表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/1167

眠れない時は


 水分補給と、トイレ休憩をはさみ、次は槍の訓練だ。

 槍は、こちらの世界、もしくは〈陽光の王国(スプロ・ルオ)〉では標準的なサイズのもの。長さ、240cmくらい。重さは、7kg程度。柄の部分が樫木でできていて、重たい。

 槍は凄くしなる。だから、しなるのも計算にいれて動かさないといけない。それってとても、難しい。

 重さに関しては身体強化でのりきり、持てない、ということはない。のだが、振りまわすのは辛かった。随分慣れてきて、ついでに筋肉もついたのか、今は少しなら振りまわせる。少しだけ。


 剣にしても、槍にしても、魔法を気軽につかえない場所、もしくは魔力を温存しておきたい時に役に立つ。化けものにしても、敵国の兵にしても、こちらが疲れていようが魔力が底をつきそうだろうが、おかまいなしなのだ。だから、それに備えておかないといけない。

 ただ、わたしが武器を持って戦うのは、本当に最後の手段だ、とランベールさんに念押しされていた。緊急の場合のみだと。

 この前みたいに、襲撃されてさらわれそうになるのは、緊急だろう。だからわたしは、槍でも剣でも、襲撃前より身をいれた。


 槍の次は剣で、その後が魔法だ。訓練は日暮れまで続き、わたしは汗だくになって五つ葉の城へ戻る。厩から来ていた馬と、従僕、師匠は厩へ戻っていき、公主護衛隊も公主殿下のもとへ帰っていった。

 気温があがっていた。明日には春になるのだろう。それとも、もう春なのかしら。訓練の後、寒さに震えることはない。下位コンバーターを見る機会がないので、解らなかった。


 疲れた体をお風呂につかって解す。ナタナエールさんのつくった香油を垂らした、甘い香りのお風呂だ。それにはいると、髪にいい香りがつく。

 身体強化と、恢復(かいふく)。ふたつの魔法をかけて、欠伸をしながらお風呂を出た。ちょっと痩せたかな、と思ったのだけれど、そうでもないみたい。 風を起こして髪を乾かすのも慣れた。慣れると、ドライヤよりも簡単に風量を調節できて、寧ろ楽だ。

 櫛でとかしながら髪を乾かし、なんとか体裁を整える。四六時中、他人に見張られる生活だが、気にしなければ気にならない。単に、ランベールさんが信頼できるひとだから、心配していないだけかもしれない。


 ご飯を食べて、眠った。

 ……のだけれど、よなかに目が覚めてしまった。こういう時は、鐘楼へのぼる。このところ、いつもそうだ。

 一緒に来てくれるのはランベールさんだけで、特に会話らしい会話もなく、月を眺めながらはちみつのはいったハーブティーを飲むだけ。一度、今度の遠征はかなり大軍で行くことになる、みたいなことは云われたけれど、ぼんやりしていたからか、具体的な数字は忘れてしまった。ただ、相当大人数だな、と感じたので、多いのだろう。

 ベッドを降りると、気配で解ったか、兵が廊下へ出て行った。ランベールさんを呼びに行ったのだ。訓練の時もランベールさんは居るし、わたしが眠れないと付き合ってくれるのだから、相当負担をかけている。申し訳なくはあるが、眠れない時に鐘楼へのぼるのは、安心するのだ。なんだかとても。わたし、高いところが好きなのだろうか?


 わたしが、色々と準備をする間に、ランベールさんも準備をすませていた。岡持ちみたいなのを持ってやってくる。深夜の鐘楼で飲むハーブティーは、ランベールさんが手ずから淹れてくれたものだ。それも、魔法でではなく、ハーブをつかって、実際に。

 灯を用意するのはわたしだ。魔法で光を出し、先導させる。魔法の練習にもなるので、咎められはしない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