異常な血
彼からの『帰る』メール以外、ほとんど携帯は鳴らない毎日だった。
だから、買い物中、父から着信に気づかなかった。
着信五件、そして留守電が入っていた。
『お母さんが倒れた。今病院にいる。電話をくれ』
私は急いでかけ直した。
『頭を打って、意識がなくなり今手術をしている。
そんなに心配しなくても大丈夫だから、帰って来るのは明日で良い』
そんな様な事だった。
私は彼に連絡し、明日朝から実家に帰ると告げると、彼は急いで帰って来てくれた。
とりあえず私一人で父の言う通り、次の日に帰った。
病院は親族や母の友人が集まっていた。
そして母の姿を見て驚愕した。
そこには、何かの液体がボコボコと気泡を出し、心電図のモニターからはピッピッと単調な機械音が鳴る中、チューブやリード線にまみれ、頭を包帯でグルグルと巻かれ眠っている母がいた。
聞けば、かなり危険な状態だったらしい。
父の言っていた『心配ない』は何だったのか。
私が到着した時、もしかしたら母は死んでいたかもしれなかったそうだ。
「実はあなたのお父さん『娘に心配かけたくないから、落ち着いてから連絡する』って言っていたのよ」
「みんなで説得するのが大変だったのよ」
親族や母の友人のおばさん達が、そっと教えてくれた。
妻を心配する夫の顔をして、先生の話を聞いている父を見て、狂気を感じた。




