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 私と離れたくないと言って駄々をこねた父さまを、ザックが引きずって帰ってくれた。それから何回もお忍びで父さまがお店に来たけれど。

 父さまが来るたびに、見てはいけないものを見た顔でお店を出て行く人々。まあ、父さまがたくさん物を買っていってくれるからいいけれど……。

 ザックもお店に邪魔する時になにか買っていけばいいのに。

 やっぱり、脳筋男は気が利かないなあ。


 父さまの強いリクエストで髪型は、一年前の令嬢スタイルの縦巻ロール。「ゆりあたんはクルクルが一番かわいい」って。

 成人式当日に、部屋に現れた私専属侍女たちに「ご無事でよかった」と何度も泣かれてしまった。


 さらに額に残った傷を見て、「おいたわし」とベタベタ何層もファンデーションをぬられた。

 弁解しておきますが、私は決して厚化粧じゃないよ!


 屋敷で義母にいじめられてたのを何度もかばってあげてたからかも。義弟クリスはこの一年で本性を現したらしい。父さまがいなかった上に、私が消えてもう自分の天下になったから。


 なんでもいろんな令嬢と屋敷で乳繰り合うのに忙しいらしい。若い侍女たちとも。もともとその侍女たちと私の侍女たち、仲が悪かったからいいけれど。

 曰く、クリスが公爵になったおりには、彼女たちは愛人として屋敷に住むらしい。その時は私の侍女たちをこき使ってあげる。だって。



 だからなんだろう。もう再会した時の喜びがすごくてビビった。今日の成人式は私が誰よりも美しくして見せますと……久しぶりの縦巻カールの威力が半端じゃない! このバネすごい……。

 

 女院のお姉様に清楚で飾り気のない黒いドレスを用意してもらっていてよかった。

 

 じゃないと、私がいない間にいつ?と聞きたくなるようなピンクのフリフリドレスを着せられるところだった。


「なにこれ?」


 一年前はここまでドレスの流行はひどくなかったのに?

 侍女たちが言葉を濁しながら教えてくれた。


 王太子の婚約者がはやらせようとしているスタイルだそうです……。


 メグは、頭の中もお花畑なんでしょう。

 きっと「私が流行作ってみます! みんな私のセンスのよさにびっくりして」と言っているのかも。このドレスを着たら、子豚に見えるよ。

 ま、まさか、夜会で令嬢たちは子豚ダンスしているのかな? ありえる。


 いまから会う予定のあの女メグのことを考えて、ドナドナしながらザックにエスコートされつつ王宮に向かった。


 今日のザックは喋らなかったら正装軍服でかっこいい。


「なんでザックがこの女と一緒にいるのよ!」


 式場に入った途端に、ピラニアのごとくあの女が宰相の長男トーマスと一緒に来た。宰相家は子爵。能力を買われた下級貴族だ。将来、トーマスが父親のように宰相の地位にはつけないと思う……。


「ユリア嬢。罪人のあなたがノコノコと王家の前に顔を出すなんてなんと非常識なんだ!」


 はい、トーマスはこんな奴だ。学園の成績が私の方がよかったからいちゃもんをつけるようになった。


「姉上!! なっ、なんでここにいるのですか!? 男と駆け落ちしたのに! いつの間に、ザックに鞍替えして!」


 あれ私は男と駆け落ちで逃げたってことになっているの? 婚約破棄で辛くなって処刑が怖くなって逃亡したと父さまには言ったのに??


「クリス! 貴様!! ユリアさまに対して失礼だ!」


 すかさず私はかばってもらった。大きな彼の背中のおかげで、あいつらを見なくて済む……。かねてからの言動を知らなければザックにときめいたのに……。

 もうあいつらを見ても平気だと思ったけれど、全然ダメだ。ふつふつとあの時の怒りと不安が自分の心を支配しそうで苦しい。


「ザック。一体どうしたの? やっぱりあたしがギルと結婚するから一緒にいるのが辛くなったの? 安心して、あたしはギルと結婚するけれど、いままで通り、みんなへの愛は平等に与えるわ」


「ああ、分かっているよ、メグ。あなたはいつも女神のように清楚で美しい心のやさしい女だ。平等に私たちを愛してくれている。

私も宰相になったらメグをすべての敵から守ってあげますよ」



「もちろんだよ。私たちのかわいいメグ。君が王妃になっても私たちがいつも一緒に愛してあげるよ。我がレディス公爵の後ろ盾があるからメグは誰よりすばらしい王妃になれるよ」


 真っ赤な顔をして、両手を頬に触れてトーマスとクリスを見上げている。そしてその次にザックを見上げて……。


(偉いぞ、ザック。スルースキルマッスル!)


 ……結婚する前に不倫宣言? 清楚? あばずれの間違いなんじゃない?


 って、あなたたち周りがひいているの気づけよ! 

 目の前のザックすらひいて、私にぶつかりそうだったよ。


 周りのみなさま、ちゃっかり耳はしっかりこっちに向けているのに。視線はあっちこっちさまよっている。

 ええ、お若い令嬢さまは子豚が多いこと。


 今日の成人式参加者は、ほとんど上流貴族たちで伯爵以上。たまにちらほらと子爵男爵……。


「ユリアさま!!」


 唯一、この会場にいる令嬢でピラピラパステルカラーのドレスを着ていない令嬢たちは私の取り巻きだった友人たち。確か友人たちは以前クリスとトーマスの婚約者になる話があったけれど、その話はどこへ行ったのだろう。


 まあクリスの場合は、義母が勝手に侯爵令嬢に話を持っていって。父さまは無視していた。トーマスは自分から伯爵令嬢に求婚して、王家が許可しなかったみたいだけれど。トーマスは学園に入ってからすぐのころは積極的に伯爵家以上の令嬢に声をかけていたなあ。



 でもいくらトーマスが眼鏡のエリートイケメンでも、結局みんな小さい頃から婚約者がいる。いない子もそんなにあせって選ばない。学生時代は自由に恋愛したいと言う子が多い。

 宰相は、なんでトーマスの結婚相手を子供のころに探さなかったのだろう……。

 やっぱり派閥争いが起きるから、頃合を見つけて相手を見つけるつもりだったのかな? ありうる。トーマスの父親も野心家だしね。

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