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「はあ? さっきからなによ!? そんなちっぽけな港なんて、どうでもいいでしょう!! シス国だって、ユク国より小さいんだから、そんな小さい国の王女なんてさっさと追い出してよ」


 メグの言葉にトーマスとクリスが同意する。メグの言葉の勢いに励まされ、ギルバードが発言した。



「メグ。なんと賢いのだ。 父上! いくらシス国の王女でも、ユリアなどこの国に必要ないはずです。 叔父上が兄上の後見人になったとしても、無意味すぎます。いままでどこでなにをしていたか分からない叔父上を支持する人などいません。


 お婆さまも、かなりボケてきたようなので、いままでのように隠居していてください。

 この国の王になるのは私です。昔からそうと決まっています。

 でないと、国民が混乱して内戦になります。

 王妃は心やさしい人がなるべきです。メグは慈愛に満ちており、庶民の心が分かる女性です。


 彼女は貧しい庶民たちに食事を与えたりしています。


 メグほど王女にふさわしい人はいません!


 なによりメグは私の子供を身ごもっております。新たな王家の一員です。もう世継ぎについて心配する必要はありません。

 これでこの国は安泰です。シス国と友好関係を結んでいる必要などありません」


「いや~ん。ギル。まだ妊娠のことはみんなに内緒って言ったのに」


 顔を赤く染めてメグがモジモジしている。クリスもトーマスも反応薄い。二人は知っていたのかな。


私は相変わらず王さまに対してもブレのない自己中なメグにただただ驚いている。



「小国……」


 シス国は小国じゃない。大陸にある領土だけで見るとたしかにユク国より小さいが、シス国はたくさんの島々を持っており国力はユク国より上だ。

地理をわざわざ勉強するのは騎士学科の生徒ばかりだったから二人は知らないのだろう。ギルバードはメグと会ってから勉強を疎かにして、毎年ギリギリで進学していた。


 うわーーー。ヒルの顔が怖い! 父さま以上に怖い! 隣にいるザックもいま後ろに一歩下がった。


「ヒルドさま。お許しください! ユク国王妃の首一つでお詫びできることではありませんが、このように息子をしてしまった責任は、わたくしにあります。お願いします。お許しください!」


「わたくしの命も差し上げますので、この度のユク国の失態をお許しくださいませ」


 入場してから一度も発言しなかった王妃とアンドレアの母妃が涙を流しながら頭をヒルに下げた。

 王妃さまと側室さまは仲がよくて、よく私と一緒に王妃教育の後にお茶会をした。二人のことは将来の母親だと思って、お慕いしていた。


「ははうえ……?」


 困惑した声をギルバードとアンドレアさまがつぶやいた。

 王さまがヒルに頭を下げる。


「ヒルドさま。謝罪では済まされない発言を息子がしました。国民のために戦争になることは、両国とも望まないことと思います。息子の無知は王族として、教育を疎かにしてきた我が国の責任です。

 この場において、第二王子ギルバードを王族から除籍します。及び、王妃も離宮へ引退させます」



「……わかった。この場で無知なユク国の若者に世間を教えよ」


 うわー。ヒルがブラック過ぎる。王さまが謝罪するなど……。部屋がざわめきはじめる。

 王妃さまが離宮へ引退ということは、ギルバードの権力を根こそぎたつということかもしれない。


「じょ、除籍とは! 一体どういうことですか!!?」


「えっ? ギルは王子じゃなくなるの? 公爵になるの? 

 あたし、公爵夫人じゃなくて王妃がいい。

 もしギルが公爵になるんだったら、クリスでもいいじゃん?」


 メグの言葉が会場に響いた……。お腹の子供はギルバードの子供なのに? クリスと結婚? いやだ。メグが義妹になるなんて! 私の人生は、この国にはないみたい……。シスへ逃亡しようかな……。


「黙れ! いまからわしが発言を許す者以外の発言は禁止する」


 とうとう戦争の危機にまで晒されて、王さまがこの茶番劇を終結した。


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