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新たな存在

 「よし、無事な者は集まれ!!!」


 アスベルの言葉で動ける者は急ぎその前に整列していく。

 今回の戦い、後世ではアストロ兵器工場跡地攻防戦と言われる戦闘により、人間側の被害は死者16名、負傷者38名を出したが、かろうじてすべての異形の者(ゲスティル)を殲滅することに成功した。

 だが、整列する20名あまりの隊員の表情の中で勝利に喜んでいる者はおらず、皆一様に暗い表情を浮かべている。


 まさかこれだけの被害が出てしまうなんて・・・。

 これでは今後の作戦の遂行は不可能・・。すぐにでも撤退しないとここでは治療できない人もいる。


 ギリッ・・。 シルバーナは腕や足を失った隊員たちの苦しむ声を思い出すと、つい拳に力が入っていった。


 「・・・全員揃ったな。」

 「我々はかろうじてだが、敵の殲滅に成功し、この地域の異形の者(ゲスティル)殲滅には成功した!」

 「しかし払った犠牲は大きく、今後の任務続行は不可能であると思われる。」

 「よって、無事な者達を2隊に分け生存している佐官、俺とメルビー少佐の隊にそれぞれ配属する! メルビー少佐の隊は怪我人を連れベースキャンプまで撤退。私の隊はあのアストロ兵器工場跡地の探索に向かう!」


 ザワッ・・。アスベルの言葉で兵士達からは動揺の声が広がる。

 それもそのはず。未だ敵がいるかもしれない敵の拠点の探索など、誰も引き受けたくないからだ。


 「だがこれは強制ではない! 志願者のみ私に続け。それ以外の者は全てメルビー少佐の指示に従うように。」


 ザッ・・! しばらくの沈黙の後、シルバーナが列より一歩前に出るとそれに続きリリスも慌てて前に出るのだった。


 やはりシルバーナは俺についてくるか・・。


 アスベルは長年の付き合いじゃらシルバーナが志願することを予期していたが、希望はしていなかった。

 だが、隊員達の手前拒否することも出来ず、小さくため息を付くことしかできなかった。


 「・・フフフッ、まぁ私も仲間の仇は取りたいからな。」

 「私も志願致しましょう。」


 シルバーナが志願するのを見たヴィリーは小さく笑み浮かべながら一歩前へ出る。


 「おい、ヴィリー! 俺達の任務はもう終わっているんだ! これ以上手を貸すことは・・」


 「いや、これは私自身の意思だ。お前達はメルビー少佐についてベースキャンプまで戻れ。元老院への報告もあるだろう?」


 「それはそうだが・・・・。」

 「・・・クソッ! 勝手にしろ!!」


 ヴィリーの言葉を受けた他の特殊作戦魔導隊は、頑ななヴィリーに背を向けると、唯一戦死した隊員の遺体を持ち上げ森の中へと消えていった。


 「一体何のつもりでしょうか、ヘス中尉。」


 「ハハハハッ、何ただの気まぐれだエスティア少尉。」


 ヴィリーは笑みを浮かべながらシルバーナの隣まで進むと、アスベルへと敬礼を行う。

 その後3人の志願兵が出たため、アスベル率いる探索隊は7名でアストロ兵器工場跡地へとむかうことになった。















 

 アストロ兵器工場跡地。

 先ほどの戦いでの爆破や地雷の攻撃により入り口に続く道はかなり破壊されているが、建物自体にはあまり損壊はなく、いまだその姿を保っている。

 アスベル率いる探索隊はその中でも無事である西側入り口から侵入していった。

 

 「シルバーナ。まず俺が先に入る。お前はヘス中尉と共に後方をカバーしてくれ。」


 「了解。」


 「私も了解です。」


 ボシュッ・・・。 アスベルは2人の言葉を聞くと魔導閃光弾を建物内に発射。暗闇が続く通路の中を明るく照らしていく。

 その中を銃を構えながら進むアスベルに続き、シルバーナとリリス、その後方からヴィリーと3人の隊員が続いていく。


 それにしても何百年も放置されていた割には不気味なくらいに綺麗ね・・。

 それに所々舗装されたような跡もある・・。まさか異形の者(ゲスティル)達が??


 シルバーナは通路内を進みながらも、内部の様子に一抹の不安を抱いていた。

 それはその場にいた全員が感じていたのか、誰も不必要な言葉を発する者はいない。


 「・・・待て。何か音がした。」


 しばらく進んだ後、アスベルはある部屋の前で右手を上げ後ろのシルバーナ達に停止するように指示する。

 その後、側まで進んできたシルバーナとヴィリーと目配せをするとアスベルは銃を構え、合図と共にヴィリーが扉を開いた瞬間、その部屋の中へと一気に駆け込んでいった。


 「・・・・なにこれ。」


 「うっ!!」


 アスベル達が入ったその部屋の中には異形の者(ゲスティル)は一体もいなかった。

 しかしシルバーナ達が目にしたものある意味、異形の者(ゲスティル)であった方が幸せとも思えるような光景だった。


 そこには頭部のない人間と思われる体が何体も天井から吊らされ、置かれているテーブルの上には足や腕など人間の体の一部と思われる物が包丁のような刃物と共に置かれており、中には火にかけられた鍋の中で煮込まれいるものまであった。


 その異様な光景と、鼻を刺激する異臭によって2人の隊員が吐き気をもよおし、急いで部屋の外へ飛び出していく。


 「これは・・・、まるで家畜の調理場だな。」


 「その様ですね・・。アスベル少佐、ここは炎魔法で焼却いたしますか?」


 「・・・・ああ、頼めるかヘス中尉。」


 「よし、全員この部屋から出るんだ。」

 「・・シルバーナ、どうした?」


 ガシッ・・。アスベルは遺体から目を離さないシルバーナの肩を掴み部屋の外へ連れ出そうとするが、シルバーナはピクリとも動かなかった。


 どうしてこんなひどいことを・・・。

 いや、これは私達も家畜の動物にしていること。これが自然の姿ということなの??


