アストロ兵器工場跡地攻防戦 後
「くそ、まだこんなにいるのか!?」
ブシュゥゥゥゥ!! シルバーナは異形の者(ゲスティル)に突き刺した腕から伸びる魔導装甲を引き抜くと、背後から迫るもう一体にもう片方の腕から伸びる魔導装甲を突き刺す。
「はぁ、はぁ・・。大丈夫リリス?!」
「は、はい!! 私は何とか・・。」
リリスはシルバーナの隣まで移動してくると、肩で息をしながらも笑みを浮かべながら答えた。
無理しちゃって・・。でも今はリリスを休ませている余裕はない。
ここはもう少し踏ん張ってもらうしか・・・。
「そう・・。ならここから移動するわよ。隊長達の所まで戻ってそこで態勢を立て直す。」
「りょ、了解しました!」
ザッ!! シルバーナはリリスが息を整えるのを少し待つと、異形の者(ゲスティル)を避けるように建物の扉を開けると、その中に飛び込む。
しかし2人の後を追い異形の者(ゲスティル)も建物の中になだれ込むと、奥へと進むシルバーナたちに襲い掛かった。
くっ・・! 狭い通路のおかげで数の不利はそれほど関係ないけど、この数は・・!!
「リリス!! あなたは先に行って!! 私はこいつらを片付けてから追いかけるから!!」
「で、でもシルバーナさんは・・」
「早く!!!」
くっ!! リリスはさらに出そうになる言葉を唇を噛みしめ飲み込むと、奥にあるもう一つの出口に向かい走り出す。
その後を追い、建物の天井や壁を伝い数体の異形の者(ゲスティル)が抜け出すが、すぐにシルバーナによって首を落とされた。
「はぁ、はぁ・・。ここは通さないわよ??」
どうやら恐怖を感じはするみたいね・・。
シルバーナが魔導装甲の剣を構えると、異形の者(ゲスティル)達はシルバーナの前方数mで動かなくなる。
「これでしばらくは時間を稼げそうね。」
バタンッ!! しかし背後から聞こえたその音でシルバーナが後方に視線を向けると、扉を開けたリリスの前に数体の異形の者(ゲスティル)が立ちふさがっているのが目に入る。
その上、その異形の者(ゲスティル)の一体の爪が既にリリスの体に迫っていた。
ま、まずい・・!!
先回りしてた奴らがいたのか!!!
「リリス!!!」
シルバーナはあらかじめ光魔法を込めておいた緊急用の閃光弾を取り出すと、異形の者(ゲスティル)達の目の前で起動させる。
その瞬間猛烈な光が建物内を包み込んだことで異形の者(ゲスティル)達はシルバーナの姿を見失い、その隙を突きシルバーナはリリスの元に走り出した。
・・・・だめ、間に合わない!!
「やめて!!!」
「シルバーナさん・・。」
ブシュゥゥゥゥ!! シルバーナは身体強化の魔法でリリスの元まで走るが、そこに辿り着く直前、リリスがいた場所には血しぶきが吹き上がった。
「くそ! おい、何人やられた?!」
「はぁ、はぁ・・。8人ってところだ。」
アスベルの背に立つメルビーは息を切らしながら答える。
8人か・・。この戦力差ならよくやっているほうだな。
奴らもかなり数が減ってきている・・。
あともう少しだ。
ブシュゥゥゥゥ!! アスベルは自分に迫ってくる異形の者(ゲスティル)に、手の甲から伸びる3本の魔導装甲の剣で突き刺すと、さらに後ろのメルビーに迫る異形の者(ゲスティル)の体を蹴り飛ばした。
「はぁ、はぁ、すまないアスベル。」
「なぁに。島に戻った時は酒をおごれよ?」
「ふふっ。高い買い物になりそうだ、な!!」
ブシュッ!! メルビーは笑みを浮かべながら答えると、魔導装甲を自身の指に這わせまるで異形の者(ゲスティル)の爪の様な形状に変化させると、向かってくる異形の者(ゲスティル)をいくつものパーツに切り分ける。
しかし、魔力消費の激しい魔導装甲での戦いに消耗しているメルディはそこで膝を付くと、その隙を狙い異形の者(ゲスティル)達が囲い込むように襲い掛かった。
「メ、メルディ!!」
それに気づいたアスベルはメルビーに駆け寄ろうとするが、他の異形の者(ゲスティル)に進路を塞がれ辿り着くことが出来ない。
だめだ、このままでは・・。
バンッ! ビリリリリッ!!!
