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 ザックが護衛をすると言って後についてきたけれど、お花摘みに行くと言って、城のサロンで待ってもらった。

 上流貴族や重臣に割り与えられた自室に行く気がしなかった。偶然にリュークやギルバードに会いたくなかった。


 成人式で聞かされた内容を整理する時間が欲しかった。


「まあ。ユリアさまではありませんか?」


 ぼんやりしながら歩いていた。

 目の前にハチミツ色の髪と若葉色の瞳をしたかわいい女性がいた。どこかメグを思い出させる女性だ。でも絶対メグの親戚じゃないだろう。


 バレリーナネックの水色ドレスを着ていて、胸の谷間がまぶしい……。


 目の前の女性は、女性の私が見ても嘆息が出る爆乳だ! 肩凝らない?と聴きたくなる。コルセットをどれだけ締めたか分からないウエストに、安産ですねと言いたくなるお尻。


「はじめまして。わたくしは、ネイ国第一王女ポリアンナ=ネイと申します」


「お初にお目にかかります。ユク国レディス公爵家の長女ユリア=レディスと申します」


 ネイ国はシスとユク国の両方と国境がある。国力は二国ほどではないが軍事力においては二国に並ぶだけの力があり、ここ10年近辺の小国を吸収して領土を増やしている国だ。


「この度はアンドレアさまとのご結婚おめでとうございます。今後なにかとわたくしと遭遇する機会がありますが、どうぞ容赦なく諫めてくださいませ」


「は、はい~? し、失礼しました」


 ネイ国と私の国は同じ言語を使用しているはずなのに、彼女の言葉が分からない。


「わたくしとアンドレアさまは婚約していませんわ」


「えっ?」


 今度はポリアンナさまが唖然とした顔をした。


「一体、どういうことなの!? オープニングそうそうバグが起こったの? それとも、ま、まさか!? あなたは転生者なの!? 『異世界イケメンらぶ』乙女ゲームのプレイヤーだったの!!」


 『異世界イケメンらぶ』うわ~、なんてベタなネーミング!!


 あっ、あれ? 以前私は同じことを言った……。


 『乙女ゲーム』……どこかで聞いたような……。オープニング……バグ……転生……プレイヤー。

 

「異世界イケメンらぶ……」


「そうよ。初心者向けのために作られた乙女ゲームよ。市販された当初は、舞台設定やキャラ設定がゆるいと批判されたけれど、ゲームに馴染みがない年配層に受けたゲームよ。


 なにも考えずにしたいという女性が多くて、シチュエーション萌のためだけに作られたゲーム。

 ヒロインが無邪気な性格で、深く考えないキャラ。まあ、ヒロインよりユリアさまがいいと言うプレイヤーが多かったけれどねえ。


 人によってはバカなキャラたちが愛の囁きをしていることにツッコミをするのがおもしろくてプレーしていたらしいけれどね。

 とにかく! あなたは転生者でプレーヤーだったんでしょう!」


 興奮しているポリアンナさまは言葉使いが乱れている。


「ごめんなさい。混乱していて、頭が痛いわ」


 一年前の古傷が治っているはずなのに痛い。


「頭の傷? わたくしもユリアさまには同情しているのよ。第一段で、全攻略キャラたちの悪役令嬢をしなくてはいけなくて。ヒロインがどのキャラを攻略しても、最後に退場でスラム街に捨てられて。

 ザックさまに出会うまで娼婦館『女園』で軟禁されて働かされて。


 あっ、これは18禁続編のオープニングで流れていたことね」


 18禁……。続編? 悪役令嬢……?


「続編でも悪役令嬢なんですもの。プレイヤーに密かに人気があったのよ。あなた、続編はプレーしたの?」


「していません……」


 ポリアンナさまのいう単語を知らないはずなのに、懐かしい気がする。私はポリアンナさまの不思議な単語を知っている。


「第一段で退場して娼婦館にいたということは……スラム街に捨てられた時、馬車から落とされて打った頭の傷によって、前世の記憶を思い出すパターンだったのね。

 わたくしは全部今後の未来を知っているのよ。あなたがこの国の者たちを憎んで復讐しようとしていることを知っているの」


 王さまの謝罪で消えた怨念が蘇る。


「シス国に助けを求めてユク国を滅ぼそうとしているでしょう。続編は上級編で舞台設定がしっかりしているの。ヒロインのわたくしも、賢い女性の設定なのよ。


 前世OLで『お局さま』と若い子に呼ばれて、地味眼鏡ババアと呼ばれたこのわたくしが、はじめて買った乙女ゲームの続編に転生したのよ!

 性的攻略は、前世処女だったから自信がないけれど、知性的な部分では、誰にも負けないわ。とくに女子高校生だったあなたにはね!」


 前世の私は女子高校生だったの? その前に私はポリアンナさまのいうように頭を打った後に、前世の記憶を思い出した転生者なんだろうか……。



「わたくしの最後はどうなるのですか?」


 自分の今後を知りたかった。



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