連なり合う思い
迫りくる魔人達から守るようにリリアの前に立ち、ギブは魔人達の攻撃を防ぎながら、糸に向かって剣を振るった。
「ありゃま?! かってえな!」
勢いよく振るった剣を、張った糸が真正面から受け止めた。
ギィン‼ と硬い金属音のような音が鳴り、火花と共にちぎれた糸が空へ消える。
何本かは切れたが、全てを一刀両断とはいかないようだ。
操られる魔人を蹴飛ばすギブに、アインが迫りながら叫ぶ。
「糸の硬さは意思の硬さだと言ったろう‼ そう簡単に切れるかぁ‼」
「泣くまでボコしゃあオッケーってことだなあ⁉」
リリアを奪おうと迫るアインに、カウンター気味に拳を炸裂させる。
真正面からギブの拳を食らったアインが、地面に勢いよく叩きつけられた。
魔人達が襲い来る中、黒い風に乗って、体を再生させたアイゼンが追い付いてきた。
「王様君! 皆を守れる?!」
空中にいるアイゼンに、ギブが呼びかける。
「皆だ‼」
「……! あいわかった!」
セオを背から降ろし、隣に降り立ったアイゼンに預けた。
再び糸につながれた魔人が迫りくるが、ギブが体に着いた糸を力強く切り飛ばし、その体が支配から解放される。
「皆! 城の中へと迎え! 籠城戦を仕掛けるぞ!」
アイゼンの指示に、城で戦いを眺めていた兵士たちが動き出し、門の前を阻むように陣形を組んだ。
そして、操られ疲弊しきった魔人たちを中へ一緒に連れ込んでいく。
意図が伝わったことを確認し、ギブがニッと笑ってから地面に手を触れ、アイゼンたちの周辺に、大きな盾と、剣を出現させた。
「私とギブ君が糸を切る! 解放された者たちを、城の中に匿うのだ!」
戦場が大きく動き始めた。
ギブが全線でアインの動きを制限し、動きが単調になった、操られている衛兵や魔人に絡まる糸を、アイゼンが空を舞い切断していく。
零れ落ちた者を、セオやリリア、衛兵たちが回収し、城の中へと運び込んでいく。
解放された魔人をリリアと抱え、城の中へと運び込むセオに、動けない魔人が問いかけた。
「……私は、皆を贄にしてきた、魔人だぞ」
魔人化の具合から察するに、『千』の魔人。他国の王族か何かだろうか。
罪悪感と困惑が混ざった声に、セオは笑って答えた。
「見りゃわかるよ」
短く答えて、盾を構える衛兵たちに魔人を預け、再び戦場へと駆けていく。
その姿を見て目を見開き、助けられた魔人は目に涙を浮かべた。
その横で、既に救出された魔人の一人が、「剣を借りれないか」と立ち上がりながら衛兵に問いかける。
「糸を切る手助けをしたい。あそこにまだ、操られている仲間がいるんだ……」
少しずつ消えていく、糸につながれた魔人や衛兵。
消えていく戦力をみて、アインは魔人達の矛先をギブに集中させた。
迫りくる攻撃をかわし、糸の切断を狙うギブ。
その動きの隙を狙って、アインが糸を発射する。
「よそ見している暇はあるのか?!」
アインが放った糸を、ギブが剣を盾の形に変え、薙ぎ払うように弾き飛ばした。
もう一方の手を鋭い爪の形にし、魔人をつなぐ糸を切り裂きながら、アインに向かって拳を繰り出した。
「よそ見してんのはお前だろ?!」
八本の腕で拳を防ぐも、ギブはそのまま腕を振りぬき、アインを岩肌に向かって殴り飛ばした。
「こいつは、俺とお前の喧嘩だぜ‼」
切れていく糸、消えていく『贄』。
半面、糸で繋がれていない者たちが、見えない力でまとまり始め、存在を、勢いを、熱を増していく。
その光景に苛立ったように、アインは憤怒の雄たけびを世界に響かせた。




