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⒋紅葉目線

何となく聞いた占いでついてる日だと言っていたあいつ。俺は占いが大っ嫌いで、あいつが勝手に占った俺の事もいい日だと言っていた。そう聞いてからアイツを観察しているとあいつの周りで良いことがめっちゃ起きていた。


「・・・またね!」

「あぁ、また。」


あいつがいつものわかれ道でそう言う。俺もいつもの様に返事をして歩いた。

ふと、しばらく歩いた時だ。後ろの方から気になる音がした。何故かすごくやな予感。振り返っても何も無いホッと一瞬するが、音が気のせいではない気がしてあいつと別れた道まで戻り、あいつの行った道の方を見ると事故った車を目にした。


「・・・なんだ・・・事故・・・か・・・っ!結心!!?」


ただ車の事故かと思ったら車に挟まれたように人が倒れているのが結心だとすぐ分かった。


「・・・結心!!」


思わず近寄って呼びかけた。当然のように反応がない。人通りも少ない上車の通りもそんなにないため事故の当事者しかいない。


「・・・バカ結心!!・・・クソっ!」

「・・・すいません、救急車呼びましたから、えっと君はこの子の彼氏とかですか。」

「・・・彼氏ではねぇよ。でも、こいつは俺の唯一の光なんだ・・・失いたくねぇんだよ!なんてことをしてくれたんだ!」


話しかけてきた事故を起こした車の1人に俺は怒鳴り散らしていた。涙をいっぱいに溜めて。

しばらくして到着した救急車に乗せられて結心は病院へと運ばれた。俺も同乗者として乗っていき、急いで治療される外で待った。

直ぐに治療された結心と医者が出てきて待っていた俺の前まで来ると足を止めた。


「・・・君は・・・彼氏か何かかな?彼女の。」

「・・・いや、違います。友人です。まだ。」

「ふーん。彼氏に昇格もありってことかな?まぁ、いいや、彼女のことなんだけど安心して大丈夫。命に別状はないから。」


その一言でホッと息をつく。涙はまだ目に溜めたままであろうが、そこは問題ではない。


「・・・ありがとうございます。」

「うん。彼女の両親には連絡ついた?」

「・・・あ、はい。すぐ来ると言っていたんで来ると思います。」


そう言うと病室へ、運ばれる結心と共に俺も足を進める。まだ、ベッドに寝かされ、麻酔が効いていて目覚める気配のない結心の横に置いてあった、椅子に腰掛け手を取り起きてくれることを願った。医者には安心して良いと言われたが起きてくれるまで安心出来ない。


「・・・結心!」

「・・・あ、こんにちは。結心はまだ麻酔が効いてて起きてません。命に別状はないそうです。」

「・・・ありがとうね、えっと電話くれた子ね?紅葉くんだったかしら?ずっと見守ってくれてたのね、そんな泣いてまで。」


病室のドアが勢いよく開くと、結心の母親だろう。慌てた様子で入ってきた。医者に言われたことを説明すると安心したようにホッと息を吐いたのがわかった。


「・・・僕、結心のこと失っちゃうんじゃないかって思ったら怖くて。僕の大切な人は僕を置いてみんな行ってしまったんです。だから結心もそうなのかと思っていたら泣いてしまってたんです。」

「・・・そんなにゆいのこと大事に思ってくれているのね。良かったわ。こんな優しい友人・・・って、あれ?彼氏ではないの?」

「・・・とんでもない!まだそんな関係じゃ・・・結心とは喧嘩してばっかりです。でも彼女のことはすごく大事です。僕にいなくてはならない光と言うか・・・って何言ってんだろ、親の前で・・・」


