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プロローグ

 黄金で作られた玉座に腰をおろして、オレは辺りの様子を伺う。どこを見ても、兵士、兵士、兵士…

 

 どうして、こうなってしまったのだろうか。オレは何度目になるかわからない後悔の言葉を小さく吐き出した後、辺りをまた見渡す。


 ヴァルデンブルクの帝王たるこのオレ、ヴァハドゥール・ド・ヴァルデンブルクは部下であったジーク・ブランシュタットの兵士どもよって完全に取り囲まれてしまっていた。


「王よ! あなたの命運もここまでだ!」


 そう言いながら、巨体を揺らして、一人の男がこちらに進み出てきた。その男こそなにを隠そうこの革命の首謀者であるジーク・ブランシュタットだ。


 それにしても見ろよ。奴のツラ。実に憎々しい程に爽やかな笑顔。とても、人を嵌めて殺すような奴には見えない。この笑顔に多くの兵士は欺かれたのだろう。オレ同様に…


「この恩知らずが! 貴様を取り立てやった恩を忘れたのか!? この売国奴が!!」


 オレは怒りにまかせてそう叫ぶ。だが、やつはそれを聞いて、ニヤリと笑いやがった。腹が立つことにこちらを見て、嘲笑してやがるな。


「もう、この国も終わりだ。だから、これが我ら民に取っての最前の策なのだ。あなたにはわからないかもしれないがな!」


 なにが民に取っての最善策だ。敵国に用意された爵位に目がくらんだ成り上がりものめ。オレは込み上げる怒りで歪みそうになる顔を叩いて無理矢理不適な笑顔を作ってやった。


「はっ、なにが民の為だ! お前の私欲を満たす為だろ?」


 この愚か者め。結局、おまえは民など見ていないのだ。そうだ。このオレを殺しても、根本的な解決はされていないのだ。おまえの身分が保証されると言う保身があるだけだ!!


「民は私を選んだ。あなたではなく私を! アルカディア帝国に勝てるわけがない。それをあなたは…」


「ジークよ。どれだけ、お前が御託を並べた所でお前は民の名を借りたタダの薄汚い盗人だ!」


 俺は国賊であるジークに向かってそう言ってやった。オレの言葉を聞いたジークは顔をイヤらしい笑みで愉快そうにしてやがる。


「最後まで、ご理解をして頂けなかったか」


「お前のような外道を理解しようとは思わぬわ」


 本当に上面だけは良い奴だ。顔をふせて、玉座の間の下に控えている部下どもにはこの俺を最後まで説得している心優しい大将を演じているのだろう。本当に腐ってやがる。


「外道? 心外だ。ああ、そう言えば、あなたの妻のイレーヌ妃と娘のセリア姫は裁判によって死刑になったぞ。民達が民主的に選んだんだ。しかし、本当に酷かったな。目玉をくり抜いた後に皮を剥いで豚の餌にするというとんでもない処刑法だったよ。本当に民は惨いことをする」


 俺だけに聞こえるように小声でとんでもないことを言ってきやがった。このゲスが! お前は生きている価値もない。俺は憤怒のあまりに気が狂いそうだった。だが、唇を自ら噛むことで得た痛みによってそれを押さえ込む。この野郎だけは絶対に許さん。


「き、貴様! 妻と娘を…。許さん、絶対におまえだけは許さん。いずれ、貴様らに災いをもたらす。呪ってやる!」


「死に行く人になんと言われても気にしない。この暴君を取り押さえろ」

ジークの命令で俺を次から次へと兵士どもが囲んで取り押さえようとしてくる。


 捕まってたまるか。できるだけ、多くの奴らを道連れにしてやる。オレはそう思って腰にあった剣を抜き取り、兵士どもに斬りつける。オレは暴れるだけ暴れた。だが、多勢に無勢で徐々に劣勢に陥り、取り押さえられてしまう。


「この裏切り者どもめ! 死ね!死に絶えてしまえ!!」


 オレは、取り押さえられてもなおも暴れ回る。そんなオレを見て、ジークは拘束して連れて行くのは無理だと判断したのだろう。


「殺せ!」


 オレの殺害命令を出してきた。ジークの命令でオレに向けて一般兵士の剣が降りおろされる。オレは首のない自らの胴体を見て笑った。


 喉がない為だろうか声がでないが目だけはジークを見て笑ってやった。呪ってやる。オレから妻と娘を奪い、そして国を掠め取ったこの男を! オレの意識はここで消失した。

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