 ピクッ・・。 しかしその瞬間、シルバーナは前方に動くものを発見。アスベルの制止も聞かずにその元へと駆け寄っていく。

 だがそこにいたものは、両足を切られ動くことが出来ない自分と同じ年齢くらいの男性であり、その男性は足からの出血から血の気がないものの、シルバーナに何か言葉の様なものを話しかけていた。


 「おい、シルバーナっ・・・、これは・・。」


 「息の根を止められる前に私達の攻撃が始まったため、このような姿のまま放っておかれたんですね。」


 これは助からないな・・・。止血をしても既に血を失いすぎている。

 それに仮に助かる体だったとしても彼は・・・。


 アスベルの後ろから駆け寄ってきたヴィリーは銃を構えると、その男性の頭に照準を合わせた。

 そんなヴィリーに、シルバーナは力なく視線を向ける。


 「この人も殺すのですか?」


 「・・ああ。だがこれは私の任務とは関係ない。」

 「彼は治療を受けたとしても助からない・・。ならば少しでも早く楽にしてやるのが人としての、最後の情けだろう。」


 「・・・・・・分かりました。」

 「ヘス中尉、お願いします・・。」


 ガチャッ・・。 ヴィリーはシルバーナがゆっくりと後方に下がったのを確認すると、再び銃口を男性の頭に合わせ、そして引き金を引いた。


 ・・・ごめんなさい。あなたを助けられなくて。


 部屋の中にはヴィリーが放った乾いた銃声が反響し、その音を聞いたシルバーナは目を瞑りその音が消えるまでその場から離れることが出来ないのであった。















 「ここが最後の部屋だな?」

 先ほどの部屋を処分したアスベル達は、これまでの部屋の扉とは違い、ひと際大きな鉄で出来た扉の前にあった。

 

 隊員の一人がアスベルの言葉で、持ってきていたアストロ兵器工場の設計図を取り出しその中身に目を通すと、小さな声で答える。


 「はい。あと確認していないのはこの部屋だけです。」

 「ただここはこれまでと違い、大講堂ですので生き残りの異形の者(ゲスティル)がいる可能性が・・。」


 その言葉でアスベルやシルバーナを始めとする隊員達は銃を構えると、アスベルの合図と共にその扉を蹴破り、一気に大講堂の中になだれ込んだ。

 するとそこには予想通り20体あまりの異形の者(ゲスティル)がおり、こちらに気づくと一斉に攻撃のため突撃を開始するのだった。


 「異形の者(ゲスティル)だ!! 攻撃開始!!」


 ババババババッ!!!!

 大講堂内は銃から放たれる魔導弾の閃光で明るく照らされ、しばらくすると生き残っていた異形の者(ゲスティル)も全て息絶え、辺りを再び静寂が包み込んでいく。

 しかし敵がいなくなり銃を下ろしていく他の隊員達とは違い、シルバーナだけは前方に銃を構えたまま動かなかった。


 「どうしたシルバーナ!?」


 「・・前方にまだ何かいます!」


 「何だと?!」


 ジャキッ!! シルバーナの言葉でアスベルが急いで銃を構え直した瞬間、夜が明けたことで大講堂の天井のガラスから朝日が差し込見始める。

 その光が徐々に大講堂内を照らし始め、その光が大講堂内全てを照らし終えるとそこには、シルバーナが偵察中に目にしたあの人間のような外見の異形の者(ゲスティル)が椅子に腰かけていた。


 「・・・敵だ!! 全員、攻撃用意!!!」


 あれはあの時見た個体!! まだ生きていたのか・・!


 シルバーナ達は武器を構えるが、立ち上がりこちらに近づいてくるこれまでとは明らかに違う敵の存在を目の前にし明らかに動揺が隊員たちに広がっていく。

 そしてその動揺は次の言葉でさらに広がっていった。


 「君達が200年前の戦いを生き残った人間達かい?」


 「なっ・・!!」

 

 そんな馬鹿な!! 異形の者(ゲスティル)が言葉を話すなんて・・!!

 しかも私達の言葉を・・・。


 「ふむ・・。言葉はこれであっているはずなのだがな。」


 人型の異形の者(ゲスティル)は口に手をあて考え込むが、その姿に気を取り直したアスベルが銃を構えながらもようやく口を開いた。


 「・・・お前は何者だ? 何故俺達の言葉が話せる??」


 「おぉ、何だ通じているではないか。」

 「そうだな・・、まぁその辺りのことはおいおい話すこととして・・・。」

 

 「・・動くな!!」


 人型の異形の者(ゲスティル)が腕を動かした瞬間、リリスが銃を構えるがそれをアスベルが制止する。


 「待てリリス!」


 「で、ですが隊長!!!」


 「そうだぞ娘よ。私は何もする気はない。」


 人型の異形の者(ゲスティル)は人間のように笑みを浮かべながらリリスに答えると、ゆっくりと立ち上がり、4本しかない指を広げ、両手を頭の上に上げる。

 そう、まるで人間が自分に危険がないことを知らせるときのように。

 そして次の一言が隊員達に衝撃を走らせた。


 「私は降伏する。 敵対の意思はない。」


 そうして膝を付き手を頭の後ろで組むのだった。


 


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