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第23話 変態教師の末路

 椅子が当たったケビンは床に倒れ臥していた。彼が気絶したことで魔術が切れたのだろう。奴の姿を視認する事ができた。


 奴をよく見ると手にオレの体操服を持ってやがる。いつの間にオレの体操服を盗みやがったんだ。なんて、逞しい変態なんだ。これはオレ1人では対処できる気がしないな。


「ニーナ。他の教師を連れてきてください」


「わかりました。リリア様」


 彼女はオレに一礼をした後にすぐに教室の扉を開けて駆けていった。ありがとう。ニーナ。


 さてと、どこかにケビンを拘束するモノがないだろうか。


 この変態が目を覚ますと面倒だ。早く拘束する道具を見つけなくては…


 机、ロッカー、黒板……


 どこを探しても見つからないな。やはり、教室の中に人を拘束するようなモノはないか…


 ———ガタ、ガタ、ガタリ


 オレが音に反応して振り向くとケビンの奴が目を覚ましたようだ。彼は足をふらつかせて机につかりながら教室の扉の前に歩み寄っていく。


 厄介だ。まだ、拘束してないのに。このままでは逃げられてしまう。


「な、なぜ、俺の場所が…。し、しまった。忘れていた。白いインクをつけられていたんだった」


 奴はブツブツとなにやら、呟いている。まだ、目覚めたばかりでこちらに気が付いていないのか…


「さてと、ケビン。覚悟はできていますか?」


 突如として、オレのドスを利かせた声を聞いた奴はヒェと悲鳴をあげると尻餅をついた。


「何の覚悟だ!? き、教師の俺にそんな態度で良いと思っているのか!?」


 オレが余程怖かったのだろう。奴は床に臥したまま、こちらを見てそう言ってくる。その態度が虚勢だと簡単にわかるくらいに震えているが…


「あなたは私たちの生徒の体操服を盗み。それに対して不当な罰を与えた…」


 こんな滑稽な奴にオレは体操服を盗まれて運動場を走らされていたのか。なんだかそう思うとますます腹が立ってきたな。


「さらに生徒のトイレを覗くなどイヤらしい事をした罪」


 トイレに関しては確証はないが、こんなことをやる奴はコイツくらいだろう。もし、コイツ以外にそんな奴がいたら、この学園は相当変態のたまり場だぞ。そんな学園はイヤだな。


「おまえの様な屑教師には罰が必要だ。いや、そんな、おまえはもうすぐ教師ではなくなるか…」


「ば、バカなことを言うな! 俺は学園長の縁者だぞ。首など出来る訳がない!!」


 オレの嫌みに奴は強気に胸を張ってそんなどうしようもないことをのたまってきた。


 なるほど。この屑は縁故採用か。そりゃそうだよな。こんな学園で隠れて子供達に性犯罪をするよう人間を採用するような仕事場はないわな。


「あなたは私が誰だかわかっていますか?」


 こんな、立場を利用する事ばかり考えているバカには、オレが公爵の娘という現実を突きつけてやる方が効くだろうな…


 そう思って、オレは現実を突きつけてやったら、奴はそのことに今更気が付いたのだろう。顔を真っ青にして頭を抱えている。いい気味だ。


「そんなことも考えれない人が良くこの仕事につけますね。あ、縁故採用でしたか。ごめんなさいね」


 オレの罵倒をケビンは大人しく聞いていたと思ったら、いきなり立ち、こちらに間合いを詰めるように飛び掛かってきた。


「バ、バカにしやがって! おまえのようなガキは力ずくで指導してやる!! 大人を舐めるな!!」


 オレに向かって拳を振るう。オレはケビンの遅い打撃を受け流して、


「反省の色なし。仕方がないですね」


 そう言った後、奴の伸びきった腕を掴み投げ飛ばす。ケビンは教室の床に倒れ臥した。投げ飛ばされている間にいくつかの机に打つかって凄まじい音がしたが、奴が死んでも仕方ないよね。正当防衛だし…


 それにしても、投げ飛ばされてもオレの体操服を手放さないとはここまでくると大した変態に思えてくるからおかしなものだ。


 オレがそんなことを考えていると突然、扉が開いて、


「リリア様、先生達を連れてきました」


 ニーナが教室に教師らを連れて入ってきた。その後、オレは先ほどあったことを丁寧に先生らに説明をしてやった。


 途中でケビンが目を覚まして、


「私は教育指導をしていただけです」


 奴はそんな言い訳を教室にやってきた教師らにしはじめた。


「リリアーヌさんやニーナさんが体操服を持ってこない等の授業放棄を何度もしていたので、私が指導をしていたら…」


「だれが、体操服を持ってきてないでしょうか? それよりも、先生。手に持っている私の体操服を返してくださらないかしら?」


 オレがそう言って睨むと奴は押し黙る。


「先生方もお分かりかもしれませんが、この男は教育指導と言って私を襲おうとしていたんです。この学園の教育指導はこのような下劣なものなのでしょうか?」


 オレが顔を伏せて、涙声みたいな口調でそう言うと


「そんな、分けありませんよ。リリアーヌさん、この学園は公明正大に魔術を学ぶ場所です。安心してください。それにしても、こいつは同じ教師として恥ずかしい」


「セイラ先生、そんなガキの言う事を信じるのですか!? 客観的に俺の証言の方が正しいだろ!?」


 セイラと呼ばれた教師はケビンが持つ体操服を見た後、


「では、あなたが大事に抱えているそのリリアーヌと書かれた体操服はどなたのでしょうか? なぜ、女子生徒の体操服を持っているのですか? 指導をするのにそんな風に他人の体操服を持つ必要があるとでも?」


 そう言って、ケビンを軽蔑の眼差しで黙らせた。実にいい気味だ。 


 そんな感じで、オレは、一通り教師らに説明をした。話終えたケビンが拘束されて、教室から連れられて行く。


 どうやら、教師達にあらん限りの罵倒を受けて、奴は憔悴しているようだ。ここでトドメをさしてやろうか…


 オレはそう思って、奴に最後の嫌がらせをするために駆け寄る。

 

「ケビン先生」


 彼の名前を先生と呼んで引き止める。これでこの糞野郎を先生と呼ぶ事は最後になるだろうからな。オレは敢えてそう呼んでやったのだ。それも、出来るだけ苛つかせるようにゆっくりと呼んでやった。


 奴は立ち止まり、振り返る。オレはそんな奴の前まで行き、


「あなたの行った教育指導はずばらしいものでしたわ」


 そう小さくケビンに向かってイヤミを言って微笑む。


「屑をブタ箱に行かせる。…そんなすばらしい指導はこれからもないでしょうね。自らがブタ箱に入って手本を見せる教師など。あなたは本当に教師の鏡ですわね?」


 オレのこの言葉を聞いた奴の顔と言ったら、なんと表現したら良いモノだろうか。


 最初はオレに言われた意味がわからなかったのか奴はきょとんとしていたが、


「ふ、ふざけ…」


 顔を真っ赤にし、こちらに何事かを喚いてきた。


 まぁ、当然の事だが、そんなケビンは他の教師に殴られて黙らされた後に、教室から引きずられて出て行ったのであった。

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