異世界の、お金のこと 2
玉貨は、材質と重ささえまもれば誰がつくってもいいし、コンバーターも認識する。
でも、自然に発生する。
畑を耕していたら玉貨を掘り当てて億万長者、とか、薪拾いに行ったら山程五貨を拾った、とか、あるそう。ただし、常日頃からひとが多く居るところに発生するのは稀で、大概は山奥や、谷底、海の底などにできる。できやすいところがあって、各国の宮殿は、特に玉貨のできやすいところを囲うように建てられていることが多い。
おそらく、〈雫〉と違って体にとりいれられないが、魔力の塊なのだろう、とは、ランベールさんの弁。ひとが多いと、魔力はひとの〈器〉にはいるから、玉貨ができにくい、ってことかな。
玉貨が発生する土地を持っていたら、勝ち組。だって、寝ててもお金が手にはいる。王族や、貴族の大半が、玉貨ができる土地を複数持っているのが普通。
「〈遠く〉には、コンバーターはないのですか」
「あ。……はい」
ランベールさんは不審そうにしたけれど、それ以上わたしの世界については訊いてこなかった。
コンバーターをつくった神さまは、所謂全知全能の神だろうか、と思って、神話について訊いてみたが、こちらは多神教だった。
でも、ランベールさんの歯切れは悪い。
みもふたもない云いかたをすると、この世界は、一度滅んでいるみたい。
おもな神さまは七。
〈眩い光〉
〈降り注ぐ影〉
〈幾重もの森〉
〈重たい炎〉
〈深い土〉
〈凍らせる風〉
〈捩れる水〉
はるか昔、人間はもっと栄えていて、もっと快適で便利な暮らしをしていた。それも、神さまの恩恵だった。
けれど、理由があるのかないのか不明だが、神さま達が人間社会を一度壊滅に追いやった。それを、〈結末〉と云う。
その後、復活主とされる神さま、これは信仰している派閥によるみたいだけれど、その神さまが世界を修復し、人間が再び暮らせるようにした。
復活主として人気が高いのが、〈降り注ぐ影〉、〈重たい炎〉、〈捩れる水〉。大体のひとがこのみっつのうち誰かを信じている。
「我が国は、〈重たい炎〉を信じています。〈重たい炎〉は一旦、世界を炎で焼き尽くし、新しく生まれ変わらせたと……〈捩れる水〉や〈降り注ぐ影〉を信仰する者らは、水ですべて洗い流したとか、一度すべてを闇に沈めたとか、そう云うようなことを云いますが」
「じゃあ、コンバーターは……」
ランベールさんは仏頂面だ。「存じません」
解らない、のかな。解らないけれど、つかえるからつかっている、ってこと。
ランベールさんは上位コンバーターの鎖に指を絡める。「あめのさまの魔力が、乏しくなっていたようだったので、〈雫〉を額に」
「え……」
「そうしたら、すぐに消えてなくなりました。相当に、魔力を消耗していらした」
ああ……アナフィラキシーを起こしていたみたいだから、それを治すのにかなりの魔力が必要になったのだろう。
今後も魔力を激しく消耗したら、〈雫〉をつかって恢復するから、その許可を、と云われた。抱えて運ぶのは許可がいらないのに、〈雫〉に関しては要るのが、変な感じだ。素肌云々がネックなのだろうか。
でも、魔力が切れて死ぬのはいやなので、許可した。というか、宜しくお願いします、と頼んでおいた。ランベールさんは納得がいかないみたいな顔をして、けれど承諾してくれた。
食事内容は、ランベールさんが手配してくれるそう。よく解らない情況だけれど、一応お礼は云った。魔力がどうとかではなく、このひとは今すぐわたしを切って捨てることだってできる。もめるのはデメリットしかない。




