第24話 新たな担任?
蟻の巣に砂糖を打ち込んだら、こうなるのではないかと言わんばかりに教室は騒がしかった。オレは黒板に書いてある文字を見て納得した。それもそうだろうなと。
───ケビン先生は一身上の都合により、退職しました。
新入生にとって担任の教師は学園の中で最も影響を与えている存在と言っても過言ではない。そんな担任の教師が学園に来たら、すで退職していないなんて事を知って騒ぎにならないはずはない。
「リリア様!」
ニーナはこぼれるような笑顔でこちらに駆け寄ってきた。オレ達は黒板の前に立って、互いに顔を見合わせてしまった。
「やったわね。ニーナ、これでイヤな思いをすることはなくなったわ」
オレの言葉を聞いたニーナはホッとしたのか目元に少しだけ涙が見えた。彼女のような幼子をここまで苦しめるなんて、ケビンは最低な教師だったな。
あの糞野郎がいなくなるのは最高だが、普通はこんな連絡の仕方をしないだろうと思って黒板を再び見る。おかしいな。この文字はどこかで見た事あるような気がするが…
オレがニーナが落ち着くのを待っていたら、始業の鐘の音が鳴った。オレ達は互いの座席に戻る。席に着くと、
「次の担任の先生はどなたでしょうかね?」
ニーナがオレに新担任について話を振ってきた。彼女の顔を見るとその質問は純粋な興味で聞いてきたのだろう。
「さぁ、わからないわ。でも、ケビンよりはまともな事は確実でしょうね」
前回の担任よりか悪くなることはないだろうしな。すくなくとも次の担任は普通だろうから、体操服を盗んだり、トイレを覗いたりしないだろう。
「そうですよね」
ニーナが相づちを打つと扉の方から大きな声が聞こえてきた。オレはその声に反応して教室の入り口に視線を移す。
「どうも、おはようございます!!」
挨拶をして入ってきた人物が意外であったため、オレは内心の驚愕を隠す事ができなかった。だから、そんな挨拶と共に扉から入ってきた人物に向かって、
「なぜ、ここにいらっしゃるのですか!?」
と大声で言わざるを得なかった。