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 私と再会した後は、ザックは女院に入れないから、こうして私が店番の時に顔を出して、なぜか冒頭のバカな求婚をしてくる。

 父さまとの面会のことをさっき聞かされた。って、ヤバいじゃん!!

 筋肉バカと父さまが昨日面会して……。


「ユリア! 大変! こ、公爵さまが! 院長先生が院に戻るようにって!」


 きったー。私の庶民バラ色人生が終わったー。あの筋肉バカ、あやつの首締めてやる! 首輪をつけて鞭でぴっしーっと……。



 ドナドナでノロノロがんばったけれど、ちびっこたちにひっぱられて押されて……くー、なんてかわいい顔しながら、処刑台に連れて行くのだーーー。


「ユリアたん!! おー私の天使」

はい、天国にいらっしゃる母さまに再会しました。


 涙ベロベロで頬ずりされて。せっかくの美中年が残念な顔になっているよ。それでなぜか一緒にいる筋肉バカも父さまと同じように涙流して……。

 唯一、なにこれと白目で立っている院長先生が素敵です。


「レディス。ユリアを離してあげなさい」


 院長先生は勇者でした。


「は、はい……。でもユリアたん、パパの手をニギニギしててね。

ゆりあたん成分が足りなくて、ゆりあたん欠乏症になりそうだったの~」


「……はあ。わたくしもパパたんに会いたかった……」


「ユリアたん!」


 今度は確実に死んだ母さまに抱きしめられたような……。


「ユリア。レディスを甘やかさない。レディスもユリアとの面会を禁止にしますよ」


「はっ、はい、院長先生」


「はっ、はい、王太后デブラさま」


 ひえーーーー

 父さまの言葉に血の気が引いた。


「王太后さまと知らずに数々のご無礼、この身をなんなりと御処分ください!」


 父さまの手を払いのけて、床にひざまづき王家への最敬礼をした。一年たったのに体の隅々まで令嬢作法が沁みついていた。



「ユリア、レディスのとなりに座りなさい。わたくしは院長であなたの保護者です」


「はっ、はい。院長先生」


 胸がいっぱいになって涙が出そうだった。

「ユリア。あなたは公爵令嬢です。貴族の一員として成人の式に出席する義務があります」



「で、でも、わたくしは第二王子に婚約破棄されて、将来の王太子妃を傷つけたと言う罪があります。成人式に出たら処刑されます」


 さっきから隣にいる父さまの怒りがヒシヒシと伝わってくる……。ご、ごめんなさい……ふがいない娘で……。


「ユリアが処刑されることはない! この父と一緒にシス国へ亡命しよう!」


「えっ?」


「ちょっと待ちなさい! レディス! ユリアは無実です。国王陛下も知っています。ユリアと王子の件は陛下とわたくしにまかせなさい。あなたは自分の息子と嫁について整理しなさい」


「ええ、それはもちろん。私のかわいいゆりあたんを傷つけた罪を一生涯後悔させましょう」



 うわー。話が見えないけれど、父さまがさっきと違う恐怖のオーラを振りまいている。


「成人式までは、ユリアはいままでのようにここで生活しなさい」


「は? なんでですか? 私のかわいいゆりあたんと離ればなれで暮らさないといけないとはどういうことですか!?」


「レディス。ユリアの安全のためにここがいいのです。それにそろそろ子離れしたら? ユリアだってもう大人になって結婚する歳なのですから。ちょうどいい機会だと思います」


 結婚? 王子に婚約破棄された女をもらいたがるもの好きなんていないよ。


「いいえ。やっとあの忌々しい王子と破談になったんだ。ゆりあたんは一生パパと暮らせばいいんだ!」


 えーと。父さまは私が破談されたことを怒っていないの?


「父上さま! わたくしにユリアさまを幸せにする役目を許してください!」


 はっ? 筋肉バカもいたんだ。


「私がいつお前の父親になったんだ! ダメだ! お前は伯爵家を継ぐ身。ゆりあたんを嫁になんてださん」

「家督は弟に譲ります!」

「……そうか……君はなかなか骨がある。ふむ。

 あの女狐の誘惑に勝って、私のかわいいゆりあたんの美しさに気づいたか。王子側近から外れ出世街道を棒にふり、伯爵という身分も捨てて、ゆりあたんを欲しいとは。


 私にとっては君は理想だが……結婚相手はゆりあたんが決めた相手だ。

 でも、このまま、ゆりあたんを守るために側にいることを許す!」

「はっ! ありがたき幸せ!」


 ……。


「……その暑苦しい話し合いは、わたくしのいない時にしてくれない」


 院長先生すみません……。


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