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桜舞い散る頃に…  作者: 彩莉
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24/30

少しの暇

いとまです。少し短め。リラックスして読んで下さると嬉しいです。

‪「コバ!お前今暇か?」‬

‪シダは手を振りながら、コバのもとにやってくる。‬

‪「ああ、今荷物を積み終えたからな」‬

‪「ならよかった、ちょっと着いてきてくれ」‬

‪ニコニコ笑うシダに着いていくと、一つの神社にたどり着く。‬

‪その神社は、とても綺麗であるのに、人気はなかった。‬

‪「ここ、誰も参拝してないみたいでさ」‬

‪もったいないだろ?と肩を組みながら視線をコバにむける。‬

‪「そうだな、けど、珍しいな。お前が神社に連れてくるなんて」‬

‪コバの言葉を聞き、シダは少し下を向く。‬

‪「まあ、神の子、だしな……」‬


‪白くなってしまった髪をくしゃっと掴み、自嘲気味に笑う。‬

‪「自嘲するなよ、恥ずかしいことじゃないだろう」‬

‪「コバ、お前はいつから小豆色の髪になったんだ?」‬

‪「オレは、生まれつきこの色だったよ」‬

‪シダの黒髪はとても綺麗だった。白髪も綺麗なので、羨ましいと、コバは思った。‬

‪「そうか。……なんだかもう数年は一緒にいるのに、知らないことだらけだな」‬

‪寂しげな表情を見せる。‬

‪「知らないこと……か、いつかオレたちが、お互いのことを全部知るときがくるのかもしれないな」‬

‪「それは楽しみだ!コバの好きな女とかな」‬

‪コバは顔を赤くして、シダを睨みつける。‬

‪「オレが好きなのは……ユリだよ」‬


‪初恋は、モモだった。煌めく笑顔、綺麗な顔立ち、そして何より、他の存在を尊いとする思想。‬

‪なにもかもが、コバの惹かれるところだった。‬

‪だが、同時にシダのことも好きだった。友人として。明るく、品行方正で、顔も整っていて、人当たりがいい。‬

‪お似合いの二人だった。‬


‪そして、こんなオレなんかを好きになってくれるユリのことが、何より大切な存在だ。‬


‪「まあ知ってたけどな」‬

‪「っ!この野郎!」‬

‪コバはシダを軽く小突く。‬

‪「またここで、色んな話をしようぜ」‬

‪シダは笑い、コバもつられて笑う。‬


‪ー‬

‪「神崎……」‬

‪「これでもう、シダさんは……!」‬

‪血が頬を伝う。シダの血だった。‬

‪「シダっ!!」‬

‪モモが、シダの名を叫ぶ。涙を流しながら。‬


‪「お……俺……」‬

‪意識はあるのに、口が思うように動かない。たしか、一度こんな気分を味わった気がする。‬


‪そう、モモに……絞め殺されたことがあった。‬

‪気づいたら、戻れないような気がしていた。それは正しかった。‬


‪俺の身体なのに、融通がきかない。何かが、俺の中にいる。‬

‪やめろよ。俺をこれ以上壊さないでくれ。俺はこの村を壊したくないんだ。モモを護りたいんだ。‬


‪モモは俺をじっと見つめる。見ないでくれ。俺はこんなことをしたくないんだ。それでももう、俺の意識とは関係なく、『何か』が俺を乗っとっていくんだ。‬

‪コバ、お前はモモのことが好きだったんだろ?なら、頼むよ。俺の代わりにモモを護ってくれよ。俺はもう駄目だ。お前しかいないんだ。‬


‪考えるだけの頭は、身体を止めることができないままだった。‬

‪涙を流しながら、笑いながら、シダは村を壊し、倒れた。‬





‪ー‬


‪「モモ……」‬



‪「霰君!」‬

‪「霰!起きたか!」‬

‪「霰〜!よかった!」‬


‪アラレ?誰だ、それは。俺はアラレなんて知らない。‬


‪「どうしたの?顔、青ざめてるけど」‬

‪紫髪の女が俺の顔をのぞき込む。‬

‪「よかったな!お前あれからずっと起きなかったから心配してたんだぞ」‬

‪橙色の髪の男が肩を叩く。‬

‪「……?」‬


‪「よかったわ、そや、香織ちゃんも呼んでくるなあ」‬

‪こいつだけはわかる。目の前の男は、俺を殺した神崎だった。‬


‪「どうしてあのとき俺を殺した?」‬

‪気づけば、神崎の胸ぐらを掴んでいた。‬

‪「え?殺……?」‬

‪「とぼけるな神崎、お前は俺を刺殺しただろ」‬


‪「霰?何言ってるの?」‬

‪「お前、鬼人に吹っ飛ばされて気絶してただけだぞ」‬


‪アラレ?俺はアラレじゃない。鬼人なんて知らない。お前達も知らない。‬


‪「もしかして……」‬

‪「ねえ、大きな音がしたけれど……何かあったの?」‬


‪「あっ香織!霰が起きたよ!」‬


‪襖を開けたのは、モモだった。‬

‪「モモ!」‬

‪「へ?ほんとだ!霰、おはよう」‬

‪「モモ……無事でよかった……」‬


‪霰は香織に口づけをする。‬


‪「……〜っ!?」‬

‪香織は驚いて、霰を突き飛ばそうとするが、力が強く、できなかった。‬


‪「モモ……モモ…………」‬

‪「私は香織よ?霰、とぼけてるなら……」‬


‪「いや、恐らく……霰君は……」‬

‪神崎はケホケホッと、咳き込みながら応えようとする。‬

‪「シダ君の記憶と混ざってしもうてる」‬


‪「じゃあ、今の霰は、シダ……?」‬

‪霰はシダ、と呼ばれニッと笑う。‬

‪「モモ!会えてよかった」‬


‪たしかに、私のことをモモと間違えている。神崎の胸ぐらを掴んでいたのは、死んだ直後のままだから。‬

‪なら、霰は?まだ寝ているの?‬

‪それとも霰が自分のことをシダだと思い込んでいるの?‬


‪「よかった、安心し……」‬

‪霰はそのままドサッと倒れる。‬

‪「へ?また倒れちゃった!」‬

‪鈴は圭と二人で霰を寝床まで運ぶ。‬

‪ ‬

‪「疲れてたから、記憶が混同してるんかもなあ」‬

‪神崎は香織の横に座る。‬

‪「首、大丈夫?ごめんね、霰が……」‬

‪「大丈夫、俺とご先祖さんはそれだけ似てたんやろうな」‬


‪夕飯の準備をしている途中に、霰は目を覚ました。‬


‪「霰、もう起きたの?体調は?どう?」‬

‪香織が霰の横に座る。‬

‪「大丈夫だ。それより、悪かった。本当にごめん」‬

‪霰は頭を下げる。‬


‪「いいのよ、私が秘密にしてたのが悪かったんだから。辛かったでしょ?」‬

‪辛いというより、鬼人には話すのに、俺には話さなかったことへの嫉妬だった。‬


‪「それより、さっき……」‬

‪「なんだ?」‬

‪「……覚えてないの?」‬

‪「何の話だ?」‬

‪香織は少しため息をついて、むっと膨れた。‬


‪「いいわよ、とりあえずご飯食べに行きましょう」‬

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