ほんとに何を言ってんだろう。親に結心のことをくれと言っているようだ。恥ずかしくなって顔が紅く染まっただろうか。暑く感じる。


「・・・ふふ。そんだけ、大事に思ってくれているなら彼氏昇格も近いのかな?喧嘩するほど仲がいいということでしょう?」

「・・・あ、たぶん?僕が結心に言えない秘密があるのでそれ話せない限りまだ・・・」

「そうなの。うーん。話せないことが、紅葉くんのさっき言っていたみんなどこかに行ってしまうってやつに関係してるなら、ゆいは大丈夫よ。そのこと話してもゆいはどこも行かないわ。安心しなさい。」


親に言われると、確かにそうだろうと思う。結心も確かに言っていた。離れていかないと。


「・・・ありがとうございます。結心が起きたら話して見ようと思います。」

「・・・そう。良かった。ところで紅葉くんはお家帰らなくて大丈夫なの?」

「あ、はい。僕、一人暮らしなんで平気です。」


こんな時間にいくら高校生でも帰ろうとする気配なければ気になるところだろう。俺が答えると「・・・そう。」とだけ言うと安心してくれたのだろうか。少し優しい顔になった。

結心の母親と話しているとゆっくり戸を叩く音がした。


「・・・結心さんのお母様でいらっしゃいますか?少々お話よろしいですか?もしかするとそこにいる彼から聞いたかもしれないことだと思いますが。」

「あ、はい。・・・じゃあ、紅葉くん、結心のことよろしくね。」

「・・・はい。」


よろしくされるということは信用してくれたのだろうか。結心の目覚めるまで俺はここから離れる気はないから安心だけれど。


「・・・か・・・かえで?」

「あ、結心!起きた?!良かった・・・良かったぁー

・・・目覚めないで俺の前からいなくなるのかと思った・・・!」

「・・・居なくならないよ。・・・今日は運がついてくる日って言ったじゃない?」


また占い。ついてくる日どころか運が悪いじゃないか。そう思って眉を顰める。


「・・・どこが!運よくねぇじゃん。何がついてる日だよ!車に惹かれて何が運がいいんだよ。ばーか!」

「・・・助かったことは運がいいんだよ。」

「・・・・・・ふざけんなよ!なんでそんなふうに考えられんだよ・・・車に惹かれてんだぞ、バカ!俺がどれだけ心配したと・・・!」


いつもの様にポジティブな思考で返ってくる返事に苛立ちを覚えながらも、心配していた気持ちが一気に溢れ出し、涙が零れ落ちる。


「・・・紅葉、心配してくれてたの?ってか、泣いてるの?」

「・・・あぁ、そうだよ。お前まで俺の前からいなくなるんじゃないかって不安だったんだよ!大事人はみんな俺の前からいなくなるから、お前まで・・・って怖かったんだ!」

「・・・心配してくれてありがとう。」


結心の「ばかやろう」と心の中でも叫んだし、口にもだして、結心の胸を借りて泣かずには居られなかった。ひたすらに泣いていて落ち着くと結心に頭を軽く撫でられていることに気がつく。

落ち着いたのに気がついたのか、結心が口を開いた。


「・・・ねぇ、紅葉。そんなに泣くほど心配してくれたのはわけがあるんでしょ?どうしてなの?喧嘩してばかりなのに。」

「・・・・・・俺の母親は、結心みたいなやつだった。占いを信じてて毎日俺に言ってたんだ。今日は運がいいんだよ。とか、今日は悪い日だから気をつけてとか。」


結心に問われゆっくり口を開くと、彼女は「うん。」とか軽く合図ち打ちながらきいてくれる。


「・・・でも、俺が3歳のとき、父親が死んだんだ。その日は父親に今日は運がいい日だよって送り出していて、悪い日なら絶対そんなこと言わなかったから、俺も父親いい日なんだと思ってた。でも、嘘だった。」

