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織姫と彦星とその他のはなし。 後編

あ、あれ??ガールズラブじゃないはずだったのに・・・・。

すみません、相思相愛ですが主従愛だと言い張らせてください!!

お互いに自己紹介を済ませて本題に入る。

カササギ族、初めて聞く種族だ。

天にはいろいろな種族がいるが翼がついている種族なんて初めて見た。


「あなた方の背中の翼は飛ぶためについているのですか?」


「あぁ、簡単だぜ。こんな風に・・・よっと!」


私の問いに空太と名乗った男が翼を広げ飛び上がる。

大きな体で見事に宙を舞っていた。


「あの、それではこのボディクリームを天の川の向こうにいる華穂姫のところに届けていただけませんか?」


会えないのは残念だけれど、クリームが華穂様のところに行くだけでも安心できる。

3年も会えないのだ。来年だって会えるかどうかわからない。

助けてくれるというのならば、それにすがらなければ。


「それだけでいいんですか?」


「はい。この増水した川では私は渡ることができません。

ですが、貴方達の翼があれば関係なくこれを届けることができるでしょう。

天の川の向こう、天帝様の宮にいらっしゃる華穂姫に渡して欲しいのです。」


「かしこまりました。あなたの願い、我らカササギ族が必ず叶えてまいります。吉報をお待ちくださいませ。」


決まり文句なのかかしこまった口調で恭しく礼をして、6人は翼を広げて飛び立っていった。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「唯さん、唯さん・・・・・・」


わたしは自室でひとりしくしく泣いていた。

今年も唯さんに会えなかった。

去年も一昨年も渡せなかった唯さんのために作った衣はもう10着を超えている。

特に今年は気合を入れて作ったものが一枚ある。

本当は今日着てもらうつもりだったのに。


コンコンッ


窓を叩く手が見える。窓からなんて誰だろう。

わたしは泣きすぎてぼんやりする頭で窓を開けに行った。


「こんにちは、華穂姫。」


「!!!!!!!」


窓から入ってきた人達を見て驚いた。

カササギ族!

普段は人里離れた場所で暮らす彼らに会うことは滅多にない。

わたしは昔、一度だけお父さんと一緒に会ったことがあった。もっともこんなキラキラしい人たちじゃなくて穏やかなおじいちゃんだったけど。

カササギ族の特殊な仕事。

本当に困った人の前にだけあらわれて、その願いを叶えてくれる。

それを思い出して心が沸き立つ。

このタイミングできてくれたってことは・・・・・。


「わたしのお願い、叶えてくれるんですね!!!」


・・・・・・満面の笑みでそういったらなんだか『え?』って顔をされた。


なんで?






とりあえずお茶を出して自己紹介する。

隼人くんと空太さん?顔が赤いんだけど大丈夫かな。風邪??


「華穂姫、今日僕たちはある人の願いでこちらに来ました。」


「・・・・・なぁんだ。」


カササギには困った人の声が聞けると言われている。

そしてその相手の願いしか受けない。

彼らがある人の願いで来たということは、わたしの願いを叶えにきたわけじゃないんだ。

それが彼らの仕事だから仕方ないんだけど、やっぱり残念・・・・・・。


「で、お願いってなんですか?」


「これを預かってきました。」


秀介さんが出してきたのは、いつもわたしが使っているクリームだった。唯さん特製の。


「・・・・ねぇ、ある人って唯さん?」


「はい。川縁で増水した川を悲しそうに見ていました。」


うぅ、溢れてくる涙で視界がボヤける。

カササギは心からの願いしか聞き届けない。

唯さんのところにカササギが来たってことは、唯さんは本当にわたしのことを考えてくれてるんだ。

すごく嬉しい。そしてそんな唯さんに会えないのが悲しい。


「あの、今から唯さんに結果報告に行きますよね?

そのついででいいんです。

この衣を唯さんに渡してくれませんか?

