表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
工房主の実験録  作者: さくま
3/26

現状把握

さて、今後の方針はふんわりと決めた訳だが目先の事を何とかしないことには始まらない


まずは現状把握だ

確認しなければならないことを整理しよう

①自分について

②日記のバーディウスさんについて

③意味ありげな漆黒のナイフについて

④現在の部屋の更なる探索

⑤隣の部屋の探索

⑥衣食住について

⑦小屋の周りの状況について


「パッと思い付くのはこんなところか」


では、まずは

①自分について

俺の名前はバーディウス、男

年齢は...15~18歳くらいかな

自分でいうのも何だが、記憶喪失にも関わらず意外と落ち着いていることから10代前半ではない、と思う

少なくとも泣くほど辛くはない

まぁ、元々こんな性格だったのかもしれないし、自分より哀れなバーディウスさんを知ったおかげで客観的になれているかもしれない


記憶喪失も完全に全てを忘れた訳ではないことが一助している気がする

目覚めるまでの記憶は全くないが、ある程度、おそらくこの年齢までに知っているであろう知識は残っているようだ


ふとしたきっかけで思い出すことが多い

自分の名前に始まり、机や椅子、本棚といった物の名前、魔法や剣の存在...


あぁ、そういえば日記によるとこの世界では魔法やら剣やらが使えないと馬鹿にされるらしいな...それは始めて知ったぜ

今のところ、俺は馬鹿にされる可能性が高いな

残念ながらそんなものは知識も技術も知らない


俺、大丈夫か?


...次!


②日記のバーディウスさんについて

俺と同じ名前の彼...そんな彼の日記を目覚めた部屋で発見する


一見すると普通の状況だ

まぁ、記憶喪失自体が普通か知らないけど

それは今は置いておこう


記憶喪失で目覚めた部屋で、自分と同じ名前の人物の日記を見つける...普通に考えるなら何かあって記憶喪失になった人物が自分の部屋で目覚めて、自分の物を見つけるって状況だ


うん、普通だ


ただ現状はそんなに普通ではない

なぜなら俺と日記のバーディウスさんは同一人物ではあり得ないからだ

俺は10代そこそこ

日記のバーディウスさんは日記の雰囲気から察するにかなりの高齢だったようだ...これが同一人物な訳がない


とすると、親?いや、おじいちゃんかもな?

俺の親が、死んだ親、つまり俺のおじいちゃんの名前を子供につける...なくはないか


「んー、これが一番可能性が高いか?」

目覚めた部屋の住人と名前が偶然の一致よりは可能性が高い気がするし、正直なところこれよりいい案を思い付かない

あ、でもそれだとそのうち日記のバーディウスさんがここに帰ってくる可能性もあるか...もし鉢合わせすることがあればイカれたおじいちゃんっぽいけど事情を説明するとしよう

でも...何故か彼には会えない気がしている

理由は本当に何となくなんだが...


まぁ、確実なのは日記のバーディウスさんと俺には深い関係があったんだろうってことかな?

日記に子供の話とか書いてあれば、こんなに悩まなくて済むんだがなぁ...軽く読んだ限りではそんな文章は見つけられなかった


...とりあえず、②日記のバーディウスさんについては、俺にとって関わりが深い人物!これからの部屋の探索でもっと色々分かるかもだけど、もう、おじいちゃんってことにしておこう


"日記のバーディウスさん"も長いしな

今から"じいちゃん"に改名...次!


③漆黒のナイフについて

目覚めたときに机の上に置いてあったナイフである

持ち手から鞘まで真っ黒だ

明らかに安物ではない雰囲気...むしろ禍々しい


手に取るのも正直悩むが、見つめていても始まらない

それに禍々しいナイフ...少年心をくすぐる造形であることも否定しない、実にいいセンスだ


よし


「む、重い」

想像よりも若干重い

ナイフにしてはどっしりとした感触

発している重厚感を思えばこんなもんかな?って程度で決して使えないような重さではない


鞘から抜いてみる


刃も黒い

性格には背の厚い部分は黒く、薄く鋭くなるにつれ薄い黒、灰色がかっており、傾けて見る角度を変えると刀身は輝いている


「ほう...」

あまりの美しさに息が漏れる

禍々しいなんて言ってごめんなさい

素人目にも卓越した技巧が使われており明らかに業物であることが分かる


しばらく見つめてうっとりとしてしまう


そして不意に


「魔法?」

そう呟いていた


この異質ともいえる業物にそんな考えが頭をよぎる

何か不思議な力を秘めていてもおかしくない雰囲気を感じずにはいられなかった


すっと立ち上がる


そしてナイフを構え、唱える


「我に力を示せ!...黒魔刀っ!」




何も起こらなかった


声はよく響いたけどな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