だってこれって、ただのオタク
ピーンポーン
日曜日の暖かな昼下がり。昼食で満腹になって気持ち良くうたた寝していたというのに。
ピーンポーン
しつこーーい!! 私は寝たいのに。
ピーンポーン
ピーンポーン
ピーンポーン
出るまで諦めないとでもいうかのように、だいたい一分おきに鳴らされるドアチャイム。
それに根負けして、布団からもぞもぞと抜け出し、軽く髪を整えた。服装は……ゆるゆるの部屋着だけど、まぁいいか。
ピーンポーン
はいはい、出ますよ。
「どちら様ですか?」
ドアチェーンをかけたまま、ドアをそっと開ける。
「あ、ちょっとお時間よろしいですかー?」
外にいたのは、ツインテールに眼鏡のかわいらしい女の子。女の子というか、同い年くらいかな。でも見たこともない子だ。
「えっと……?」
「あぁ、わたくし、こういう者なんですー」
ドアの隙間から名刺のようなものを渡された。
ふむふむ。
『二次元愛好協会 教祖 坂下たえ』
なんだかよくわからない肩書きに名前が小さく書かれている。それから、アニメか漫画の男性キャラクターのイラストがどどんと。
「あの……?」
「あのー、今わたくしー、信者の方々を集めていましてー。
どうかな? って勧誘です」
「はぁ、そうですか」
怪しさ満点なんですけど。つか、これって宗教なの?
「それでー、わたくしが一応は教祖になってるんですけどー、わたくし達が崇めるのは、この名刺の彼のような二次元世界の素敵な方々なんですー。男性でも女性でも、子供でもダンディーなおじ様でも、自分がジャスティス!! と思った方々を崇め奉り、彼らの教えを守ることなんですー。
素敵だと思いませんか? どうでしょう、入りませんか?」
バタン、ガチャリ。
思わずドアをそっと閉めてしまった。
だってこれって、ただの……。