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第22話 透明人間と白インクと少女達

 辺りに響くニーナの悲鳴に反応して、俺は彼女のもとにまで駆け寄る。そして、彼女の腕を掴んで、引き寄せる。


「くっ、ニーナを取られちまった。なら、次は元気のイイ美少女だな」


「え!? 嘘、身体が…」


 俺の右腕が突如として何者かに引っ張られたと思ったら、動かせなくなった。まるで、誰かに抑えられているみたいだ。


「さてと、教育的指導をきっちりしてやる! 実技の保健体育でな!」


 うげ、気持ち悪い、誰かが俺の腰を弄っているような感覚が…


「離れろ!? このゲス野郎!!」


 俺は気持ち悪さに堪え兼ねて無意識に右足を軸として、誰もいないはずの空間を蹴り上げる。


「ガキとは思えない鋭い蹴りだな!」


 おかしい。そこに誰もいないはずなのに。何者かに当たった感触がある。ケビンの野郎が透明になってでもない限りそんなことが…


 まさか、ケビンの奴は透明になって、見えないようにしているだけなのか!? 

 確証はない。だが、試してみる価値はある。俺はニーナを引っ張り、自らの席まで駆ける。


 確か俺は机の引き出しの中にインクがあったはずだ。インク、インクだ。だめだ。インクが見つからない。どうする。俺は慌てて引き出しの中を探すがインクが見当たらない。


 どうしよう。うん? 修正用の白インク!? 良いのがあった。これだ! 俺は机の引き出しから白いインクを取り出す。


「い、嫌、触らないで! リリア様!!」


 ニーナから泣き叫ぶような悲鳴が聞こえてきた。標的をまたニーナに戻したのか。あのゲス野郎、俺に手痛い反撃があったから、ニーナを襲いやがったな。


 これだから、根性のないロリコンは嫌いだ。小さい子供なら、自分の言う事を聞いてくれると考えているんだろう。


「ニーナ、どこを触られていますか?」


「腰の辺りを重点的に触ってきています。うー、なんか、こんなことを言うの恥ずかしいです…」


 ニーナが俺の問いかけで、ボソボソと小さな声で答えてきた後に顔を真っ赤にしてオロオロとしている。なんてことだ。ちょっと、可愛すぎ。もう暫く放置しようかな。


 いかん、いかん、そんな酷いことをしてはいけない。俺が聞きたいのは奴の位置を特定できる情報だ。


「違うわ。部位を聞いているわけではないわ! 右側? それと左側? どこらへんからあなたは触られているの?」


「後ろ側です。リリア様、誰かに後ろ側から抑えられているような気がします。ムー、ムー…」


 ついに口まで抑えられてしまったか。やばい、流石に口や鼻を抑えられたら、呼吸ができない。早く、ニーナを助けないと!!


「ニーナ! 今、助けるわ。 ケビン、これでもくらいなさい!!」


 俺はインク入れのキャップを外し、ニーナの後ろに向かって投げた。放物線を描くようにインクが溢れながら、ニーナの後ろの何者かに当たった。辺りに飛び散る白インク…


「うー、べとべとです。白いインクが…」


 どうやら、飛び散ったインクがニーナにもついてしまったようだ。すまない、ニーナ。必要な犠牲だったと思って、諦めてくれ。正直、ケビンが誰かを捕まえている状態じゃないとインクを当てるのは困難だったからさ。


「ごめんなさい。ニーナ。あなたにまで掛かってしまうなんて」


 俺は、言い訳を心の中でして、彼女に謝罪をした。


「リリア様、いえ、いいんです。リリア様、なんておっしゃいましたか? あなたにまで? ここにはリリア様と…」


 リリアが話途中に俺の視線の先を見ると、


「嘘、インクが空中に浮いています。お化けです!? リリア様!!」


 そう言う彼女は俺のもとまで駆けてきて抱きついてきた。お陰で俺まで、白いインクまみれになってしまった。白くてベトベトで気持ち悪いわ。


 ひとまず、俺はニーナの顔についた白インクをハンカチで拭って、やりながら、辺りを伺う。


 視界の先には、白インクで着色されたなぞの物体が目に入ってくる。その物体は全くと言って良い程に動かない。多分、あの白い物体はケビンだろうな。


 奴が透明になっていたという俺の予想は当たっていたのだろう。それにしても、ケビンがオレ達を襲ってこない。


 白インクがついて、場所が特定されている事がわかってから襲ってくるのをやめたという事は…


 弱いモノをわからない所からしか、襲えない腰抜けやろうだな。ロリコンなのも同じ理由だろうな。小さくて言う事を聞いてくれそうなガキが好みなのだ。


 そんな奴がこんな状況になっていると思うと笑いが止まらない。あいつの頭の中はパニックに近い状態だろうな。となると、そんな奴が取る行動は…


 思った通りだ。白物体が教室の扉の方に移動をはじめた。逃がすかよ。俺は椅子を白い物体に向かってぶん投げる。すると見事に奴にクリーンヒット。


「ケビン先生? おいたが過ぎましたね?」


 さてと、ここからが反撃だ。ケビン。おまえに受けた恥ずかしめを倍以上にして返してやる。俺はそう言って不敵に微笑むのだった。

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