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9.結心へのお返し

紅葉は悩んでいた。

まだ、少し先であるのに結心の誕生日プレゼントをどうするかを。彼にとっては最高のプレゼントを貰った。何かものを貰った訳でもない。だが、彼にとっては最高のプレゼントだった。大好きな人に祝ってもらえたそれだけで十分だった。なので彼女にも最高のプレゼントを渡したい。だから悩んでいる。

元々結心の話には耳を傾けているが、いつも以上に耳がダンボ状態に友人の話にも気にかけていた。


「結心は何か欲しいものないの?占いだけじゃない?いつも。私達があげらるものならあげる。」

「・・・うーん。子供?」

「・・・なにそれ。妹や弟ってこと?」

「いや、子供」


欲しいものの話をしていたが、それが規模がデカすぎて今すぐ挙げられるものじゃない。こいつは簡単に言っているが分かっているのだろうか子供が出来る仕組みってやつを。


「・・・結心・・・わかってて言って・・・なさそうだね。私達はさすがに無理。黒崎。頑張れ(笑)」

「・・・え?なんで?どうして紅葉?」

「うん、いずれ分かるから気にするな。」


やはり結心は簡単に言っているが分かっていなかった。これはあの誕生日にくれたことも意味をたいして分からないまま言っていたのか。

こんな会話を普通にしている所を聞いていた紅葉も紅葉だが、聞いていることを分かっていて振ってくる友人も確信犯。ちょっと恥ずかしくなる。


「・・・ねぇ、紅葉。どういうこと?」

「・・・っ。知らねぇよ。俺に聞くな。」

「?紅葉 顔赤いよ?」


そりゃそうだろ!と紅葉は思いながら、覗き込んでくる結心にさらに多分顔が赤くなってると思う。ずいっと寄ってくる、彼女は天然なのか。


「・・・っ。なんでもねぇ!・・・いつか教えてやるよっ!」

「・・・本当に?」

「本当っ!だから離れろ!」


分かっていない結心は平然としているし、慌ててる俺を見て友人やクラスメイトはニヤニヤ、クスクス笑っている。もう恥ずかしくて仕方がない。

このことは結心が、事実を知った時に俺がどれだけ恥ずかしい思いをしたのかをネタにして恥ずかしさを味合わせてやろうと心に誓った。


「で、結心。他に欲しいものないの?子どもはさすがに私には無理だから。」

「・・・えー占いあればいいもん。」

「はぁー結心は欲がないね。その日その日で回ってるというか。占いでその日のラッキーアイテムが欲しいだけだもんね。」


そう言われてみればそうかも。毎日ラッキーアイテムやカラーなど家中を朝探し回って見つからなきゃ買ったり。見つければそれを身につける。いつもそんな感じだ。その日その日で回っているというのはまさにその通り。

結心の話じゃ拉致があかない。欲しいものなんて聞き出せない。はぁーと1つため息をついた。


「クロ、だいぶアリスちゃんに振り回されてるのな?てか、アリス一家に?」

「・・・あぁ、もう困るくらいに。だから迷ってんだ。お返しに。」

「・・・お返し?あぁ、誕生日?アリスちゃんの?早くね?確か夏休み中じゃ?・・・つーか、彼氏から貰って嬉しいものそれはアレしかないだろ?」


アレと言われ紅葉はなんの事だかわからない。アレとは何なのか。「なんだよそれ」と首をかしげ聞くと、教えてくれた答えに落ち込んだ。


「もちろん、愛の証明だろ?」

「・・・した。俺、最後までした。俺の誕生日に結心がプレゼントだってくれた。」

「・・・ぶっ!はは!それであれなの?さすがっ。だったら、あっちだな。」


結心の天然ぶりに理解したのか吹き出した三島に紅葉は苛立ち覚えた。馬鹿にされているようで嫌だ。

少なくとも三島は紅葉よりも恋愛経験は豊富だ。それでも苛立ちを覚えていると、耳打ちでどんなプレゼントがいいか教えてくれた。


「・・・あぁ、なるほどね。まぁ、割と金あるしそれでもいいか。」

「・・・そんな高いのじゃないぜ?すぐ手に入るような。」

「やるからにはちゃんとしたものを。」


挙げるからにはちゃんとしたものをあげたい紅葉にとっては早くもない選択だ。まだ2ヶ月、されど2ヶ月。あっという間に時間は過ぎる。

受験勉強もしなきゃならない彼にとっては遅くない選択だ。受験とは言うが彼は就職するつもりだ。そのために少しでも良い所に入るための勉強と言った所だろうか。そして、未来のための貯金のためと。


