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矢の作成 1


 お菓子もなくなり(ツェスブロン男爵の分は、エルノアクス侯爵が食べた)、お開きになった。本来、わたしは見送りをするべき立場だが、ランベールさんがかわってくれる。

 三人が居なくなると、わたしは背後にある、急遽つくられたらしいアーチから、廊下へ出た。廊下、というか、おそらく使用人用の通路だろう。汚れた食器の積まれたワゴンや、ワインらしいものでしみのできたクロスをつっこんだかごなどが置いてあるなかを、侍従の先導で歩く。かごにあしをとられたマーリスさんが、転びそうになっていた。

 つかったことのない階段で二階へ上がった。そこからは、いつもつかっている階段へ向かい、三階へ上がる。


「コンバーターと玉貨を」

 部屋につくと、わたしは椅子をひいて座り、侍従へそう指示した。約束もあるし、矢をつくらねばならない。

 侍従は即座に、コンバーターと、玉貨の詰まった箱を持ってくる。王都から新しく玉貨が届いているので、心配はない。

 とりあえず、総デュラルミンの矢だ。わたしはイメージをかため、それを一本つくる。一度つくったことがあるのもあって、スムーズに、かつ、魔力消費もさほどではなく、つくることができた。

 お次は複製である。鉄製のやじりの矢しかためしたことはないが、いちからつくるのより、複製のほうが魔力の減りが少ない気がするのだ。

 右手に総デュラルミンの矢を持ち、左手にその複製があらわれるイメージで、魔法文字を口にする。矢・を・増やせ(レイ・ビイ・トオ)、だ。

 左手に矢が出現し、わたしの魔力はその分失われた。けれど、なにもないところから出現させるより、ずっとましだ。これなら行けるかもしれない。

「〈雫〉を用意しておいてください」

 侍従達は準備万端で、コンバーターをさかしまにして振る。出てきた〈雫〉をゴブレットにいれて、わたしの手の届く範囲に置いてくれた。


 落ちた矢を、マーリスさんと、エーミレさんが拾い、束ねる。麻紐かなにかをつかっているみたいだ。矢束は、侍従がどこからか持ってきた箱に、詰められた。

 わたしは時折、〈雫〉を飲む。疲れを感じずに作成できる矢の数は、100から120。複製のスピードは、魔力の現在値に依存するみたいで、疲れが出るまでやると効率が悪い。だから、50本程度で毎回補給にはいった。

 箱がいっぱいになり、運び出され、新しい箱が運びこまれる。次第に箱が追いつかなくなって、ふた箱になり、マーリスさんとエーミレさんだけでなく、侍従達も矢束をつくって箱詰めするのに参加した。宮廷魔導士が〈雫〉をゴブレットにいれる係だ。

 こつを掴むと、デュラルミンを出すのは楽だ。それとも、複製だから簡単なのだろうか。


 デュラルミンの矢を、玉貨三箱分くらいの魔力でつくりだし、一旦打ち止めにした。矢束をつくっていた五人が息を吐く。わたしは、ゴブレットに用意された〈雫〉を飲みほして、今度は総イリジウムの矢を出す。

 一本でも、デュラルミンより魔力をつかう。鉄とは比べものにならない消費量だ。

 だが、複製となると話は違った。鉄と比べれば(たし)かに相当魔力をつかうが、なにもないところからつくるよりはずっと少ない。半分にもならないだろう。デュラルミンよりもそもそもの魔力消費が高いから、減ったこともより実感しやすい。

 これなら、先程のように気を付けてさえいれば、量産は可能だ。


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