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進む先はどこへ

 ヒリア島。

 大陸南端に位置する島であり、その面積は約18000k㎡。

 異形の者(ゲスティル)は海水を嫌う事から海には近づかず、また、島の半分以上が平野部という地理的要因などから200年前に異形の者(ゲスティル)との戦いに敗れた人々がここに逃れ、アムステアの再興を宣言。

 現在では人口は約100万人を超え、その内8割以上が魔力器官保持者である。

 またその魔力を用いた魔法科学の発達により、かつての首都 リースをも凌ぐほどの賑わいを見せるまでに復興を遂げており、誰もが異形の者(ゲスティル)の存在を忘れかけていた。


 しかし、偵察から帰還したシルバ―ナとアスベルの噂が広がると市民の間には200年前の恐怖の記憶が蘇り、元老院の前には多数の市民が押し寄せる事態が生じている。



 元老院。

 5人の市民によって選ばれた元老により国政が動かされ、彼らが住まう元老院は国家の舵を取る最重要施設である。

 シルバ―ナとアスベルはその元老院からの召集を受け、元老達の前に呼び出されていた。


 「2人とも、面を上げよ。」

 中央に座る女性の元老議長 キーラ・アインの言葉で二人は同時に頭を上げる。


 「さて、今回二人を呼んだのは他でもない。先日の大陸偵察の件であるが・・。」


 「はい。任務の報告は既に上げていると思いますが。」

 ガサッ・・。 アスベルの言葉で元老達は手元の報告書に目を通す。


 「確かに読ませてもらった。だが、あまりにその内容が信じられなくてな。」


 「信じられないのはご自由ですが、そこに書かれていることは全て事実であります。」


 「・・・・エスティア少尉、君も同じ考えですか??」

 キーラはアスベルの隣に立つシルバ―ナに視線を移す。


 「はい。私達は旧市街地で異形の者(ゲスティル)と遭遇。そこでの戦闘で11名の仲間を失いました。」

 ギュウ・・。シルバ―ナは最後に目にしたベスの姿を思い出し、背中で握る拳の力が入っていく。


 「・・・そうか。だが何故それほどの数の異形の者(ゲスティル)が生存しているのだ? 既に大陸の人間は殆ど残っていないはずだろう?」


 「確かに。奴らが人間以外を捕食したというのは聞いたことがないからな。」


 「・・・その件でご報告したいことがございます。」

 キーラと議論を重ねる元老達に、アスベルは一歩前に出ると自分の右目から何かを取り出す。


 「知っての通り私の右目は義眼です。しかしこの義眼には私の魔力が込められており、私が目にしたものをそのまま記憶できる。」

 「これを見ていただけますか?」

 ヴゥゥゥゥゥン・・。 アスベルはシルバ―ナに部屋の明かりを落とすように伝え、義眼から映し出される映像を壁に映し出した。


 「・・はぁ、はぁ。くそ、奴らどこから湧いてきやがった。」

 壁に移る映像には、アスベルが建物の中を移動する場面が映し出される。


 「バタンッ! ・・・ぐっ! お前達すぐに撤退だ。・・・」

 

 ここは私達が飼育される人間を見つけた場所。

 それにあれは・・・。


 「それは本当ですか隊長?!」

 次に映し出されたベスの姿に、シルバ―ナは溢れそうになる涙を懸命に堪えながらなおも続く映像から視線を外さない。


 「ここです。」

 アスベルはしばらく映像を流した後、柵を越え捕まえた裸の人間の姿が映し出されたところで映像を止めた。


 「・・これは一体どういうことなのだ?」


 「恐らくここは人間の飼育場、彼らはいわゆる家畜ということです。」

 ザワッ!! アスベルの言葉に元老達からは大きな声が上がる。


 「まさかそのような事が・・! それは正確な情報なのか?!」


 「はい。ここを見てください。」

 アスベルは映像が映し出される壁に近寄ると、ある部分を指差した。


 「ここには明らかに穀物や肉と思われるものが置かれています。異業の者(ゲスティル)は人間以外は捕食しません。そういった情報から導き出されるのは・・」


 「つまり家畜としているということだな・・?」

 コクッ。 キーラの言葉に、アスベルは小さく頷いた。


 「だがアスベル少佐。それならば何故このことを今まで黙っていたのだ? これだけ重要な情報、2日前に帰還したとき、すぐに上に報告するべきだろう?」


 確かにその通りだ。

 隊長は私にも目にしたことを他言しないようにと命令した。

 これらの事から隊長の考えを推察すると恐らく・・。


 「それは上に報告すれば不必要にこの情報が広まるかもしれない。私達二人しか帰還できなかっただけで今の様な騒ぎが起きているのです。その上人間が家畜とされていると知った市民はどんな反応を見せるでしょうか?」


 ・・・やはり。

 アスベルの言葉にシルバ―ナは更に後ろで組む手に力が入り、元老達も納得したように頷いていった。


 「・・・確かにその通りだ。このことは一部の者だけが知っておけばよい。礼を言うぞアスベル少佐。」

 

 「・・・はっ。」

 キーラの言葉にアスベルは敬礼し、頭を下げた。


 

