところに居るリザードマンを狙うよう」


 どうも、それはむずかしいようだ。リザードマンは賢くて、スニーキーワームとつかず離れずの距離を維持している。間違ってスニーキーワームにあたったら、被害が甚大、と思うと、弓隊も躊躇しているらしい。

 わたしは内側の防壁で座り込み、弓隊の様子を見ていた。兵達が用意した鍋に、早速お湯を注いでいる。お湯のほうが冷めにくいから、燃やすのが目的ではないし、お湯でいいかなと思ったのだ。魔力消費も少ない。

 大鍋にお湯が充ち、別の大鍋ととりかえられる。熱々のお湯や油でいっぱいの大鍋が、外側の防壁へ運ばれ、中身が外へとぶちまけられた。以前、もとの世界で読んだ本に、コスト面を考えると油を熱して敵にかけるのは効率が悪い、と書いてあった。糞尿なら沢山あるしあたためる手間も燃料も要らない、籠城戦で熱した油をつかうのは幻想だ、と。

 ただしこちらだと、魔法があるから実用的な手段のようだ。大きな鍋をつくって、油を出して、熱する。ひとりですべてをまかなえなくても、得意な部分を担えばいい。油を出すのが得意ならずっとそれをやればいいのだ。

 遠くで歓声があがった。わたしは近場の兵へ訊く。「なにかあったのですか?」

 兵は別の兵へ訊き、それがくりかえされ、一分程で答えが返ってきた。

「ツェスブロン男爵が、単身突撃を仕掛けられました」

「え」

 兵を仰ぐ。ツェスブロン男爵、なんて無茶をするのだろう。

 しかし、役付らしい兵は冷静だ。「ツェスブロン男爵は古今無双の誉れ高い人物です。今までも、単身で突撃を仕掛け、大将首をあげることが幾度もあったとか。敵の剣が三本刺さった状態で勇壮に戦い続け、ついに劣勢を押し返し、また炎で半身焼かれようとも敵陣へつっこんでいくおかたです。リザードマンやスニーキーワーム程度にやられはしません」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