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工房主の実験録  作者: さくま
18/26

教えてアルメルト先生 ~魔族編~

「できましたよ」

「おぉ、待ってました。いい匂いだな」


捌いたボアに塩と香辛料をまぶして焼いただけの物のようだがジューシーな匂いが鼻をくすぐる

アルメルトがそれを皿に乗せ、机の上に並べている

まだじゅうじゅうと音を立てており非常に旨そうだ


旨そうだが...


「今更だが魔物の肉って旨いのか?」

「好みは別れますが、私は好きですよ」


それならば少なくとも不味いものではなさそうだな

「そうか...じゃあ...」

フォークに肉を1切れ取り、眺める


「早く食べないと冷めますよ」

「おぅ...では」

覚悟を決め、肉を口に放り込み...噛む


むぐむぐ


最初に感じたのは獣臭さだ

野性味といえばいいのか

雑味のような物が鼻に抜ける

一瞬「うっ」と息が詰まる気がしたが、すぐに豚肉特有の油の甘味が口に広がる


「(臭いは独特だが味は旨いな...)」

一瞬感じた野性味も香辛料のお陰かもう感じない程度だ

すかさずもう一切れ


今度は独特の風味を覚悟していたお陰かそこまで不快感はない

そうなると感じるのは旨味だ

香辛料がなければおそらく食べにくいと思うが、独特の風味はこれはこれで肉の味として、1つのアクセントになっている


旨い


「なかなか旨いな」

「ですね。この風味は魔物、というよりかは野性で生きてるからこそだと思います。家畜豚の肉はどうしても臭みや雑味がなくて、いい意味では食べやすいですが、逆に食べごたえないんですよね。なので、私はこちらの方が好きです。」

「そうなのか?」

「バーディウスさん、記憶喪失ですもんね。またそのうち家畜豚もご馳走してあげましょう」


「そいつは楽しみだな。もう1切れ...」

「こっちの方はボアの鼻先の部分なのでコリコリとした食感が楽しめますよ。」

「まじか...むっ、ほんとだ。旨い」

「まだありますからたくさん召し上がってください」


そんな会話をしつつ、晩飯を楽しんだ



「では、魔物についての講義を始めます」

「よろしくお願いします」


晩飯をたらふく食べた後、茶を飲みつつ一休み、でも良かったが時間も勿体ないのでついでに昼間の約束通り魔物に関する授業をすることとなった


「まず、魔物とは魔力を求めて他種族を襲う生き物です。そしてそのような生き物を総じて魔族、と呼んでいます。」

「総じてってことは魔物以外にも魔族がいるってことか?」

「はい。魔物は魔族の中でも最下の存在です。魔物の上に魔獣、魔人がいます」

「ちなみにオークは?」

「魔物です。魔獣クラスでしたら私もバーディウスさんも生きてはいなかったでしょう。魔獣はある程度の知性を備えていますから、逃げた先に待ち伏せとかされてお仕舞いだったかもしれません。」

「不幸中の幸いってやつかな?ちなみに魔人は?」

「魔人は更に知性が高く、言葉を発し会話も可能だそうです。配下として魔獣を従えることも多いと聞きます。」


「そうなると、太刀打ちするのは無理そうだな」

「少なくとも原色以上でないとどうしようもないかと思います。」

「原色?」

「技量の段階付けです。冒険者、魔術師、武人それぞれの技量を無色、灰色、淡色、原色、顕色、輝色、光色、という表現でランク付けしています。魔術師で例えると、流色が使える程度なら無色となります。すでにある水などを流色を使って戦闘に使えるなら灰級。ちなみに水を扱うなら灰青級とも言います。そして自分の魔力で水を産み出せるなら淡青級です。ただし、ここまでは自己申告で構いません。原色以上は国からの認証が必要となります。魔術師以外ですと、それに匹敵する力を示すことでランクが付きます。」

「国家から力を認められた者じゃないと魔人には対抗できない...ってことか」

「そうなります。ちなみに無色ですと魔獣一匹に善戦できれば良し、複数の魔物なら逃げる、そんなものです。」


「ふむ。じゃあ魔物が魔力を求めて他者を襲うってのは具体的には?」

「食べます。」

「は?」

「むしゃむしゃと。」


ボアの焼き肉が目に入る

飯時に話す話題かい?

アルメルトをジロッと睨む

「そんな目で見ないでください。私は聞かれたから答えただけです。」

「とはいえ、食事時の話じゃないな...食べるのは何でだ?」

「でも、続けるんですね。その方が魔力を取り入れ易いから、腹を満たすことも兼ねている、なんて言われています。」


昨日出会ったオークに人がむしゃむしゃと食べられているシーンを想像してしまう


おぇ


「気分いい話ではないな...あとは...そうだな。魔物はそもそもどうやって産まれているんだ?人みたいに性殖か?」

「性殖って..それを女性に聞きますか?はぁ...あまり詳しく調査はされていませんが、人型、獣型の魔族にはそういったケースがあると聞いたことがあります。スライムのような無形型の魔物は分裂、又は魔力が多い場所に自然に発生したりします。あとは...」

そこで言葉を切るとアルメルトは考え込んでしまう


「どうした?あとは?」

「あ、いえ...あとは、魔神が生み出す、と」

「魔神?」

「文字通り、魔族の神と言われる存在です。ただこれはお伽噺のような物です。それこそ、英雄が活躍するお話に登場するような架空の存在」

「ちなみにアルメルトはどこで魔神の話を聞いたんだ?」

「寝る前の枕元です」

「そりゃあ、お伽噺だな」


でも、魔神か...

まぁ、いるかも分からない存在なんかより、今は確実に存在する魔物について調べてみたいのだ


「授業ありがと。なんとなく分かったよ。そういえば、アルメルトはそこまで階級が高い冒険者じゃないのに結構知識あるよな?冒険者はそんなものなのか?」

「私の場合は小さい頃から教わりましたから...」

「そうなのか?」

「そうですね...話しましょうか?」


「ぜひに」

「大した話しではありませんので期待しないでください。えーと...」



聖癒教国

聖教会の一室


その部屋の中央で怪しく光る魔方陣

『そなたの願い事は?』

「彼女を...ヴァルリアを手に入れたい!我が願いを叶えろ...魔神よ!」

『愛...愛ですわぁ。えぇ、構いません。構いませんとも...ただ1つ訂正を。偉大なる母たる存在と同格とされては恐れ多い...私は【狂愛】が"魔王"』

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