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工房主の実験録  作者: さくま
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今後の方針

「ん...」

無の状態から意識が生まれる

脳が働き始める感覚

眼球が光を求めて微々と動く


しかし、視界は暗い...真っ暗だ


次に感じたのは痛み

顔が痛い...何か顔に当たっているのか


他の部位に痛みは...ない

身体の異常を確認するついでに意識を全身に巡らせていく


どうやら、自分は何か座ったまま、何かに突っ伏しているようだ

顔面をそのまま突っ伏した何かに押し付けているのか、そりゃあ顔も痛い訳だ

じゃあ視界が未だに暗いのは?


...あぁ、そうか


瞼に力を入れる

窓から朝日が差し込むかのように目に光が入ってくる

ぼやけた視界が目に写る


最初に飛び込んできたのは茶色だ


そして次第にぼやけた景色は明瞭になっていき、ただの茶色い景色が意味を為していく


木目がくっきりと見える


なるほど、木...いや机に突っ伏しているのか...

じゃあ座ってるのは...そう、椅子か、椅子だな


そうと分かれば次にやることは決まってる


身体に力を入れ、身体を起こす

木目の景色は顔前から離れ、代わりに正面には扉が見える

そのまま、左右に首を動かす


壁...窓...違う扉...本棚に、机に椅子...


そこは間違いなく、部屋であった


「うん...」


部屋なのは分かった


けど、分からないことがとりあえず2つ



何故、自分はここにいるのか


そして



「俺は...誰だ?」


 ◆


「ふむ」

さっき目覚めた椅子に座りつつ、頬杖をついて机の上を見つめていた

正確には机の上にある一冊の本と漆黒のナイフを見つめていた


目が覚めてからだが、何にも記憶がない状況にも関わらず、意外と冷静でいられた

少なくとも見知らぬ部屋を探索するくらいの余裕はあった


そして、ざっと部屋を探索した結果がこの本と漆黒のナイフである


まぁ、他にも成果はあった

まずは俺の名前だが『バーディウス』

というらしい


"らしい"というのは本棚で見つけた本の表紙に「バーディウス」と書いてあっただけなのが理由だ


だが、不思議とその名前を見たとき「俺の名前はバーディウスだ」と思い出した

ので、きっと俺の名前はバーディウスに違いない


それから、俺が目覚めた部屋にあった扉

その向こう側は工房?みたくなっていた

作業台に、古びた木箱、工具などが散在していた

そこの探索は時間がかかりそうだと判断して後回しにした


そして元いた部屋に再度戻ってきて、椅子に座って先程の本を読もうと思った矢先、机の上にこの漆黒のナイフを見つけた、という訳だ

気づいてしまえば、何故最初から気づかなかったのかと不思議になるが、まぁ、人間そんなこともある


「まぁ、ナイフも気になるがとりあえずは本を読んでみることにするか」


パラッ...


「これ日記か」


 ◆


「...な、なるほど」

よくこの日記の著者はここまで世間を怨めたものだと感心する


まぁ、日記を要約すると、『俺ことバーディウスはこの理不尽な世界を見返してやるぜ、絶対にな!!』ってことだな


もう少し詳しく説明すると、この日記の著者、バーディウスさんはこの世界に馴染めなかったらしい

どうもバーディウスさん、この世界でやっていくための才能が乏しく色々と苦労したようだ

それこそ、いつか復讐を成し遂げてやるという思いが溢れるほどには世間に馬鹿にされたみたいだ


パタっ


日記を閉じる


そして考える



バーディウスさん、確かにかわいそうだ

うん、かわいそうだとも

大変だったろうと同情する


でも今、一番の問題はこの日記の著者バーディウスさんが俺と同じ名前であることだ


もちろん、俺にこの日記に書かれているような記憶はない

別人だと決めつけるのは簡単だ


だが、俺は自分が"バーディウス"だと思い出した

小さい頃からそう呼ばれていたのを思い出したような感覚だった


だが、やはりこの日記に書かれいるような記憶は思い出せない


とはいえ、最初から記憶がないのだ

日記の内容に限らず、何故自分がこの部屋で目覚めたのか

今まで自分がどうしていたのかも


自分の顔は確認できないが、腕や足の肌の感じ、体毛もほとんど生えていないのに髪の毛は黒々としているのを考慮すれば10代なのは確実だ


この日記にあるような何十年もの怨み辛みを経験している訳がない

この日記が俺の記憶の断片な訳はない



だが



「この日記が、少なくとも今は、俺の頼りであることには違いない...名前もたまたま同じだしな。」


怨みが書き殴られた、お世辞にも綺麗な日記とはいえない物

しかし何故か不思議と嫌な感じはしない


それは名前が同じだからだろうか



「記憶を戻すこと以外に、特にやりたいことも思い付かないしな。ならもう一人の俺の願い...ついでに叶えてやってもいいかな」


俺の今後の予定が決まった

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