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私の命終わる日に ――終焉の女騎――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第5章 悪夢と悪夢 ――ウロボロス本部――
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第96話 神議会の登場

 【ウロボロス本部 中枢施設最上階 “ナイトメアの間”】


 私たちの身長の10倍はあるであろう巨大な黒いゲートが、ゆっくりと重たい音を立てて上へと開いていく。私たちは揃ってゲートの先へと足を踏み入れる。――ウロボロス本部中枢施設の最深部へと。

 ゲートの先はウロボロス本部の最高司令室――神聖レナトゥスの代表ローリングの執務室だ。ビリオン=レナトゥス時代だったなら、ここはヒライルーの執務室だっただろう。


「――ようこそ、我がウロボロス本部最高司令室へ」


 部屋はウロボロス本部最高司令室にふさわしく広い部屋だった。壁と一体化した大型コンピューターが部屋の全方位に設置され、奥には階段。その先に、スーツを着た男が私たちに背を向けて座っている。男の視線は壁に設置されたスクリーンに注がれていた。

 大型スクリーンにはウロボロス本部要塞の様子が映っていた。夜空を神聖レナトゥス軍の軍艦10隻が砲弾を撃ちながら飛んでいく。向かう先にルミエール政府軍の中型飛空艇。両軍がぶつかり合い、負けた軍艦が真っ赤に炎上するウロボロスの都市へと落ちていく。


「お前が神聖レナトゥスの代表――ローリングだな? 私たちのエンドレス・クリスタルを返して貰おうか」


 私たちに背を向けていた男は、椅子ごと振り返る。黒ぶちのメガネをかけた30代半ばの男は、私たちに臆する様子を見せず、不敵な笑みを浮かべる。


「全く、本当に予想外ですよ。敵はルミエール政府だけと思っていましたが、まさかあなた方までお越し頂けるなんて光栄で御座います……。そんなあなた方に敬意を表して、閣下が相手頂けるようです」

「なに?」


 ローリングが視線を向けていた大型スクリーンの右側にある鋼の扉が開く。中から黒いローブを纏った者たちが次々と姿を現す。……いずれも人間だ。クローンじゃない。


「う、うわっ……。これは本気か……!?」


 ブリュンヒルデの握る刀は震えていた。歯を噛み締め、目はローブの人間たちを睨んでいた。こめかみから一滴の汗が伝う。


「知り合いか?」

「あったのは初めてだ。だけど、間違いない。――お前たち、“神議員”だな?」

「な、なにッ!?」


 ブリュンヒルデに視線を向けていた私は、ローリングの側に集まった男たちに再び目を向ける。漆黒のローブを纏った10名。全員から異様なオーラが放たれていた。一人一人が強者であることは間違いない。

 神聖レナトゥスの上部組織――「神議会」。その最高幹部たちを“神議員”と呼ぶらしい。全員で12名で構成される神議員は、神議長と呼ばれる長を1名選出し、組織を運営する。

 漆黒のローブを纏った1人の男が、ローリングの、神議員たちの戦闘に立つ。黒色をした冷たい瞳が私たちに視線を投げる。その途端、私は言い表せぬ恐怖を感じた。この男は危険だ――。


「お前、グリードシティにいた……」


 廃都グリードシティで、私たちは敗北を悟り、パトラーの空間魔法で撤退した。だが、途中で強引に止められた。その時に出会った男が、今また目の前にいる。


「そうか、お前が神議会の議長だったんだな……」

「…………!? フウカの言っていた男がアイツ……!?」


 ミズカが刀を構える。その刃は激しく震えていた。まだ、戦いが始まってもいないのに、私たちの誰もがあの男に威圧されていた。こんなことは初めてだった。最初の震えも、あの男がいたからだろう。他の者たちからは“強さ”しか感じられない。だが、あの男からは“恐怖”を感じる……。


「主らはなぜ抗う? 偉大なる神シュレラは、この世に新たな時代を築かれるであろう。古き世は淘汰され、新しき世が誕生する」

「その世界に私たちの居場所は?」

「……歪なる魔女はもとより、邪神ハトナーンの流れを汲む人間・サキュバスに居場所はない。偉大なる神シュレラはハトナーンの血を一掃するであろう」


 何を言っているのか、意味が分からない。だが、1つだけいえる。シュレラの世界に、私たちの居場所は――


「――ない」

「…………!」


 心を読まれた!?


「グリードシティでも我は主の心を読んだハズだ。忘れたかな?」

「あ、ああ、そうだったな……!」

「約束の日に偉大なる神シュレラは再臨する。大神の再生は、我ら神議会に与えられた唯一の使命。邪魔立てするなら、裁きを待たずして主らは命を絶やすことになろう」


 相変わらず男の声は廃都グリードシティで聞いたときと同じく落ち着いていた。だが、声が発せられる度に私は心臓を握られるような感覚だった。今すぐ逃げ出したい。そんな恐怖が私の心を覆っていた。


「シュ、シュレラが私たちを殺すなら……」


 ブリュンヒルデが震える脚を一歩前に出す。


「私はその復活を阻止する……! 何もせず死ぬぐらいなら、いまここで抗うッ!」

「……よかろう。神のしもべに弓を引き、天に乗り込んだ主に敬意を表し、この我が相手しよう。――クラスタの様に、我を失望させるな?」

「ど、どういう意味ッ!?」


 パトラーが叫ぶ。ブリュンヒルデは開きそうになった口を閉じる。もし、パトラーが叫んでいなかったら、ブリュンヒルデが同じセリフを発しただろう。


「天を目指し、天を目にすることなく壊れた白い夢。我の前任者――パトフォーを打ち破ったあの実力を試さんとしたが、あまりの弱さに失望した。同時に恥じた。――パトフォー前議長は、こんな弱者に敗れたのかと」

「…………ッ!」


 私は身震いした。クラスタの力は、パトフォーを打ち破った私やパトラーの力を遥かに凌駕しているハズだ。その側にはシリカやフィンブルといった猛将だっている。なのに、この男にとっては――。

 男は腰に装備した刀を抜き取る。漆黒の刃が姿を現す。パトフォーを超えるであろう男は足を僅かに曲げ、そこから飛ぼうとする。


「――――」


 赤色の血が宙を舞う。“それ”は一瞬の出来事だった。


「……は?」


 今、まさに私たちを殺そうと飛び掛かった男が、――血を噴いて倒れた。

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