しかしアスベルがメルビーの命を諦めそうになった瞬間、メルビーを囲いこんでいた異形の者(ゲスティル)に何かが突き刺さると、それにつながる導線を伝い電撃が命中。
異形の者(ゲスティル)達は体から煙を上げながらその場に倒れ込んだ。
「メルビー少佐、大丈夫ですか?」
「あなたは・・。」
メルビーは差し出された手を掴み立ち上がると、目の前の男 ヴィリーに視線を向けた。
「特殊作戦魔導隊に助けられるとはね。さっきのはあなた達の特殊兵器と言ったところかしら?」
「そこは極秘事項ですのでお答えできません。」
「そう・・。」
ドンッ!! メルビーの言葉にヴィリーは笑みを浮かべ答えると、腕に取り付けている装備から先ほどの武器を発射し、2人に迫ってきていた異形の者(ゲスティル)を一撃で葬った。
しばらくして合流したアスベルは、ヴィリーと異形の者(ゲスティル)の死骸を見つめ瞬時に状況を把握。新たな命令を隊員達に下した。
「よし、全員密集隊形! 怪我人を囲いつつ時間を稼ぐ。もう少しすれば南入り口に配置していた中隊がこちらに到着するはずだ!」
「ヘス中尉、君たち特殊作戦魔導隊には動けない者の保護と、可能なら敵の殲滅を引き続き頼みたいのだが・・。」
「了解しました。では我々は引き続き当初の作戦を遂行いたします!」
シュッ! ヴィリーは他の特殊作戦魔導隊の隊員達に魔通信でアスベルの命令を伝えると、アスベルに敬礼したのちその場を離れていった。
ここで時間を稼げれば戦力を集中し一気に片を付けられる。
それにあいつも合流すれば・・。
「・・・・シルバーナ、無事でいろよ。」
アスベルはシルバーナの安否を心配するが、すぐに新たな異形の者(ゲスティル)が現れたことでそのことを考える余裕は無くなっていった。
「おい、ヴィリー!! まだ反攻は始まらないのか?! これ以上我々だけでは攻められないぞ!!」
「分かっている! だがアスベル少佐からはまだ何も・・。」
ヴィリー達特殊作戦魔導隊は怪我人を保護、アスベル達の元に運んだ後先行して少し先のアストロ兵器工場跡地前まで進んでいたが、そこで異形の者(ゲスティル)達の反撃に遭い、それ以上の進軍が出来ないでいた。
どうする・・? まだ別動隊は戻っていないようだ。
だが背後の敵は殆ど片付けた・・。やるなら今か??
ヴィリーは背後で密集隊形をとるアスベル達を見つめ、しばらくして魔通信を送ろうとする。
しかしその瞬間、前方から新たな異形の者(ゲスティル)が出現。ヴィリー達はその対応に当たらなければならなくなった。
「くそ! ヴィリー、こっちで1人やられた!!」
・・・特殊作戦魔導隊にもついに犠牲が出たか!!
異形の者(ゲスティル)達の攻撃に反撃していたヴィリーは特殊作戦魔導隊初の戦死者の報告を聞き、初めて表情を歪める。
しかしすぐに気を取り直すと、なおも迫りくる敵に反撃していった。
しかしあまりに多勢に無勢。いかに特殊作戦魔導隊が精鋭揃いとはいえ徐々に魔力を消耗し、彼らもアスベル達がいる地点まで押し戻され始めた。
「ヘス中尉、大丈夫か!!」
「これぐらいまだまだ大丈夫です! ですがこの敵の数は・・。」
アスベルの元まで撤退したヴィリーはこちらに向かってくる異形の者(ゲスティル)の群れを見つめる。
残りは200といったところか。
だがこちらも全員かなり消耗している・・。
最後まで持つかどうか・・・。
「・・・放て!!」
ダダダダダダダダッ!!!
しかしアスベルやヴィリーが武器を構えた瞬間、側面から閃光と共に無数の魔導弾が発射。
銃撃で怯んだ異形の者(ゲスティル)達にようやく本体に到着した別動隊が攻撃を開始した。
「おぉぉぉ!! 別動隊が到着したぞ!!」
「この機を逃すな!!! 一気に敵を殲滅するんだ!!!」
おぉぉぉぉぉぉ!! アスベルの命令で、隊員達は士気を取り戻すと一斉に反撃を開始していく。
「・・・シルバーナ、生きていたか。リリスも無事でよかった。」
「遅れて申し訳ありません。」
アスベルの前に別動隊と共に戻ってきたシルバーナが進んでくると、小さく頭を下げ、それに続き後ろのリリスも頭を下げる。
リリスが異形の者(ゲスティル)の攻撃を受ける瞬間、シルバーナ達の元に別動隊が到着。
間一髪のところでリリスを殺そうとしていた異形の者(ゲスティル)の首を別動隊の隊員が切り落としたことで、なんとか難を逃れことが出来た。
また、閃光弾の効果が無くなった異形の者(ゲスティル)を殲滅していたため、到着が遅くなっていたのである。
「・・・そうか。だがお前達が無事でよかった。」
「隊長。安心するのはまだ早いかと。」
「残りの敵を殲滅したのち、その言葉を聞くことに致します。」
「・・・ふっ、そうだな。」
アスベルはシルバーナからこれまでのいきさつを聞いたのち、彼女が無事だったことに安堵の表情を浮かべる。
しかしシルバーナの言葉に小さく笑みを浮かべると、異形の者(ゲスティル)の元に向かい走り始めた。
「私達も行くわよリリス!」
「は、はい!!」
シルバーナもアスベルの背中を見つめながら笑みを浮かべると、リリスと共に敵の元へと進んでいく。
その後、最後の一体をシルバーナが打ち取ったことで異形の者(ゲスティル)は全滅。
こうして、アストロ兵器工場跡地の戦いは人類が初めて異形の者(ゲスティル)に勝利した戦いとして記録されることになる。
この戦いで更に魔導兵の有効性が証明されたが、後世においてそのために犠牲となった16名の魔導兵の事はあまり知られていない。




