表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/1167

憤り 2


「聖女さまは気がたっておいでだ。〈雫〉を用意しろ」

 兵ふたりは、怒気をはらんだランベールさんの声に首をすくめる。傷痕のひとが持っているものへ、ポニーテールのひとが、玉貨をいれた。

 目を細めてよく見てみると、がらす玉のようなものは上部に、四角く切りとられたみたいに穴が三箇所開いている。なかには〈雫〉が詰まっていた。〈雫〉は放っておいたら消えてなくなるのじゃなかった?


 がらす玉のようなものは、底に土台がついている。土台部分は色がらすみたいに見えた。ランベールさんがポニーテールのひとへゴブレットを投げ渡した。傷痕のひとがこちらへ歩いてきて、ランベールさんへがらす玉を渡す。ランベールさんはがらす玉をうけとって、わたしの頭上でさかしまにして振る。

 〈雫〉が降り注いだ。わたしの体にぶつかると消える。痛みどころか、感覚はあまりない。たんぽぽの綿毛が触れたくらい。

 兵ふたりが啞然としていた。がらす玉は、暫く振るとなにも出なくなった。なかにはまだたっぷり〈雫〉が詰まっているのに、振っても出ないのだ。

 ランベールさんは腹を立てた様子で、がらす玉を傷痕のひとへ返した。玉貨をいれたら〈雫〉が出てくるということは、あれは、コンバーターだろう。

 ランベールさんが喚く。「マーリス、魔力が凝りはじめたらすぐに報せるよう伝えろ。ナタナエール、聖女さまに……なにか、甘いものでも、用意しろ」

 最後のほうは怒りを抑えるみたいな声だった。

 傷痕のひとが出て行った。ポニーテールのひとは、ゴブレットに手をかざしてぶつぶつ云う。わたしはクッションを掴み、睨む。いらいらが収まらない。

「聖女さま……」ポニーテールの、ナタナエールさん、が、ベッドの傍に両膝をついた。「白苺酒です」

 わたしは横目でゴブレットを見る。なかには、透明な液体が充ちていた。かすかにアルコールが漂ってくる。

「要りません」

 顔を背けた。

 ナタナエールさんは、怯えたみたいにゴブレットをひっこめ、頭を下げる。ランベールさんが溜め息を吐いた。

「強情な。抵抗したとてエーヴェはよみがえらぬ」

「隊長!」

「さっきの蛇。なんなんですか」

 ランベールさんを睨みつけた。ランベールさんは睨み返してくる。

「サーペント。分割川には多く生息している。目をつけた獲物を追う。ややこしいことになる前に倒そうとしたが、普通あれだけの数が居るものではない」

「まだ沢山……?」

「幾らも居る。サーペントだけではなく、化けものが」

 モンスター、ということか。ゲームじみている。


「わたしも戦います」

 ランベールさんはしかめ面をし、ナタナエールさんは目を瞠る。

「だから、部屋に閉じこめないで」

「……あなたは随分疲れているようだ。戦いに慣れていないのでしょう。とにかく一度眠ってください」

「わたしも」

「王室護衛隊は聖女の護衛を任されている。前線に立たせるばかが居ると?」

「なら怪我人を治療します」

 睨み合う。

 目を逸らして、ランベールさんが云った。

「ナタナエール。出て行け」

「え」

「二度云わせる気か」

 ナタナエールさんが立ち上がり、心配そうにこちらを見ながら出て行く。

 扉が閉まった。ランベールさんがつかつか歩いて行って、錠を下ろす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