「へー、さすが。金持ち。」

「・・・金持ち、では無い。」

「嘘つけ、知ってるぞ。お前、今やバイト代のほとんどが遊びに使ってんだろ。」


なぜ三島はそんなこと知ってるのか問えば結心に聞いたという。学校で紅葉のいない時に友人達にはいろいろ話しているようだ。秘密にしていることもあるみたいだけど。


「・・・あいつから他に何聞いた?」

「何も。クロのことは他に聞いてない。ただ、アリスちゃんのことに関しては相当。」

「・・・なるほどな、」


自分のことを話されるのが嫌いな紅葉のことは特に話さないようにしているようだ。そのかわり結心自身の話をした時に紅葉のこともポロッと話してしまうなんてことがあったりするみたい。

そんな結心へのお返しは三島の教えてくれたものにしよう。そうして紅葉はこっそり近づく結心の誕生日に向けバイトに励み、そしてこっそりバイトと偽ってバイト代でプレゼントを買った。

あっという間に夏休みを迎え、結心と2人で、夏休み前半はほとんど部活がない日、午前中だけの日などとにかく空いている時間は宿題に明け暮れた。


「・・・ゆい、起きろ。」

「んー・・・、もうちょっと・・・。」

「・・・ゆい、遊びに連れてかねぇぞ。」


毎日していた宿題も終了していて、あとは遊ぶだけの日々。そして今日は結心の誕生日なのだ。出かける約束している。だが、当の本人は起きない。別に家でイチャイチャしてもいいんだ。その手もあるが計画しているので連れていきたい。


「・・・ゆーい。起きてくれよ。」

「・・・んー。。」

「・・・なんで今日は、まだ寝るんだよ。ゆい、起きろって。せっかく俺が朝飯作ってやったのに。」


こんな朝のやり取りも悪くない。でも、出かけたい。だから、起こしたい。そして、自分の作ってやったご飯を美味しそうに食べて欲しい。今日だけの特別な日。


「・・・んっ。ふぁー・・・、あ、かえで・・・おはよ。」

「・・・ん。はよ。やっと起きたな。飯出来てる。」

「珍しい!紅葉が早起き!」


確かに珍しいけど、なんでか分かるだろ流石に。とにかく起きた結心をリビングまで連れてくると、座るように促し作ったご飯を並べていく。


「・・・これ、全部紅葉が作ったの?今日は何の日だっけ?」

「・・・何の日ってお前の誕生日だろ。日付変わったと同時におめでとうって散々言ったろ。」

「・・・そっか。んんん?言われたっけ記憶にない・・・。」


そうでしょうね、日付変わるころまで起こしていたが眠さに勝てずウトウトしていたからね。けど、意識が朦朧としてるところに「おめでとう」といいましたよ。何度も。しかも嬉しそうに「ありがとう」と言っていた。まぁ、半分寝ていたようだし覚えてなくてもいいけど。どうせこうして朝起きて1番におめでとうと言えるのだから。こんな幸せはない。


「・・・で、出かけるんだろ。早く食えよ。」

「・・・う、うん。・・・紅葉もたべよう。」

「あぁ、もちろん。」


2人で仲良くご飯を食べ、お互いに出かける準備をして。紅葉の立てたプランで今日という特別な日を満喫する。1年に1度の特別な日。将来もし子供なんて出来たら二人きりの誕生日は今しかとれないだろう。だから今しかない2人を楽しむのだ。


「・・・紅葉!ありがとう!」

「・・・あぁ。」


幸せを噛み締めながら、遊んでいてムードを高めてプレゼントを渡したい。けど、他の人と同じようなムードで渡すのも嫌だ。俺は贅沢なのだ。とりあえず出かけた先を楽しむこととプレゼントを渡すタイミングは別だ。そんなことを考えながら楽しんでいればあっという間に時間はすぎるだけで、気がつけば夕方。


「・・・あー楽しかった!ただいまー!・・・おかえり紅葉、」

「・・・あぁ、おかえり。・・・ただいま。」


気がつけば、2人で仲良く家に帰ってきていた。これから先もこんな関係が続いて欲しいと思う。

挨拶したあとも続いた幸せな日常こんな幸せはずっと続いていて欲しい。


「・・・なぁ、ゆい。俺の、幸せはこれから先、永遠にお前とでなきゃなれない。俺はお前とでなきゃ嫌だ。高校卒業したら俺と・・・結婚しよう。」


プレゼントに買った指輪を差し出して、言った。彼女は驚いた表情をしたかと思うとポロポロと涙を流しながら微笑んで答えた。


「・・・もちろん。私も紅葉でなきゃ、嫌だ。」

「ありがとう。ちゃんとプロポーズは、卒業したら改めてする。」


そんな約束をした。世界で1番幸せな誕生日。こんな幸せな日々はこれからもずっと続いていていく。

もちろん、ちゃんと卒業後に彼から正式にされて、はれて夫婦になった。2人の関係は今までと何も変わらない。そして、あの誕生日プレゼントで彼女が欲しいと言った「子供。」は次の年の彼女の誕生日に、出来る仕組みと、あの場で言われた紅葉の恥ずかしさをいやというほど教え込まれて、作ったという。そして仲良くこれからもずっと幸せ暮らしていくのでした。

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