「・・・うそ?占いが?」

「うん。父親はその日の仕事帰りに事故にあったんだ。巻き込み事故で即死だった。夕方いつもより遅いと心配していたらかかってきたんだ、死んだって。電話が。」


話していて自分でも思う、何を言ってるんだと。それくらい話がまとまってない。


「・・・うん。」

「その後母親が俺を女手一つで育ててくれてたんだ。だけどその母親も病気で亡くなった。小3のときだった。」

「・・・うん。」


うん。としか言わないのはまだ続きがあるのだろうと促してくれてるのだろうと予想がつく。一呼吸置いてまた話し出す。


「母親は亡くなる、3日前見ていた占いで病気はいい方向に向かうと言った。それなら良かったと俺も安心したんだ。けど3日後良くなるどころか悪くなって亡くなった。」

「・・・うん。」

「それから、占いも人も信じられないんだ。でも・・・。」


言うべきだろうか、すごく迷う。ここからは今の自分の感情だ。言うのが恥ずかしい。


「・・・でも?」

「・・・その日から、暗いどん底にいた俺を1つの灯りが連れ戻してくれたんだ。」

「・・・灯り?」


どういう反応するのだろうか、俺の胸が高鳴る。言葉を選びゆっくりと話す。


「あぁ、最初は占いばっかりで苛立ってた。けど、毎日占いがとか言っていい日でも悪い日でも、結心の周りはいつも明るくて。素直に俺が信じないって分かってるのに俺の事まで信じてくれて、暗闇で怯えていた俺を灯りが導いてくれた。」