カササギが願い人以外の願いを叶えられないのはわかってるんですけど、どうしても・・・。」


秀介さんはわたしが差し出した衣を困ったように見つめている。

やっぱりダメかな・・・。また視界が滲んできた。


「じゃあさ、その衣 俺がもらってやるよ。」


は?


空太さんの突然の申し出に驚く。


「俺がもらった後、それを俺が誰に渡すのも自由だろ?」


「そうですね。願いの見返りではなく物を貰うことは掟で禁じられていませんし、貰ったものをどうしようと私たちの勝手です。」


「空太、宗純・・・。」


秀介さんが仕方ないぁという風に息をつく。


「わかったよ。君たちがそれでいいなら。

では、華穂姫、僕たちは彼女のところへ報告にいってきますので、失礼します。」


6人は窓から外へ飛び立っていった。








-------天の川上空



「おい、秀介。」


「なんだい?流。」


「俺は今日の依頼が非常に気に食わない。

これであの女の憂いが晴れるとは思えん。」


「そうだね。でも彼女が口にした願いは叶えたよ。」


「秀介、ちょっと頭固いんじゃない?

別に俺らカササギの使命は言われたことをするためにあるわけじゃないでしょ?

願い人の憂いを取り除くこと。

俺が慰めて憂いが晴れるならいいけど、今度こそ殺されそうだし。」


「おおおおおおお俺もっ、俺もそう思います!

