第19話 体操服泥棒は誰だ
呼吸が乱れて、息が荒い。肩で息をしながら、オレは全力でグランドを駆け抜けた。
「タイムは8秒32だ。お、早いじゃないか!」
「まぁ、まぁですわね」
オレは担任のケビンからタイムを聞いて、微笑む。今日は中々のタイムだ。走ったから、かなり、疲れたな。そう思ったオレは腰を屈めて、膝に手を当てる。大きく呼吸をして、どこでゆっくりと休憩をしようかと考えていると、目の前にタオルが差し出された。
「リリア様、よろしければこのタオルをお使いくださいね?」
「ニーナ、ありがとう」
ニーナから花柄のタオルを受け取り、汗を拭う。暫く、オレは呼吸を整えるために休憩と称して、ニーナと何気ない会話をしていたら、授業の終わりを告げる鐘の音が聞こえてきた。
「授業は終わりだ。次は教室でやるから、急いで戻れよ!」
そう言う担任の声が響き渡った。
「ニーナ、教室に戻りましょう」
「はい、リリア様」
オレの教室という言葉を聞いたニーナは急に俯いてしまった。
「どうしたの?」
いかにも教室に戻りたくないと言わんばかりだ。
「リリア様、私は怖いんです。」
突如として、顔をあげたかと思うと早口で、体操服が無くなった件について話してきた。
「わかったわ。なら、今日は机の横に置いておくようにしましょう」
「それだと、無くなる事がありませんね。常に見ておく事ができますから!」
ニーナが名案ですと言わんばかりに明るくそんなことを言ってきた。
「それと、罠でもしかけて、そろそろ犯人を特定しましょうかね」
オレはそう言ってニヤリと笑うのであった。