「・・・灯りって私?」

「そう。いつからか、結心なら信じようって思った。結心が俺の光なんだ。お前がいなくなったら俺が・・・また暗闇を彷徨う。」


真剣に聞いてくれる結心の優しさに触れたら、また泣きそうになった。


「・・・だから、俺の傍に居てくれ。俺を照らしていて欲しい。お前がいてくれないと俺が生きていける気がしない。」

「うん。」

「・・・お前のことが好きなんだ。」


こんな所で告白をしたくなかったと思ったのに、この流れで言わないとたぶん言えない。


「・・・占いのことに関してはいつも通りで変わらないよ。けど、紅葉の前からは絶対居なくならない、約束するよ。私も紅葉が好きだよ、」

「・・・絶対だからな。俺の前からは居なくなったら許さないから。」

「うん。もちろん。約束するよ。」


こんなの相当重いヤツだと思う。言っといてプロポーズみたいだ。なのに、こうでもしないと俺の心が落ち着かないんだ。


「・・・あら、結心はもう紅葉くんから離れられないのねー。」

「・・・え?!」


いつの間に戻って来たのか、結心の母親が入口の辺りに立っていた。離れられないと言うということはさっきの約束と言うのを聞いていたということだろう。


「・・・うーん。あぁ、結心は紅葉くんと住めばいいね。」

「・・・はい?!え、あの、どういうこと。」


いきなりの爆弾発言に驚いて泣いていたはずの涙も引っ込んだ、俺をみて笑いながら彼女の母親は言った。


「・・・ゆいにはまだ言ってなかったね。お父さんの転勤が決まってね、みんなで引っ越そうと思ったけど、紅葉くんにゆいは捕まっちゃったみたいだし?」

「・・・え、あのママ?嘘でしょ?」

「・・・嘘は言わないわ。約束したからには離す訳にはいかないでしょ?安心して紅葉くん。ゆいは置いてくからね。」


驚きすぎて声が出ない。置いてくはいいとして、話の前に言った俺の家に住めばいいと言うあの爆弾発言。


「・・・あの、それで俺の家って・・・。」

「紅葉くん、ゆいのことよろしくね?ゆいを1人にさせるのはすごく不安なのよ。でも紅葉くん一緒なら安心だわ。」

「・・・ママぁーいきなりそれはないよ。本気で言ってんの?」


爆弾発言は嘘じゃないらしい。結心も受け入れられていないようだ。顔が若干赤く見える。嬉しい気持ちは有るみたいだ。


「本気よ?嫌ならゆいもいく?紅葉くんからいきなり離れることになるけどね?紅葉くんを悲しい思いさせるのかな?ゆいは?」

「・・・それは・・・困る・・・。」


自分の子供へもこんなに言いくるめるのか。怖い母だ。と密かに思う。でも、結心に一緒に行かれてしまったら俺がまた暗闇に閉じこもるだろう。


「・・・じゃあ、決定ね。紅葉くん、いいよね?」

「・・・はい、別にかまいませんけど・・・俺でいいんですか?」

「いいのよー、じゃあよろしく〜。」


最後音符でも着くんじゃないかと言うくらい陽気に言った彼女の母親。完全に丸め込まれてしまった。


「・・・あ、そうだゆい、上手く行けば、2週間くらいで退院出来るって。」

「そう。分かった。」

「・・・でもねー、2週間後は丁度引越しなのよー。だからそのまま紅葉くんちで行って?」


またまたとんでもない発言だ。今日初めて会っただけで母親のことをわかった気がする。とんでもない人だ。


「・・・で、紅葉くんちょっといい?」

「・・・はい。」


一通り話すと俺を呼び出した、その表情は真剣でなんの事だかだいたい理解した。


「・・・暮らしていく上で守って欲しいことが、3つあるの。1つ目、性行為はダメとは言わないわ。けどあなた達はまだ学生。分かるよね?」

「分かってます。もちろん、お義母さんが心配するようなことはしません。絶対。」

「うん。あと2つ目、喧嘩になって別れの危機になってもちゃんと話し合うこと。別れないこと前提でね。」


結心のことを大切にしているからこそ出るその言葉の一つ一つが身に染みる。


「・・・はい。俺が離したくないんで離しません。」

「ふふ。そうね?3つ目、紅葉くんも私のこと自分の親だと思って、なんでも言いなさい。もちろんお父さんのこともそう思っていいわ。」

「・・・はい。ありがとうございます。」


優しい親の顔だ。俺の欲しかった親の理想像のようで、泣きそうになりそうだ。結心の優しさもこういう所から来ているのだろう。


「・・・じゃあねー、紅葉くん。結心をよろしくね。引越しの準備もあるのよー。そうだ、結心には内緒で時間ある時に家に結心荷物取りに来て?まとめとくわ。」

「わかりました。」

「それじゃあ、またね!あ、私の連絡先教えておくね携帯出して?」


連絡先を交換すると直ぐに結心の病室に少し顔を出して「バイバイ」と言って去っていった。俺もあとから入っていくとまだ照れてるのか気持ち顔が赤いように見える結心を見て苦笑いが零れる。


「・・・紅葉、ママに何言われたの?」

「ん、大したことじゃないよ。ちょっと約束を。」

「私の事なんかいわれたんじゃないの?」


何を疑っているんだ。いや、あるのか?秘密にしたいことでも。


「・・・違うけど、何で?あるの、俺に秘密にしてたいことでも。」

「あ、いや。ないよ?ないけど・・・。」

「・・・ふーん?あるんだな?気長に探ってやるか。これから結心が退院すれば一緒に暮らすんだし?」


ちょっと、いきなり決まった出来事だがとても楽しみになった。


「・・・こわっ。ところで紅葉は帰らないの?明日学校だよね?」

「あぁ、帰るよ。また明日・・・って言いたいことだけど俺明日バイトだからこれねぇや。ま、また来るよ。」

「・・・うん。毎日別に来なくていいからね?」


照れくさそうに言ったのがちょっと可愛くて、いじめたくなった。


「ん、なるべくきてやるか。来てほしいみたいだし。」

「そんなこと言ってない、」

「ふーん?じゃ1度も来なくていいんだ?」


きっとこう言えば素直に言ってくれるとなんとなく思った。


「・・・来てほしいです。」

「最初っからそう言えばいいんだよ。バイトない日にくるよ。じゃあ、またね。」

「・・・うん。またね。」


病室を後に・・・する前に唇を奪ってクスッと笑ってそのまま後にした。


それから毎日学校の日は結心のいないことに寂しさを覚えた。いないと張合いがないし、楽しさも薄れてしまう。早く良くなって戻ってこいと願った。

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