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桜舞い散る頃に…  作者: 彩莉
13/30

火の中

「まぶしっ…」

目を覆うようにして後ずさる。

「あれ?たしかに光ってたよな」

圭の痣はまた黒色に戻っていた。

「とりあえず鈴を、探したほうがいいんじゃねえの?」

霰の言葉に、二人も賛同した。

「中学生は寝とき、言うてもきかんやろうしなあ。二人共、この前初めてここに来たときの部屋覚えてる?」

あの簾が置いてあった部屋か。

「ああ、俺は覚えてる」

「私もよ」

「なら、そこにいといてくれる?後で俺も行くから」

神崎にそう言われ、香織と霰はその部屋に向かった。


「す……」

「圭君?どうしたん?」

圭の口からこぼれでる言葉に耳を傾ける。

「鈴羽……」


「鈴羽……?誰のことや?」



「ここで待ってたらいいのか?」

「そうみたいね」

そういえば色々ありすぎて気にしてなかったけど、香織の私服、久しぶりに見たな。

二人きりになり、会話が思いつかない。

「鈴、大丈夫かな……」

「早く見つかるといいよな」

「圭も倒れちゃったし……」

修学旅行の気分は抜けきっていた。初日からこんなことになるとは、俺も皆も思わなかっただろう。

「霰」

香織は霰の横に座り、霰の寝間着の裾を掴む。

「お…おお、どうした」

ぎゅっと強く引っ張られる。霰も思春期真っ只中なので、自ずと顔が赤くなる。


「私ね、修学旅行前にね……鈴と会ってたの」

「そうか、俺も圭の家に行ってた」

まあ俺は、圭に相談をしに行ってただけだけど、

と苦笑いをする。

「鈴、修学旅行のときに圭に告白するって言ってて」

「……!そうなんだ」

あいつらは両片想いだったからいつかはそうなると思ってたけど、まさか鈴から告白しようとしてたとは思わなかった。

「それなのに、こんなことになっちゃって……私、鈴や圭のためにできることが何もなくて……」


香織は涙を流していた。

圭や鈴は、俺と香織のことを心配してくれていた。二人は俺たちと会うまでこんな気持ちだったのか。


「待っとこうぜ。あいつらが俺達を待っててくれたように」

そういって香織の頭を撫でる。

「うん」


「霰君、香織ちゃん」

「神崎」

「圭君が、意識を取り戻したで」

「ほんとか!」

「よかった……」

「うん、さっきの部屋来て」

襖を開けると、圭は布団の上に座っていた。

「わりぃな、オレ倒れてたみたい」

「いいんだよ、体調は大丈夫なのか?」

「うん、それがこの気味悪い痣があるだけで、身体は大丈夫なんだ」

たはは、と圭は笑った。


「その痣、さっき光っててん。圭君心当たりない?」

「うーん……関係ねえかもしれねえけど……

また夢見てたんだよ、オレ」

「昨日言うてたやつ?」


「そう、その続きかな?えっとな……」


圭に似た着物を着た男が刺されていた。それを見た女が叫び狂い、その屋敷に火をつけた。

火をつけた女はそのまま火の中に残り、刺された男を抱きしめていた。

圭はそう話した。


「火をつけた女と刺された男か……」

霰はおぞましい夢だなと思いながら、そう呟いた。

「信じてくれるのかよ」

圭は意外そうに言う。

「そりゃー信じるだろ。つーか俺と香織も似たような体験したからな」

「そっか!サンキュー」

圭はにっと笑う。やはり圭は笑顔が一番似合う。


「その火をつけた女が、鈴に似てたんだよなあ」

圭は頭の後ろで手を組みながらそう言う。

「え?予知夢ってこと……?」

「えっそうなのか!?やべえオレ死ぬかも」

「いや逆かもしれねえぞ。昔の記憶……とか?」

昔の記憶。モモとシダのような。

「昔の記憶かー、なんか不思議な気分だな」

「昔の記憶やとしたら、何かを伝えようとしてたんかもしらんな」

神崎はしゃがみながらそう言った。

「おー、そうかも」

頭いいなあと言いながら圭はまた笑った。

香織は神崎の言葉を聞いて、閃いたような顔をした。


「ねえ、その夢の中に出てきた場所に言ったら……鈴も見つかるんじゃないの?」

「夜も明けかけてるし、俺はそこを探すのに賛成だ」

圭は急いで立ち上がる。

「え!?鈴がどっか行っちまったのか!?オレも探す!待ってろ今着替えるから」

と言って寝間着を脱ぎ始める。

「ちょっ…圭!いきなり脱がないでよ」

香織は目を背け、顔を手で覆う。

「あっ香織!わりぃ!」

と言いつつも手を止めずにいそいそと着替える。

「わかった。じゃあみんなで探そう。俺も着替えてくるわあ」


神崎はそう言って別の部屋に向かっていった。

「じゃ、私も着替えてくるわ」

「おー、俺も。外の庭に集合な」


そう言ってそれぞれの部屋に戻った。

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