そっそれに華穂姫も唯さんと同じくらい悲しんでました。俺、なんとかしたいです!!」


「・・・・・・・空太と宗純の意見は?」


「わかってんだろ。」


「愚問ですね。」


「・・・・・・・仕方ないね。

僕も美人には笑ってて欲しいし今回は大目に見よう。

隼人、華穂姫様のところに戻って伝えておいで。

あなたの真の願いを叶えますって。」


「はははははいっ!!!」


「あんまり慌てすぎて落ちるなよー。」


「大丈夫だよ!空太こそ華穂姫の力作衣落とさないでよ。」


「そんなヘマしねーよ。気をつけてな。」


「行ってくる!」










「たっだいまー!!」


空から変態が舞い降りてきた。


「ちゃぁんと唯ちゃんの願い叶えてきたから、褒めて♡」


「秀介様、ありがとうございます。華穂様はお元気でしたか?」


「無視!?完全スルー!!!!!???」


変態は放っておいて秀介と話をする。


「あなたに会えないことをとても悲しんでいました。」


「・・・・・・そうですか。」


「はい、これ。唯さんにやるよ。」


突然、空太様から大きな風呂敷包みを渡された。かなり重くてよろめいてしまう。

っと、後ろから抱きしめるように支えられる。


「ダメでしょ、空太。唯ちゃんは女の子なんだからそんな重たいの急に渡しちゃ。」


・・・・・・ここは素直に礼を言うべきか、変態の腕を振りほどくべきか。


包みの中を確かめる。

そこには会えなかった3年分の華穂様の努力が詰まっていた。

頑張っているのがわかる。その努力をいたわってあげられないのが悲しい。


突然スッと秀介様が礼をするように胸に手を当てた。

それに合わせて他の者たちも同じ姿勢をとる。

・・・・・・・変態の腕も外れた。


「あなたの願いは叶えました。しかし、あなたの憂いは晴れていません。・・・・・・あなたの真の願いはなんですか?」


「えっ・・・・・・・」


真の願いなんていわれても困ってしまう。


「お前はもっと素直になれ。

俺たちはお前の願いを叶えるためにここにいる。

お前の願いは必ず叶えてやる。だから言葉にしろ。」


流の射抜くような視線に緊張が走る。

するとぽんっと後ろから肩を叩かれた。


「そうだよ、唯ちゃん。

俺たちはね唯ちゃんにも華穂ちゃんにも笑ってて欲しいんだ。

だから言葉に君の願いを俺たちに叶えさせて?」


その言葉に後押しされて言葉がポロリと口からこぼれ出る。


「・・・・・・たい。華穂様に会いたい!」


本当はいつも思っていること。

でも、天帝様に禁止されたことを口にするわけにいかないと、ずっと7月7日まで堪えてきた。

でも、去年も一昨年もその思いが果たされることはなくて。

ずっと溜まり続けていた思い。


「かしこまりました。我らカササギ族、今宵この翼で貴方の願いを叶えます。」


礼をした後の彼らの表情はとても優しくて、なんだかぼーっと見とれてしまった。





「じゃあ、俺が唯ちゃん運んだげる♡」


変態がまた後ろから抱きついてきた。


「馬鹿を言うな。俺が運ぶ。」


「ダメだよ。流に女の子の扱いがわかるわけないでしょ。」


「お前に任せた方が危険だ。」


「えぇー、俺安全飛行だし。」


私に抱きついたままギャンギャン言いあわないで欲しい。

うるさい。

それに変態は遠慮したい。


そんな言い合いに入ってきたのは宗純様だった。


「ふたりとも馬鹿ですね。落ち着きなさい。

そもそもいくら女性でも人ひとり抱えて飛べるわけがないでしょう。重量オーバーです。

ふたりで運びなさい。」


「えぇー、流と?」


「こんな奴と運ぶなんてごめんだ。」


「じゃあ、私と空太で運びます。いいですね。」


「「よくない」」


「じゃあ、貴方たちふたりで協力しなさい。唯さん、丈夫な籠と縄はありますか?」


宗純様のヒンヤリした声に急かされるように家から牛の飼い葉を入れる用の籠と、飼い葉を結んでおく縄を持ってくる。


「あぁ、これなら十分ですね。」


そういうと手際よく籠の縄をくくりつけ変態と流の腰にも巻いてしまった。


「準備はできたね。じゃあ籠に乗って。待ち人のところまで急いでいこう。」




空の旅は絶景だった。

特に天の川上空は流れる水の中に輝く光の粒とその光を反射した水が輝いたまま跳ねるように散っていて、まるで光の中に取り込まれるような錯覚をしてしまう。


「すごく綺麗。」


空を飛べるなんて思ってもみなかった。

こんな経験、今日以外一生ないだろう。



うっとりしている間に華穂様の住まう宮が見えてくる。

宮の庭にはたくさんの篝火が焚かれ、大量の料理が載せられた卓が並んでいるのがわかる。



「唯さん!!!」


華穂様は敷地の一番端。もっとも天の川に近い場所で両手広げて待っていてくれた。


「華穂様!!」


思わず高度の下がってきていた籠から飛び降り、華穂様にかけよる。

華穂様は私の腕の中に飛び込んできてくださった。


「本物の唯さんだぁ。やっと・・・やっと会えた!!」


「華穂様、私もとてもお会いしたかったです。

衣、ありがとうございます。また一段と上手になりましたね。」


「3年もたったもん。唯さんに何してたんだって言われないように頑張ったよ!

筝も上手くなったから今夜はたくさん聞いてね!!

お料理もいっぱい準備したからいっぱい楽しもう!!」


「はい!!」







こうしてカササギたちの協力もありふたりは無事に会うことができました。

そこからはカササギたち一緒に呑めや歌えやの大宴会。

カササギたちが酔いつぶれて唯が帰れなくなったのもご愛嬌。

娘の泣き落としもあり、天帝は唯の滞在を許しました。

ふたりは会えなかった3年分の話を尽きることなく夜通し語り合い、絆を確かめ合いました。




めでたしめでたし・・・・・?



これにて七夕話終了です。

・・・・・・・と言いたいところだったんですが・・・・すみません、後日談がつきます;;

本当は後日談まで含めて後編だったはずなのに、全員揃うと無駄に長く・・・・;;


本編ずっとお休みするのも微妙なので、後日談はリアルタイムに合わせて掲載しようと思います。

多分1週間後くらい?


小噺もブックマークしてくださり、ありがとうございます!

本編共々よろしくお願いします。

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