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桜舞い散る頃に…  作者: 彩莉
8/30

再会

展開します。

「霰!霰!」

「起きて!霰!」


「ん……おお、圭、鈴」

霰が目を覚ました。

「心配したんだよ…」

鈴は泣いていた。目も腫れていた。

「目ぇ覚めてよかったよ」

圭もにっと笑った。

「おう、悪かったな、心配かけたろ」

二人共首を振った。

「ねえ、霰…香織がいないの」

「は?なんで」

「それが、あの石の近くで倒れてたからオレが起こしに行ったらよお」

圭の顔が歪む。

「消えたんだよ。ホログラムみたいに」

「なんだよそれ、お前こんなときにふざけてんじゃ…」

「違えよ!嘘じゃねえ!」

たしかに、嘘はついてなさそうだ。

霰は先ほどの夢を思い出した。

やはりあの夢と関連があるのか?

そんな疑問が脳を行き交う。


「あれ?霰」

鈴が霰を指差し目を丸める。

「ねえ……霰、顔見て」

「見てって言われてもなあ、鏡とか持ってねえし」

鈴ははっとしたような顔に手を当てる。

「ちょっと待って!私ポケットに鏡入れてたんだよねー!」

スカートをバシバシッと動かした。

「おいっ!鈴!野郎が見てるとこで!」

「あっ出てきた!はい!」

手渡された鏡を借りて、霰は顔を見た。

「なんじゃ、こりゃあ」

「うお!気づかなかった!霰!お前なんだよ!これ!」

圭も驚き、目を丸くする。

「三角の模様?」

逆三角の赤い模様が、両目に浮かび上がっていた。

「なんだよ、これ」

「なんか香織にも同じような模様出てたよねー」

鈴がそう言いながら口元をいじる。

「おい鈴、詳しく話してくれ」

「うん、なんかいなくなる直前にそんな模様が、香織にも出てたの」

「嘘!?オレ気づかなかった……」

「圭馬鹿だもん」

「かっ関係ねえだろ!そんなん!」


同じ模様。

まさか、いや……でも……

さっきの夢と関係があるのか?

そんなことを考えていたら、いつの間にか日の出の時間になっていた。


「さっきまですごく不気味だったのに、変な感じ」

「本当だな。景色は綺麗だ」

「ああ……」


香織はどこにいるんだろう。

さっきの夢の話だと、香織に何か異変が現れているんじゃないのか?

心配で心が張り裂けそうだ。


「あっおい!いたぞ!」

「本当だ!初田ァー!火山ァー!青山ァー!」


菅野だ。それと…みたことのないおじさんがいた。

「おーい!」

「あっ菅野!」

「バカヤロウ!菅野先生だ!お前らどこに行ってたんだ!」

ゴチンッと霰と圭が殴られる。

「先生、鈴は殴らないんですかー」

「女に手を上げる男がいるか!」

「オレらも同じ生徒だけど!?扱いひでえ」

いっひひー、と笑いながら鈴は二人の様子を見ていた。


「あれ?松田は?」

「いや…いなくなったんだよ」

圭が菅野にそう答える。

「いなくなった?」

「それがよお、オレらにもよくわかんなくて」


「若の出番ですな」

先の見たことのないおじさんがそういった。

「若?つーか誰だよオッサン」

「初田!この人はこの土地の神職の方だ!」

「アンタら、村に入ったな?」


ぞわっと、肌寒い感触が身体中を走る。

「あの村って?何なんですか?秋野さん」

秋野と呼ばれた男は口を開く。

「先生、この三人はこのままだとちいと危ないですぜ。もろに食らっちまってる」


食らっちまってるって何だよ。

俺たちを威嚇してんのか?

