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 しかし相手は、わたしがすぐに魔力切れを起こすと思っているみたいで、土塀の破壊を優先していた。舐められたものである。わたしのことを本物の聖女だなんて思っていないし、〈器〉がたいした大きさではないとたかをくくっている。

 それとおそらく、後から後からひとがやってきて、土塀の影に隠れる、もしくはそれを利用してもっとつかいがってのいい砦を築くことを、敵方は一番警戒している。だから「塀」の形状を残しておきたくないのだ。攻撃が間断ない理由はきっとそれだと思う。

 ただ、それはわたし達にとっては、土塀をつくってそこからはなれてしまえば安全、ということでもある。土塀が囮になってくれるのだ。これはうまい。

「元気がいいな……」

 ランベールさんが凄くいやそうに云う。わたしはしかめ面で頷く。わたし達の想定よりも、あれを作成している兵が多いのか〈器〉が大きいのか、攻撃が途切れない。

 とっとと相手の砦へ飛んでいって、邪魔してくる人間をなんとかしたいが、そろそろ味方の兵が作業の進捗を偵察にやってくる。なんにも用意できていないというのは流石にはずかしいので、塀そのものを残すのは無理でもその原料になる土くらいは用意しておきたかった。服はぼろぼろだし、血をしっかり洗い流せてもいないし、まったくもう、なにが楽しくて戦争なんてやるのだろう。


 相手のスタミナ切れを狙っているのもあるけれど、わたしはそれ以外のことも考えていた。

 痺れを切らしてやってこないかな――だ。相手がわたし達をあおっていたみたいに、こちらもあおっている。どれだけ投げてもたいしたことではないよ、と。

 相手にとってこわいことはなにか、いやなことはなにか、と考えてみたのだ。勿論これまでそうやって考えて失敗しているから、自分の思考なんてあてにならないのだけれど、ここまで情報があれば、流石のわたしでも正しい答えを導き出せるかもしれないから。

 相手は、攻撃しても攻撃してもこちらがへこたれなければ、おそれるだろうしいやがるだろう。

 まず、攻撃が通じていないという気色悪さやこわさもある。実際、この攻撃がダメージを与えているかどうかはわからないのだ。近くに居ない以上、判断材料は「攻撃後の相手の動き」になる。「攻撃後もかわりなく土塀を築いている」のだから、もしかしたらなんの損害も与えていないのでは、と考えてもおかしくない。見えているとしたって判断を誤らせるだけの材料にはなっていると思う。わたし達はお喋りしながら塀を築き、この辺をうろちょろしている。

 ()()がこちらへ貯まっていくのもいやだろう。相手は攻撃でこちらを倒す、もしくは撤退させる可能性と、攻撃の回数分自分達が資源を失い敵が資源を得ている現実を、天秤にかけないといけない。なにを優先し、なにを切り捨てるか、だ。

 あれはかなり頑丈なものだから、こちらの土塀へぶつかったくらいでは壊れない。したがって、再利用は幾らでもできる。

 そこがこちらの世界のいやなところでありいいところでもあるのだが、ものがあればつくりかえてしまえる、のだ。しっかりと金属がつかわれているから、ちょっと魔法が得意なひとであればあれを用いて武器や矢をつくることもできるだろう。わたしにだってできるくらいの簡単な作業である。


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