異類異形
『父親と口論の末、殴り殺す 息子逮捕』
『カッとなって妻を殴る、酒に酔って 60歳男逮捕』
『大声で叫ぶ声 隣人が通報 酒に酔って暴れる男逮捕』
こんなニュースが流れる度に、自分の家族が起こしたのではないかと、ヒヤリとしてしまう。
先日の出来事で、それは戦慄に変わった。
「お父さんが酒を飲んで怒鳴り散らしてくる」
と涙声の母から電話がかかってきた。
電話の最中に、
「痛い、なにするの」
と母の叫ぶ声と、その後ろから父の大声で罵倒している様な声が聞こえる。
父が酒に酔って暴れているのだ。
今は父と母の二人しかいない。私も直ぐに帰れる距離ではない。
私は電話を切り、兄に電話をかけた。
何度かかけたが、兄は電話に出なかった。
再度母に電話をすると、あまりの叫び声に近所の人が通報したのだろう、警察が来て話を聞かれているらしい。
電話の向こうでは、父の怒鳴り声がまだ聞こえていた。
警察官は、
「どうされますか?被害届を出されますか?今日は旦那さんを連れて行きましょうか?」
と言っていた。
私は、警察に連れて行ってもらって反省させろ、と母に伝えた。
母は警察官に、大丈夫ですから、と体裁を気にして帰ってもらうように進めていた。
まただ……。
この母はどうして現実と向き合わないのだろう。
いつまたこんな事があって、ケガを負わされたり、最悪殺されるかもしれないと言うのに。
「とりあえず落ち着いたから、心配かけてごめん」
そう母は言って、電話を切った。
どうするべきなのか考えていると、兄から電話がかかってきた。
ああ、良かった、とりあえず様子を見てきてもらえる、と思った。
電話に出ると、
「仕事中なんだよ!何回もかけてくるな!なんなんだよ!」
といきなり怒鳴られた。
説明を始めようとしても、
「知らねーよ」「そんな事でかけてくるな」「急用かと思うだろう」
と、電話を耳から離すほどの大声で怒鳴っていた。
普通だったら、久しぶりに妹から何度も着信があったら、何か大変な事があったんだろうと思うのではないのか。
最初の言葉は「どうしたんだ?何かあったのか?」ではないのか。
もう、本当に、こいつは、『普通だったら』なんてものは通用しない。私の知らない宇宙人なのではないかと思うほど、分からない。
兄としてと言うよりも人間として、なんて役に立たない存在で、なんて害のある存在なんだと、意識が遠退く様な感覚に襲われた。
家族という無意味な集合体に無理やり属させられ、絶対に抜ける事ができない、こんなものは、ただの地獄だ。




