「お友達」について 1
魔力を消耗した、と云う感覚はないが、なんとなく体はだるく、わたしは目を瞑った。目を開けたら、もとの世界に戻っていないかしら。きっと、バス停か、バスのなかで、うとうとしているだけだ。
招聘、聖女、コンバーター、玉貨。頭がどうにかなりそう。
「あの」
「……なんでしょう」
「阿竹くん達は」
ランベールさんはなにも云わない。わたしは目を開ける。勿論、もとの世界に戻っていたりしない。船室で、上品で高級そうなベッドに居て、クッションに凭れている。
ランベールさんは眉根を寄せていた。
「……あの者は、あめのさまを恋人だと云っていましたが、事実でしょうか」
一応、事実ではある。けれど、わたしは少しの間、口を噤んだ。
結局、頷く。渋々頷いたのを自覚した。
阿竹くんに告白された時、戸惑いながらもわたしは慥かに喜んだ。だって、ずっと憬れていたのだ。阿竹くんはかっこよくて、優しくて、なんでもできる。女子からもてるし、男子には頼りにされる。それに、先生達も阿竹くんを信頼していた。
でも、だからこそ、どうしてわたしなのかが解らない。
わたしは、友達らしい友達は居ないし、成績もよくない。ちょっと(かなりかも……)肥っているし、口下手だし、美人ではない。
髪は癖があって、美容室に行くのがこわくて伸ばしっ放しだ。
目許に険があるみたいで、睨んでいるとよく云われる。だから、そう云われないように、いつも俯いていた。いいところなんてない。
阿竹くんが何故、わたしに、付き合ってほしいなんて云ったのか、理由が解らない。阿竹くんと日塚さんなら違和感はない。月宮さんや、如月さんでも。
でも、わたし?休み時間に自分の席で、なんにも喋らず、俯いてノートや問題集をめくっている、可愛げのない檮原あめのを、阿竹くんが好きになる?
ランベールさんが四貨を兌換した。小雫よっつになる。
ランベールさんはベッドの傍に膝をついて、こちらへ小雫をさしだした。わたしはおずおずと、掌を上にして、左手をさしだす。
あら不思議。ランベールさんが落とした小雫が掌にのったと思ったのに、消えた。かすかに、オレンジ色の水しぶきみたいなものが、見えた。極く少量だし、すぐに消える。
ランベールさんは寸の間黙っていたが、唸るように云った。
「お加減が宜しくないようでしたので」
「……ああ、ありがとうございます」
魔力を恢復させる、というのは、こういうことか。凄く変な感じ。それに、恢復したからといって、実感はない。