 「しかしそうなると、計画を根本から見直さねばならないな・・。」

 キーラの隣に座る白髪の男性 グーデルト・ウェスターはアスベルが再開した映像の続きを見ながら腕を組む。


 「確かに。大陸への移民計画は考え直さないといけない。だが、ヒリア島には既に余っている土地がなく、食料問題もいずれ大きくなってくる。あまり時間はないぞ。」

 グーデルトの言葉に、その隣に座る初老の男性 ヘンリース・ムリオットもその意見に賛同したが、彼の正反対の位置に座る若い金髪の女性 アリア・フリッターが反対の声を上げる。


 「何を躊躇している。最早この島に余裕はないのですよ? それに映像には迫りくる異形の者(ゲスティル)を一人で何体も倒している姿も写っているではないですか。」

 「つまり異形の者(ゲスティル)はもう我らの敵わない敵ではないということ。軍を動かし大陸南方に防衛線を作れば不可能なことではない。」


 「何を言う!! そんな単純な話ではないわ!! 奴らが人間を家畜にしているというのであればその数は全くの未知数。情報不足の現段階でそこに貴重な兵達を送るなど愚者のすることだ!」

 バンッ!! ヘンリースは無責任な発言ともとれるアリアの言葉に感情を露わにし目の前のテーブルを勢いよく叩く。


 その通りだ。奴らの数は膨大なもの、全ての兵士を動員したとしても勝てるかどうか・・。

 アリア様は何も分かっておられない。

 

 シルバ―ナはしばらくの間元老達の議論に耳を傾けていたが、その内容に我慢できなくなり口を開こうとした瞬間、それに被せるようにアスベルが口を開く。


 「兵士の立場から言わせてもらうと、軍人は命令があればそれに従います。しかしアリア様の仰ることはあまりにも現実を知らな過ぎるとしか思えません。」

 「私は部下を死地に送ることはしたくありません。どうかこのことを心に留めておいてもらいたい。」

フッ・・。アリアは小さく笑みを浮かべるとアスベルを睨みつけ答える。


 「・・・・・そうか、お前の言葉よく覚えておくこととしよう。」

 

 「その辺でよかろう。アスベル少佐、シルバ―ナ少尉。本日はもう下がってもよい。」


 「承知いたしました。」

 二人を見かねたキーラ議長が口を開くと、アスベルは頭を下げ退室し、シルバ―ナも急ぎ頭を下げるとその後に続き退室していった。



 「隊長、隊長!! あんなことをアリア様に言ってもよかったのですか?? あれではアリア様にどんな言いがかりをつけられるか・・。」

 部屋を出たシルバ―ナは先を進むアスベルに追いつくと、息を整えながら尋ねる。 


 「ああ、そうかもな。だがアリア様のあの物言いに我慢できなくなったんだ。もうベス達の様な犠牲は二度と出したくない・・。」

 

 隊長・・・。そうだよね、一番つらかったのは部下を置いていかないといけなかった隊長だったのかもしれない。

 それなのに私は・・・。

 

 シルバ―ナはアスベルの言葉に、ベスを置いて撤退した直後アスベルを殴ったことを思い出し自らを恥じていた。

  

 「・・まぁ元老達も馬鹿ではない。アリア様が言ったようなことは恐らく実行されないだろう。」


 「そうですね・・。特にあのキーラ様が議長の間は実行されないと思います。」


 シルバ―ナのその言葉を最後に、元老院を出るまで二人に会話はなかった。












 ヒリア島墓地。


 「ベス・ミラー ここに眠る。 2052年生 2073年没。」

 「まさかあなたに敬語を使うことになるとは思いませんでしたよ、ミラー大尉。」


 次の日、シルバ―ナの姿は共同墓地にあるベスの墓の前にあった。

 このヒリア島共同墓地には200年前の80万人の戦没者を弔う100mを超える慰霊塔があり、そこを取り囲むように多くの墓が並んでいる。


 「あれ? シルバ―ナさんじゃないですか!!」


 「あなたは・・、確かベスの・・。」


 「はい、妹のリリスです!」

 シルバ―ナが振り返ると、花を持った自分よりも少し若く見える女性が立っていた。


 確かベスは妹さんと二人だけだったはず・・。

 きっと私を恨んでいるわね・・。


 リリスは振り返ったシルバ―ナに頭を下げると、ベスの墓に花を置いた。


 「・・・私を恨んでいるでしょう? あなたのたった一人の肉親を置いてきてしまったんだから・・。」


 「・・確かに始めはそう思いました。でも多分兄はシルバ―ナさんのことを恨んでないと思うんです。」

 「アスベル隊長からも兄の最期を聞きましたが、お二人を逃がすために残りの命を使った兄を尊敬していますし、そんな兄が救ったシルバ―ナさんを恨むのは間違ってますしね。」

 リリスは立ち上がると、笑みを浮かべシルバ―ナに答えた。


 「あなたその印は・・・・。」


 「はい! 先日全訓練過程を終了し、無事魔導部隊に配属となりました! シルバ―ナ、いや、エスティア少尉。これからお世話になると思いますが、どうかよろしくお願いします!!」

 

 そう・・、彼女も魔導部隊に入ったのね。

 

 シルバ―ナは敬礼するリリスのその姿に複雑な感情を抱きながらも、それに応え敬礼を返すのだった。


 


 しかし二日後、元老院から大陸に拠点を築くための派兵が決定することをシルバ―ナはまだ知らない。

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