そう言おうとしたが、この雰囲気がそうはさせてくれなかった。


「若の元に案内する。それでいいですか?先生さんよお」

「生徒がそれで助かるなら…」


「おい待てよ、勝手に話進ませてんじゃねえ。

大体、香織はどうするんだよ!」

「君は、そうか……」

秋野は目を細くして、霰を見つめる。

「大丈夫、もう一人も見つかる」

「だから、そんなのわかん……」

「見つかる。絶対だ」

絶対、その言葉に霰は押しやられた。

どちらにしろ、この状況だ。見つからないよりはそれに賭けるしかないだろう。


「行くよ」

「あっ霰が行くならオレも」

「私もー、こうなりゃ三人一緒じゃんね」

菅野はやや安心したような顔でこちらを向いた。


「じゃあ、頼みます。秋野さん」

「わかりました。じゃあついてきてくれや」

粗暴な言い方が目立つが、秋野という男について行った。



連れてこられたのは、平安京を思い浮かべるような建物だった。

赤と金色、建物は神社のデザインに近い。

そういえば、神職とか言っていたな。

「若、連れてきましたぜ」

「ほな、通して」

秋野の声に答えた声は青年のようだった。

秋野が簾をあげ、その声の主の姿が露になった。

「こんにちはぁ」

はんなりとした青年が微笑みそういった。

「こんにちは」

「こんにちはー」

「こんにちはっ!」

「元気いいねえ君」

鈴の方に目をやり、そう言う。

「そーですか?ありがとうございますー!」

鈴もにっと笑いながら手を頭の後ろにあてる。


「秋野、もうええよ」

「はっ、ほんならまた何かあれば呼んでください」

「うん、わかったわ」

秋野はそう言われ、下がった。

「皆、湯ノ神村に行ったんやってなあ」

「ゆの…?」

「うん、君らの入った村やね。あそこはそう呼ばれとったんよ」

「それで、それが何か?」

「入ったとき、何か感じへんかった?」

そう問われ、緊張がはしる。

「感じた、凍りつくような不気味な感覚だった」

「私も!」

「君は?」

青年は霰に話をふる。

「俺も」

「まあ、あの村に入ったら大体そうなるんよ」

「あの村、何なんだ?突然オレらの前に現れたんだよ」

青年は圭の問いにこう答えた。

「うん、簡単に言えばあの村は『見えるはずのない』村なんよ。君らの先生にも見えへんかったはずやで」

青年の言葉に、妙に納得がいった。

だから不気味だったのかもしれない。

「あの村はな、特定の条件を満たしたモンにしか見えへんねん。心当たりは?」

「ねえよ、あったらとっくに言ってる」

霰はそう言った。

「あるはずやで?不思議な声が聞こえた、とか、変な夢を見た、とか」

「!」

そんな、なんでこいつがそんなことまで知ってるんだ?


「霰?顔色悪いぞ?」

「まさか霰は、聞いたの?」

「…村に入って、気絶してから……」

静まり返った。

「それは、霰君だけかな?」

「オレは見てねえ」

「私も……」


「ほな、二人は大丈夫そうやな。先生んところに送ったる。

そや、今日は安静にしとき。絶対あそこに戻ったらあかんで」

「でも、香織が……」

「お友達が心配なんはようわかる。でもこれは守ってもらわな困る」

「わかった、霰は?」

「霰君には、もうちょい残ってもらうわ。先生には俺が伝えとく」

「おっけい!じゃあ、先帰るね霰」

「おう」


「霰君」

「なんだよ」

「君態度悪いなあ、俺のこと嫌いなん?」

「いけ好かねえ野郎だと思ってるよ」

「それ嫌いって言うねんで」

「そうかい」

「君まだなんか隠してるやろ?」

いきなり話を切り出してきた。

「は?」

「いや、さっきはあんなこと言うてたけど、

あれは村に入ってなったことやろ?」

「……」

「松田香織」

「!」

「彼女の失踪と関係あるんちゃうか?」

「…夢を見た、つったろ」

「言うてたねえ」

「シダってやつとモモってやつの話を、聞いた」

記憶を見たと言った方がいいのか。


青年からクククッと笑い声が漏れた。

「くくっやっぱり訳ありやと思ったで」

「知ってんのか?」

「いやあ……」

笑うのをやめ、こちらに視線をやる。

「俺が『神崎』やでって言ったらどない?」

!?

「ちなみに言うと、この家もその血を継いどる」

「知ってるのか!?千年前の村のこと」

「聞きたいか?ええよ、答えたる。

その前に自己紹介せんとな。俺は神崎一夜」

「俺は初田霰だ」

「霰君、これに見覚えある?」

そういうと神崎は着ていた着物を脱ぎ、背中を見せる。

銃痕を何倍も大きくしたような赤黒い傷が、神崎の背中一面を覆っていた。

「いいや…ていうかえらくグロいな」

「これな、千年前死んだときにできた傷やで」

「え…!?」

千年前、こんな傷をつけられるようなやつがいたっていうのか?

「まあ風穴空けられてたらしいわ」

「いや…待てよお前、千年前からずっと生き続けてんのか?」

ありえない。人間がそんなに長く生きられるわけがない。

「八百比丘尼……みたいやろ?」

「本当なのか!」

「なはは、なわけないやろ!」

「……」


何なんだこいつ。人をからかってるのか?

やっぱりいけ好かないやつだ。

「俺はこれで十回目や。生まれ変わんのはな」

「生まれ変わり……?」

「そうや。俺は何回生まれ変わっても前の記憶があるんや。それでいつもこの傷は生まれたときからある」

「不気味だな」

「はは、今更やろ?」

「いや……」

着物を着直し、神崎はじっと目を瞑った。

「千年越しや。やっと、こうやって会えたな、シダ君」

「……俺の前世のことか」

「そうや、君が生まれ変わるまで待っとったんやで」

「どうして」

神崎は、たしか村の神社のモンだった。

だがそれだけだ。他に接点はない。

あのとき生き残った俺とコバを恨んでるのか?


「もう霰君を解放したりいや、シダ君」

「俺を、解放…?」


「霰君も香織さんも、こちらの人間です。

シダさんとモモさんもかつてはそうでしたが…」

神崎の話し方が変わった。

いや、これは…『千年前の神崎』だ。

話し方がそっくりだ。記憶が残っているならそうなんだろう。

にしても、さっきからシダと言っているが。

シダがどこにいるって言うんだ?

村にしかいないんじゃないのか?


「人と人ならざる者が交わった先にあるのは地獄です…それは貴方が一番よく知っていたんじゃないですか?」

「おい神崎、誰と話してるんだ?」

「シダさんですよ」

「シダなら村にしかいないはずだけど……」

「…妙なことを聞いてもいいですか?」

「おう」

「そのシダさんには、霰君の頬にあるのと同じ模様がありましたか?」

模様…?

ああ、逆三角の模様か。

「いいや…」

「!」

神崎の顔が歪む。それと同時に顔色が少しずつ悪くなっていく。

「なんということだ…」

「え?なんだよ、この模様が何かあるのか?」

「つまり貴方はシダさんではなかった」

どうやら、神崎にはシダが見えていたらしい。

だが、シダじゃないとはどういうことだ?

そこに何がいるんだ?神崎。


「今度はシダさんの生まれ代わりの霰君に降りるつもりなんですね」

「なあ神崎、だから誰と…」

「ええ、守りますよ。霰君も香織さんも。貴方からね」

『楽しみだ』

どこからともなく風が吹き、そんな声が聞こえてきた。


「悪かったなあ、色々と俺は勘違いしてたみたいや」

先ほどの神崎に戻る。

迫力のある声とはほどとおかった。

「心配せんでええ」

「神崎…」

「もう一つの知られざる昔話、湯ノ神村の話をするわ。聞いてくれるか」

答えは一つしかなかった。


「おう…聞かせてくれ」

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